更新日: 2019.12.21 その他暮らし

マンションの老朽化・築後40年経ったらどうします?

マンションの老朽化・築後40年経ったらどうします?
マンションに住む人は大変多いです。国土交通省によると、平成30年末で、既存の中古を含む分譲マンションの総数を指す、総ストック戸数は654.7万戸、居住する人は約1525万人と推計されており(※1)、これは国民の1割以上にあたります。
 
新築されたタワーマンションの快適なシティライフが話題となる一方、実は、築40年を超えて老朽化するマンション数も81.4万戸と、総ストック戸数の12%強になっているのです(※2)。
 
ここでは、老朽化するマンションについて、主に区分所有者として居住する人の立場で考えてみましょう。
 
植田英三郎

執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)

ファイナンシャルプランナー CFP

家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。

老朽化したマンションとは?

マンションの老朽化とは、経年により、外見・機能・耐震基準などで更新が必要な状態を指します。マンションが老朽化すると、外見上いろいろな症状が出てきます。もっとも分かりやすいのが、外から見て分かる「ヒビワレ」や「タイルの剥落」、「鉄部のサビ」などです。
 
機能上では、「配管のつまり」、「防水補修不備による漏水」など、日常の生活に支障をきたすことも起きてきます。
 
さらに、昭和56年以前に建てられたマンションでは、現在の耐震基準を満たしていない場合もあり、震災の多い日本においては、基準をクリアするための補強工事は優先順位の高い項目と言えます。
 
また、近年多くのマンションで、古い油圧式エレベーターが使われている場合、補修部品の調達不能を理由に、エレベーターの交換をメーカーから提案されるケースも多く、今後この問題の顕在化が予測されます。
 

老朽化したマンションをどうするか?

マンションの寿命は、法定耐用年数の関係もあり、50年程度と考えられることが多いのですが、国土交通省の資料(※3)によると、RC構造(鉄筋コンクリート)の場合では、100年以上の寿命があるともされており、一般的に理解されている以上に長持ちすると考えることも可能です。
 
ただし、さまざまな立地や状況がある中で、どう判断し、対応していくかは、個別に考える必要があるでしょう。
 
老朽化したマンションへの対応は、「大規模改修」・「建て替え」・「区分所有権の解消(敷地売却)」の3つあると言われています。いずれも区分所有者・居住者に相応の負担がかかる問題です。
 

大規模改修

大規模改修の具体的な内容は、外壁塗装・タイルの補修・鉄部塗装・屋上防水補修・エレベーター等の設備の更新です。また、耐震基準以下のマンションは、耐震工事が必須でしょう。
 
大規模改修の最大の課題は、改修工事の費用に見合っただけの、修繕積立金の残高があるかということです。国土交通省の調査(※4)によると、現在の積立額が計画に対して不足しているマンションは34.8%にもなっているとされています。
 
一般的にマンションの修繕積立金は、販売時に低めに設定されるため、このような現象が起きるとされています。区分所有者としては、マンションの資産価値維持のため、マンション管理組合の活動に関心を持ち、大規模修繕に備えることが大切でしょう。
 

建て替え

老朽化のさまざまな事情の中で、建て替えを選択するケースも起こり得ます。建て替えには、大規模改修をはるかに超える資金と期間が必要な上、管理組合での決議の問題があります。
 
資金は、容積率の低いマンションの場合は、低層から中高層化することで、総戸数を増やし、新規分譲をすることによって、現区分所有者の負担を軽減できる場合もあります。
 
ただし、建て替えは、工事中の居住先の確保などの問題もあります。また、建て替え決議は、区分所有者の5分の4以上の賛成が必要であり、円満合意が得られない場合は、さらに時間とコストのかかる仕事になると言えるでしょう。
 

区分所有権の解消(敷地売却制度)

老朽化マンションの最終解決法として、建物の除却を可能にする法律が平成26年に改正され、全員の合意がなくとも、マンション建物の除却と敷地を売却できる制度が整備されました。
 
そのための条件は、2つです。1つは、耐震基準不足のため除却が必要であると、都道府県知事等に認定されることです。もう1つは、区分所有者の5分の4以上の賛成による決議です(改正前は全員の合意が必要でした)。
 
その後に、「マンション敷地売却組合」を設立して、建て替えや敷地売却に反対する区分所有者の敷地権を買い取り、建て替えや土地を含めた一括売却をすることになります。これによって、区分所有者は敷地権分の金銭を受け取り、新たな生活の元手にすることができるわけです。
 

管理組合と管理会社

老朽化マンションの対応策は以上の通りですが、いずれの選択を取るにしても大切なことは、管理組合が適切に機能していることです。そのため、日頃から管理組合の役割と活動を、多くの区分所有者に理解してもらうような働きかけが大切ではないでしょうか。
 
マンションを長く快適な状態で住める状態にして、資産価値を維持するには、日常のメンテナンスと専門家による建物劣化診断・長期修繕計画、そしてそれを可能にする修繕積立金の管理が不可欠です。これらを実現するには、区分所有者や管理組合に、的確な提案とアドバイスができる管理会社を選ぶことも大切です。
 

まとめ

老朽化の先には廃墟のようなマンションがイメージされる向きもありますが、適切な補修や更新がなされれば、マンションは長く住めるものです。区分所有者としての自覚を持ち、管理組合を充実させる努力をするなど、大規模修繕への準備を整えることが大切でしょう。
 
また、大規模改修ができない場合には、建て替えや除却・敷地売却という選択があると知っておくのも、必要なことではないでしょうか。
 
出典
(※1)国土交通省 分譲マンションストック戸数
(※2)国土交通省 築後30、40、50年超の分譲マンション戸数
(※3)国土交通省 マンションの寿命
(※4)国土交通省 マンション総合調査結果
 
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP


 

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