引っ越しの敷金は、全額戻ってくるのが基本? 入居・退去時に確認しておきたいこと
配信日: 2020.02.17 更新日: 2023.09.06
今回は、引っ越しをする際に知っておきたい敷金に焦点をあて、どのようにすればトラブルを防ぐことができるのかを考えてみたいと思います。
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
そもそも敷金ってどんなお金?
地域によって「敷金」とは言わずに違う名称を使用したり、そもそも不動産の賃貸契約に敷金が必要でない地域もあるようですが、敷金とは家を借りるときに必要になる初期費用のうちのひとつ。
部屋を退去する際にできてしまったキズや破損した箇所を直すために、部屋を貸したときと同じような状態に戻すという「原状を回復する」ことを目的に、貸主にあらかじめ預けておくお金のことを言います。
最近では敷金不要という物件もありますが、退去時に原状回復のための費用を請求されないケースはまれ。敷金不要の物件だと、原状回復を実費負担したことで「思った以上に引っ越し費用がかかってしまった」という話をよく耳にします。敷金が必要な物件をむやみに避けることなく、物件そのものを見て、借りるか借りないかを判断すると良いですね。
不要なトラブルを避けるためにするべきこと
敷金トラブルを避けるためにも、あらかじめ対策を練っておくことは大切です。入居時にできること、退去時にできることを挙げていますので、参考にしてください。
●入居時にするべきこと
・キズや破損部分を確認しておく
たとえ新築の物件であったとしても、工事中にできてしまったキズや破損している箇所を直さずに賃貸に出していることがあります。
入居時にはしっかりチェックし、どこがどのようにキズがついているのか、破損しているのかを確認して、速やかにオーナーに連絡を入れましょう。この場合は文章で残す、かつ写真を撮っておき、自分のせいではないという証拠を持っておきましょう。
・後付けの設備の費用は誰が負担するのか確認する
基本的に、入居後に入居者が後付けで何らかの設備を設置した場合、オーナーが費用を負担することはありません。代表的なモノとしては、エアコンや電話回線などの設置工事があります。
反対に、内装を好きにアレンジしても良いが、原状回復して返してほしいというような約束を結ぶ場合があります。この場合は、借主が全額負担をして元に戻さなければなりません。
これらの約束事は、賃貸契約を結ぶ際に誰がどのような場合に費用を負担するのかを宅建士によって説明されますし、書面も交付されます。必ずチェックしておきましょう。不安な場合には、作業に取り掛かる前に不動産屋やオーナーに確認して、後々余計なトラブルが起こらないよう準備しておくことが大切です。
●退去時にしておくべきこと
・しっかりと掃除をして退去する
どうせクリーニングが入るから、掃除なんてしなくて良いんじゃない? と思うかもしれませんが、最低限の掃除をしてきれいな状態で退去するようにしましょう。特に、水回りが汚れている場合はクリーニング費用がかさむ傾向にありますので、しっかりと掃除すると良いですね。そして、退去時の状態を写真に撮っておきましょう。
クリーニングの費用は業者によって違いがありますし、どこまでクリーニングするのかによってかかる費用は違ってきます。場合によっては、契約者が直接業者と値下げ交渉をしてクリーニングしてもらうこともOKとしているオーナーもいます。
どのようなクリーニングをするのか、費用はどれくらいなのかを確認しておき、請求書の内容が適正かをチェックしてみてください。
・自治体の条例を確認する
東京都では賃貸住宅トラブル防止のガイドライン(※)を作成しています。これによると、「賃貸住宅の契約においては、経年変化および通常の使用による損耗・キズ等の修繕費は、家賃に含まれているとされており、貸主が費用を負担するのが原則です」とされています。
代表的な内容では、壁に貼ったポスターや絵画の跡、家具の設置によるカーペットのへこみ、日照等による畳やクロスの変色などがあります。東京都にお住まいでない場合も上記のガイドラインは参考になりますし、引っ越し前にチェックしておきましょう。また、自分が住んでいる地域にもそのような条例がないかも確認しておきましょう。
敷金はどれくらい返ってくる?
敷金は最終的にオーナーが物件内部を確認し、原状回復にかかった費用を差し引いて戻ってきます。全額戻ってくることは難しいとは思いますが、丁寧に暮らしている人なら半分くらい戻ってくる可能性もあります。
新入居人がカギの費用を負担することが多いのですが、二重取りするオーナーもいます。契約時にかかった書類は手元に保管し、入居時と退去時に二重に払っているモノはないのかもチェックをしておきましょう。
余計な支出はしない、必要なモノは気持ちよく支払うを心がけ、トラブルを避けましょう。
(※)東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン ダウンロードページ」
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト