更新日: 2020.05.01 子育て
新型コロナで小学校が休校! 会社を休む場合の支援策「小学校等対応助成金」とは?
新型コロナウイルスの感染拡大により、政府は全国を対象に緊急事態宣言を発出しました。これを受け、以前から小学校などの学校を休校していた自治体も、再び休校に踏み切るようになり、全国的にお子さんが学校をお休みする傾向が続いています。
特に、小さいお子さんのいるご家庭では、お勤めの会社を休まざるを得ず、収入が減ってしまうのではないかという心配が絶えないかもしれません。このような状況に対し、国は、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」という制度を設けています。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
目次
新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金の概要
新型コロナウィルス感染症による小学校休業等対応助成金は、新型コロナウィルス感染拡大防止策として、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通うこの保護者である労働者の休職にともなう所得の減少に対応するため、正規雇用・非正規雇用を問わず、有給の休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた企業に対する助成金を雇用者に支給する制度です。
例えば、お子さんの通っている小学校が、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、お休みになったとします。働いている保護者としては、子どもの面倒を家で見る必要が出てききて、会社を休む必要があります。
通常なら有給休暇を使って会社を休もうと考えますが、有給休暇はそもそも、1年間で取得できる日数が勤続年数に応じて決まっているため、何日も休むことが難しいという問題が発生します。
このようなことから、会社が通常の有給休暇とは別に、社員・従業員に有給休暇を取得させた場合、国が会社に対し助成金を支給するという制度が、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」です。
それでは、新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金のポイントを確認していきましょう。
助成金の支給対象者は誰?
この助成金の最大のポイントは、助成金が支給されるのが保護者(労働者)に対してではなく、会社(事業主)に対してである点です。このため、国からの案内は「労働者を雇用する事業主の方向け」に行われます。制度を活用するかどうかは、事業主の判断になっています。
つまり、事業主がこの制度をそもそも知らない場合や、会社の資金的な事情で活用するのが難しいといった事業主に雇われている場合は、この制度を使って別枠で有給休暇を取得することが困難になる可能性が考えられます。
小学校等とは、どんな学校?
この制度が指す「小学校等」に該当する学校は次のような学校とされています。
◦小学校
◦義務教育学校の前期課程(一貫校の小学校のこと)
◦各種学校(幼稚園または小学校の課程に類する課程を置くもの)
◦特別支援学校(全ての部)
※障害のある子どもについては、中学校、義務教育学校の後期課程(一貫校の中学校)、高等学校、各種学校(高等学校までの課程に類する課程)等も含む。
◦放課後児童クラブ・放課後等デイサービス
◦幼稚園、保育所、認定こども園、認可外保育施設、家庭的保育事業等、子どもの一時的な預かり等を行う事業、障害児の通所支援を行う施設等
対象になる学校は小学校だけと思いがちですが、放課後児童クラブや幼稚園、保育所、認定こども園なども対象になっています。
臨時休業等って、どんな意味?
子どもの通っている小学校などが臨時休校するのはもちろん、自治体や放課後児童クラブ、保育所などから利用を控えるように依頼があった場合も含まれます。ポイントは、自治体などから利用を控えるようにと依頼があった場合も含まれるという点です。
例えば、小さいお子さんを保育所に預けているご家庭は少なくないと思います。保育所などはさまざまな事情で子どもを預ける場であるため、臨時休業に踏み切るのが難しいという実情がありますが、自治体や保育所から各家庭に利用を控えるような依頼があると、臨時休業をしているものとして扱われます。
ただし、保護者が自主的な判断で休ませた場合は対象外であるため、注意が必要です。
対象になる子どもは?
◦新型コロナウィルスに感染した子ども
◦新型コロナウィルスに感染したおそれのある子ども(発熱等の風症状、濃厚接触者)
◦医療的ケアが日常的に必要な子どもまたは新型コロナウィルスに感染した場合に重篤化するリスクの高い基礎疾患等を有する子ども
対象になる保護者は?
◦親権者、未成年後見人、その他の者(里親、祖父母等)であって、子どもを現に監護する者
※各事業主が有給休暇の対象とする場合は、子どもの世話を一時的に補助する親族も含む
「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」の対象となる保護者は、お父さん・お母さんといったいわゆる親権者はもちろん、両親が亡くなり子どもの世話をしている祖父母や叔父・叔母なども含まれます。
有給休暇の考え方は?
この制度では、原則、通常の有給休暇である年次有給休暇とは別に、有給休暇を取得した場合が対象です。また、就業規則や社内規定などの休暇制度がお勤めの会社に備わっていなくても良いというのが特徴です。
有給休暇に対する考え方は次のようになっています。
◦小学校などが臨時休業する場合は、日曜日や春休みなどのもとものとお休みは対象外
◦新型コロナウィルスに感染した子どもが小学校などを休む場合は、令和2年4月1日から6月30日までの期間、すべての日が対象
◦半日単位の休暇や時間単位の休暇も対象
◦年次有給休暇や欠勤、勤務時間の短縮を事後的に特別休暇に振り替えた場合も対象
このように見ると、通常の有給休暇である年次有給休暇とは別の有給休暇についても柔軟な配慮がされているように思います。
特に、時間ごと・半日といった休暇や、年次有給休暇・欠勤・勤務時間の短縮をし、事後的に特別休暇に振り替えた場合も対象となっている点を考えると、現実に即した内容であると考えられます。
助成金の金額は?
助成金の金額ですが、次のような計算式になっています。
有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額×10/10
賃金相当額は、対象となる労働者の日額換算賃金に有給休暇の日数をかけた金額です。つまり、「1日の賃金×有給休暇の日数」が100%、事業主に支給されます。社員・従業員としては、有給休暇を取って会社を休んだ場合でも、収入の計算がしやすいといえます。
ただし、日額換算した賃金の限度額は、時給が高い職種でも8330円です。例えば、時給が1100円で8時間労働の場合、日額の賃金は8800円です。このような方の場合、限度額である8330円で計算されることになります。
適用期間は?
最後に適用期間です。「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」は、令和2年4月1日から6月30日までの間で有給休暇を取得した期間が対象になっています。
申請期間は?
最後に申請期間ですが、令和2年9月30日までとなっています。申請は社員・従業員がするものではなく、あくまでも事業主が行う必要があります。
まとめ
すでに筆者の身近にも「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」の申請を行っている事業主の方がいます。
筆者は申請前に相談を受けましたが、このとき、雇用調整助成金の活用とどちらがいいかを社会保険労務士と協議のうえ決定しました。申請をする前には、社員・従業員と話し合いも行ったそうです。
詳細については省きますが、この制度は、つまるところ、事業主の判断次第で、社員・従業員が自ら申請するようなものではありません。
もし、自分が該当するかもしれないと思ったら、まず、事業主に確認し、事業主がこの制度を活用する場合に、結果的に対象になるという点は理解しておく必要があります。
この制度は、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制し、また、事業主の経営支援や社員・従業員の家計支援も同時に想定した優れた政策といえます。問題点としては、この制度の事業主への周知ですが、臨時的な措置であるため、多くの人の口コミなども含め、より迅速な周知の徹底がされるようになることを願います。
出典:厚生労働省「新型コロナウィルス感染症による小学校休業等対応助成金」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)