高齢で亡くなった親の借金が発覚。そんな場合どうすればいい?

配信日: 2020.05.05

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高齢で亡くなった親の借金が発覚。そんな場合どうすればいい?
高齢化により判断能力が衰えたり、情に厚いがゆえに借金を重ねてしまったりして、それが亡くなった後に発覚するという相続問題が増えています。
相続の際にそのような場面に出くわした場合、どうするのが正解なのでしょうか?
 
また、それに対する予防策はあるのでしょうか?
 
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

高齢者の法的トラブルはなぜ続出する?

加齢によって物忘れが多くなったり、多少判断能力が低下したりしても、契約を結ぶことは可能です。
 
そのため、「亡くなった母親が莫大な借金をしていた」「亡くなった父が知り合いの保証人になっていた」といった法的トラブルが続出しているのです。
 
また、核家族化や家族関係の希薄化によって親子間での交流が減少し、高齢の親が一人暮らしをしているものの、普段の行動をあまり把握していないケースが増えてきていることもその理由の1つに挙げられます。
 

亡くなった後に借金や連帯保証人としての地位が発覚した場合はどうすればいい?

もし、亡くなった親に多額の借金や連帯保証人としての地位が発覚し、それを背負い切れない場合はどうすればいいのでしょうか?対応としては下記の3つが挙げられます。
 
しかし、どれもメリットとデメリットがあるため、その点を理解しておくことが重要です。
 

(1)相続放棄

相続放棄とは、その相続に初めから相続人とならなかったものとみなされる制度です(民法939条)。
 
そのため、相続放棄をすることで借金や連帯保証人の地位を親から受け継ぐことはなくなりますが、同時に親のもつプラスの財産を受け継ぐこともできなくなります。
 
相続人でないとされた結果、次の順位の相続人(亡くなった人の兄弟や孫など)に相続権が移動するため、その方たちも必要に応じて相続放棄などをする必要があります。
 
また、原則として、相続について知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きしなければ単純承認(プラスの財産もマイナスの財産もすべてまとめて相続すること)とみなされてしまいます(民法921条2項)。
 

(2)限定承認

限定承認とは、相続するプラスの財産の範囲内でマイナスの財産をも相続するものです(民法922条)。
 
ただし、相続人が複数人いる場合は全員で限定承認をしなければならなかったり、3ヶ月以内に財産の目録を作成して家庭裁判所で手続きしなければならないなど、手間のかかる方法ではあります(民法923条、924条)。
 

(3)あえてすべて相続(単純承認)する

単純承認による相続は、亡くなった人の権利と義務のすべてを相続人が相続するもので、特別な手続きを必要としません(民法920条)。
つまり、借金や連帯保証人となることの原因となった契約に問題があれば、その点を指摘して対抗することができるのです。

例えば、契約の原因が脅迫や暴力など不法な行為に基づくものであった場合や、利息の額が異様に高く、利息制限法に違反している場合などが挙げられます。
 
ただし、むやみに単純相続しても、法的に対抗できると思ったら実は対抗できなかったり、後々さらに隠れた負債が発見されたりと大変危険です。
安易な単純承認は絶対にしないでください。
 

どうすれば高齢者の散財や連帯保証人といった問題を防ぐことができる?

一番の対策は親と連絡を頻繁に取り、お互いに近況を報告し合い、何かあれば相談するようにすることです。
 
そうすることで、散財や怪しい契約を結ぶのを防ぐことができます。
 
頻繁に連絡を取り合うことで、仮に事後であったとしても早期に発見することができ、問題が大きくなる前に落ち着いて対処できます。
 
また、後見制度を利用することも効果的です。後見制度には法定後見制度と任意後見制度があります。
 
法定後見制度を利用することで、判断能力の度合いに応じて1人で行える法律行為を制限することができます。
 
判断能力が十分ある場合でも、任意後見制度を利用することで、将来の判断能力低下に備えて後見人となる人を自身で信頼できる人に頼んでおくことができます。
任意後見制度については、最寄りの公証役場にお問い合わせください。
 

相続問題は事前の対策が大切

借金の発覚や連帯保証人としての地位の発覚といった相続事件が年々増えています。大切なのは事前の対策です。
 
高齢のご家族とは頻繁に連絡を取り合ったり、元気なうちに任意後見人を選んでおくなど、日頃から話し合っておくことが肝要です。
 
執筆者:柘植輝
行政書士


 

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