生活保護の受給期間の平均は6.4年。どのような世帯が多いのか?
配信日: 2020.07.09
早く終息して元の生活ができるように願うばかりですが、収入が思うように戻らなかった時のために、セーフティーネットの1つである生活保護について理解を深めるべく、保護を受けている世帯の平均像を確認してみました。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
保護開始理由によって保護受給期間は大きく異なる
生活が困窮して生活保護を受け始めると、どのくらいの期間続いてしまうのか、保護廃止世帯の保護受給期間の平均値を確認してみました。下記のグラフは保護廃止の理由別に平均月数を表しています。
保護受給期間の全体平均は76.8ヶ月で、年に直すと6.4年です。平均より長いのが「死亡(113.5ヶ月)」「施設入所(106.6ヶ月)」「医療費の他法負担(91.5ヶ月)」の場合で、特に死亡は平均10年近くなるので、非常に長期間の受給になります。
廃止理由が死亡や施設入所の場合、8割程度は高齢者世帯であり、母子世帯では死亡も施設入所もほとんど例がありません。「失踪(17.0ヶ月)」だけ極端に短いですが、失踪により短期間で保護廃止になってしまうと、周りの人もかなり大変ではないでしょうか。
高齢者の保護世帯が増えている
次に生活保護を受けている世帯はどのような世帯が多いのか、時代によって変化があるのか確認してみました。2つの円グラフは高齢者世帯や母子世帯等、世帯類型別ごとの世帯数を表しています。1つ目が2018年、2つ目がその10年前の2008年の世帯数です。
2018年の世帯数をみると、保護世帯163万のうち半数を超える88万世帯が高齢者世帯となっています。25万世帯で2番目に多いその他の世帯は、障害でも傷病でも母子でもない若年者世帯等が含まれています。また、163万世帯のうち132万世帯が単身者の世帯となっています。
2018年と2008年の割合を比べてみると、高齢者世帯とその他の世帯が増え、母子世帯と障害者世帯と傷病者世帯が減っています。高齢者世帯とその他の世帯が占める割合を計算してみると、2008年は56%ですが、2018年は69%へ大幅に増加しています。
この変化が何を意味しているのか判断するのは難しいところですが、他人からは生活が困窮しているのか分かりづらい、普通の世帯が数多く保護を受けるようになってきているのかもしれません。
保護世帯は働くことが難しい!?
最後に生活保護世帯の労働状況を確認してみました。
生活保護を受けているから働くことが難しいというよりは、働くことが難しいから生活保護を受けているのが現実でしょうが、生活保護世帯の84%は世帯員の全員が無職となっています。
一方で常用的に勤務している世帯も1割あります。勤労収入を継続して得られていれば、保護を廃止できる(止められる)日がきっと来るでしょう。
生活保護制度は、生活に困っている人の頼りになる必要不可欠な制度です。ただ、税金を活用している以上は納税者の納得できる運営が重要です。多くの人が生活保護制度のことを知り、状況を理解し、本当に困っている人に対して優しく手を差し伸べてほしいものです。
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者