土地を借りて建てたマイホームを転勤中だけ貸し出したい。注意点はありますか?
配信日: 2020.07.25
人によっては資産の有効活用として転勤中だけ貸し出し、発生する賃料をローンの返済に充てたいと思うことでしょう。そこで今回は、借地上に建てたマイホームを貸し出す際の注意点を解説します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
自己所有なら借地上の建物を他人に貸しても問題ない
法律上、他人から借りている物を別の誰かに貸す(転貸)するには貸主の許可が必要です。無断での転貸があった場合、貸主は契約の解除をすることができるとされています(民法612条)。
では、他人から土地を借り、その上にマイホームを建てて居住している人が、そのマイホームを誰かに貸し出した場合はどうでしょうか?イメージとしては、転勤中、誰もいないマイホームを貸し家として貸し出すなどといったことが該当します。
この場合、土地の転貸に当たるとして貸主の承諾が必要になるのでしょうか?答えはNOで、この場合は土地の転貸に当たらず、貸主の承諾は原則として必要ありません。
一見、土地の上の建物を貸し出すと、実質的に土地を利用する人も変わるため、土地の転貸に当たると思われるかもしれませんが、実は借地上にある自己所有の建物を貸す行為は転貸に当たらず、貸主の承諾も不要なのです。
なぜなら、あくまでも貸しているのは土地上にある建物であり、建物所有のために土地を借りているという本質的な部分に変化がないからです。
ただし、契約内容によっては問題になることも
基本的に、借地上に所有しているマイホームを誰かに貸したとしても、土地の転貸とはならず、問題となりません。
しかし、土地の所有者との契約内容によっては、この点が問題となることがあるのです。それは、土地の貸主との間で土地上の建物を貸し出すのを禁止する取り決めがあり、それについて合理的な理由がある場合です。
土地の契約書を一度確認してみてください。土地の上の建物を他人に貸すことを禁じる規定がある場合、無断で土地の上の建物を他人に貸してしまうと、状況次第では土地の貸主から契約解除の申し出などをされてしまう可能性があります。
土地上の建物を貸すことが禁止されている場合はどうするべき?
もし、土地の賃貸借契約において土地上の建物を誰かに貸すことが禁じられている場合、まずは土地の貸主となる方に相談してみてください。
転勤の期間だけという条件であれば、相談に応じてもらえる場合があります。いわなければ大丈夫だろうと、無断で建物を貸し出していると、トラブルの原因となることもあるため注意してください。
特にマイホームの所有を目的に土地を借りている場合、土地の所有者との付き合いは長期にわたることが想定されます。良好な関係を築き、マイホームに長く安定して住み続けるためにも、当初取り決めた契約内容を遵守するようにしてください。
転勤中のマイホームの取り扱いについては家族内でも充分な話し合いを
転勤が決まったとき、マイホームの取り扱いをどうするかは、まず家族内で充分に話し合うことが大切です。
借地部分についての取り決めはどうなっているのか、それを踏まえマイホームを貸し出すのか、それとも定期的に管理して維持するのか、などを話し合うのです。状況次第では、単身赴任ということもやむなしでしょう。
また、住宅ローンが残っていれば、金融機関への相談も必要となります。転勤中だけとはいえ、マイホームを誰かに貸し出すのであれば、事前の確認と準備を怠らないようにしておきましょう。
[出典]電子政府の総合窓口 e-Gov「民法」
執筆者:柘植輝
行政書士