更新日: 2020.10.29 その他暮らし
乗り物だけじゃない! こんな「定期券」のコストパフォーマンスはどうなの?
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
乗り物以外で、こんな定期券も
一定の金額を支払うことで、商品やサービスを決められた量だけ(場合によっては無制限に)利用できるのが「サブスクリプション」(定額制サービス)です。今や身の回りにハード・ソフト両面であふれていますが、定期券はそのはしりで代表格な存在なのでしょう。
そんな定期券ですが、ある中華料理店の店内で「ギョウザ定期券」という広告を見かけました。その値段は月額500円。一体、ひと月にどのくらい食べることができるのでしょうか。
その店は東京23区の西部エリアを中心に約30店舗を展開する中小チェーンですが、定期券は次のようなものでした。
(1)価格
月額500円
(2)サービス内容
・1回の来店ごとにギョウザ1人前(6個)を提供
・1日3回まで(チェーンの全店舗で利用可能)
・1回に350円以上の注文が必要
・持ち帰りはできない
(3)定期券の申し込みや決済の方法
・スマートフォンと決済システムを利用する(定期券はスマホ画面に表示される)
・オンラインでクレジット決済(店頭で現金購入することはできない)
・申込日より1ヶ月分課金(以降、解除しない限り自動継続課金)
ギョウザの通常価格は200円で、料理とセットにすると190円。定期券代500円は、3回利用すればモトが取れる計算となります。1日3回を30日間続けて利用すれば、1万7100円相当(セット価格190円×90回)を500円でゲットできるわけです。
ただし、そのためには1回ごとにギョウザとは別に注文しなければならない金額も最低で3万1500円(350円×90回)かかります。
飲食店の「定期券」は、結構あります
「飲み放題」や「食べ放題」という形で、時間単位のサブスクリプションを導入している飲食店はとてもたくさんありますが、実は月額制(定期券)を扱っているところも結構あるのです。
もう1つの事例として、ある居酒屋チェーンでは月額4000円で「飲み放題定期券」を提供しています。このチェーンは、東京23区の山手線沿線エリアを中心に首都圏ほか全国で20数店舗を展開していて、上場企業が運営する複数の飲食ブランドの1つです。
通常価格1980円のプレミアム飲み放題120分が、毎日利用できます。同じ店舗では1日1回ですが、チェーン店のほとんどで使えるため、ハシゴすれば1日に複数回の利用も可能となります。
定期券代4000円は3回利用すればモトが取れる計算で、1日1回30日間続けて利用すれば1回当たりの単価は130円台と大変割安です。なお、お通しやつまみで1回900円(税込み)以上の注文が条件なので、仮に30回利用するならば別途2万7000円の負担が必要となります。
飲食店から見た定期券のメリットとは
飲食店の定期券(月額制サービス)は、ラーメン、コーヒー、ランチなどいろいろなジャンルで導入しているケースが見られます。そして今回の2つの事例でもそうですが、各店独自に運用するのではなく、スマホアプリなどで顧客管理や決済(継続課金)を行 う専門業者のシステムを活用するケースも多いようです。
こうした仕組みの導入によって、顧客を囲い込んでリピート率の向上が期待でき、継続課金システムによって続けてもらいやすくなります。また、定期券サービスには一定金額以上の“抱き合わせ注文”を条件にしていることが多いため、ある程度固定的な売上が期待できるメリットもあります。
そして、顧客満足度が高まって競合他店との差別化を図ることができる点まで考えると、いろいろなメニューやサービスのひとつとして提供しても、店にとっては(採算性の良し悪しはともかく)商売上のメリットはあると思われます。
まとめ
安くて手軽でモトを取りやすいイメージがある先ほどのギョウザ定期券でも、仮に原価を50円(提供価格の25%くらい)とすると、お店から見れば月10回利用されても収支トントンです。
一方、利用者の視点では同じ店へひと月に10回通い続けた経験のある人は、コロナ禍の今でなかったとしても、意外と多くないかもしれませんね。
飲食店のサブスクリプションは、何回でモトが取れるかという視点以外に、「同じ店」や「同じメニュー内容」の繰り返しで飽きがこないかどうかといったことも判断材料にして利用した方がよさそうです。
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士