転勤になったときに賃貸に出せばよい、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、住宅ローンの残る家を賃貸に出すのは可能なのでしょうか? 今回は、住宅ローンを借りたままで賃貸に出せるのかどうか解説します。
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監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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目次
住宅ローンが残る家を賃貸に出せるのか?
住宅ローンを組んで自宅を手に入れても、転勤やその他の環境の変化で自宅を離れなければならないケースがあります。
ローンを払い続けている家をそのままにしておくのはもったいない、と賃貸に出すことを考えるかもしれません。しかし住宅ローンの残る家を賃貸に出して、家賃を返済に充てることは可能なのでしょうか? 詳しく解説していきます。
基本的には住宅ローンの残る家は賃貸に出せない
基本的には、住宅ローンの残っている自宅を賃貸に出すことはできません。住宅ローンの契約書には「資金使途」という条項があり、その中で「契約者の居住用の不動産の取得資金に用いる」という内容が書いてあることがほとんどです。このため、賃貸に出す場合には居住用の不動産ではなくなります。このような理由から住宅ローンを利用する上で問題となることがあります。
住宅ローンの契約に違反している状態になると、期限の利益を喪失したとして銀行側から残債を一括で返済することを求められる場合があります。転勤が決まったから、と賃貸に出す前に、まずは自分の住宅ローンの契約書を確認してみましょう。
賃貸に出していると、住宅ローン控除を受けることができない
住宅ローンが残る家を賃貸に出して自分が住んでいない場合には、大きなデメリットがあります。そのデメリットとは、住宅ローン控除の適用を受けることができない、ということです。
住宅ローン控除は、自分の居住用の家を取得した場合に一定の要件を満たす、ということが適用の条件になっています。つまり、住宅ローン控除は申請者自身が控除を受けようとする家に住んでいることが大前提の控除なのです。
逆に言えば自分が住んでいない家の場合は、賃貸に出していなくても控除を受けることはできません。
住宅ローン控除は10年から13年もの間、住宅ローンの年末残高の1%(11年目から13年目までは、年末残高の1%もしくは(住宅取得等対価の額-消費税額)〔上限5000万円〕×2%÷3のいずれか低い方)の金額を所得税から控除してもらえるものです。
例えば年末残高が2000万円だった場合は、所得税から20万円程度控除されます。
この控除が受けられないというのは、金額的に非常に大きな損失です。もちろん自宅に戻ってきた時点でまだ控除期間が終わっていない場合は、控除を再開することができます。しかし居住していなかった期間の控除については、再度受けることはできず、さかのぼって受けることもできません。
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転勤などで住宅ローンの残る家から離れなくてはいけなくなったら
住宅ローンの残る家からどうしても離れなければならなくなったとき、いきなり賃貸に出すのは契約上からも得策ではありません。住宅ローン控除を受けられないのも、金銭的に非常に大きな問題です。
いきなり賃貸に出す前にまずはどうしたらいいのか、取れる対策を考えるべきです。自宅を離れることになったときにどんな対策が取れるのか、解説していきます。
対策1:家族がいる場合は単身赴任を検討する
住宅ローンの契約では、契約者またはその家族が住んでいることが条件になっていることが多いのですが、単身赴任でも家族が住んでいるなら、契約上の問題はありません。
ただし、生活拠点が2つになるために、自分の勤める会社の福利厚生や制度次第では家計への負担が増える可能性があります。会社によっては単身赴任手当などがない、というところもあるかもしれませんので、会社の制度もよく確認しておきましょう。
対策2:不動産担保ローンへの借り換えを検討する
住宅ローンから不動産担保ローンへ借り換えをする、というのも対策のひとつです。すでに説明したように、住宅ローンは契約者、またはその家族は居住することが条件となります。そのため、自宅を離れる場合は借り続けることが難しくなります。
そこで住宅ローンではなく「不動産担保ローン」への借り換えをします。不動産担保ローンとは、文字通り自己の不動産を担保として借り入れるローンで、居住の有無は基本的に問われません。
不動産担保ローンには、デメリットもいくつかあります。まず、金利が住宅ローンよりも高くなることです。住宅ローンは、使途が自分の住む家のローンに限定されているため、非常に低い金利で貸し出しているのに対し、不動産担保ローンは、使途は基本的に自由ですが、金利が高くなる傾向があります。
また住宅ローンは最長35年の借り入れですが、不動産担保ローンはそれより短くなる可能性があります。金融機関によっては、借入期間が最長20年となっている不動産担保ローンもあります。
金利が高くなり、かつ返済期間も短くなることから、毎月支払う返済額は住宅ローンのときよりも高くなる可能性が大きいことを覚えておきましょう。ただし不動産担保ローンであれば、ローンが残っていても賃貸に出せます。
賃貸に出して借り手がつけば、家賃収入で返済額を相殺できる可能性が出てきまし、もし相殺できなかったとしても、負担は小さくて済む可能性も高くなります。気をつけなければいけないのは、家賃設定です。利益を出そうとして相場に合わない高い家賃をつけてしまうと、借り手がつかずに負担が大きくなってしまった、ということもあり得ます。
不動産担保ローンに借り換えて賃貸に出すなら、不動産会社に相談するなどして相場をしっかり把握しておいてください。
対策:借り入れしている金融機関に相談する
自分が住宅ローンを借りている金融機関に相談するのもとても大事なことです。金融機関によって対応は異なりますが、事情によっては賃貸に出すことを認めてくれることもあります。
金融機関としてはできるだけ長く借りてもらって、金利を払ってもらう方がよいのです。残債を一括返済されてしまったら、その時点でそれ以降の利息分による利益が出なくなることが確定してしまい、その利益を失うことになります。そういった意味でも、相談する価値はあるといえるでしょう。
不動産担保ローンに借り換えるには、審査をやり直す必要があり、手間もかかってしまいます。そのため、まずは金融機関に相談をして、事情を素直に話してみましょう。
住宅ローンと不動産担保ローンの違いをおさらい
まったく異なる金融商品である不動産担保ローンと住宅ローンは、共通点があるため混同している方もいるかもしれません。
住宅ローンと不動産担保ローンの共通点は、どちらも借入先の金融機関から担保となる不動産に抵当権を設定される点です。つまり両方とも、不動産を担保に融資を受けることになります。
住宅ローンは使途に制約があり不動産担保ローンより低金利です。しかし年収、勤続年数や返済負担率などの審査基準が設けられており、不動産担保ローンよりも融資へのハードルより高い傾向にあります。
住宅ローンと不動産担保ローンの主な違いは、次の6点です。
●ローンの使途
●審査
●融資額
●適用金利
●年齢
●団信
では違いについてそれぞれ見ていきましょう。
ローンの使途
まずおさえておきたいのは、住宅ローンは自ら所有し自ら住むことを目的としている点です。不動産担保ローンはいわゆる有担保ローンで、使用目的は多岐にわたり比較的自由に決められます。
例えばリフォーム資金、相続税資金や、賃貸収入など収益化を目的として不動産を活用する際の資金としても利用可能です。
住宅ローンは本人が住むマイホームの購入や増改築用の資金ですが、不動産担保ローンは、アパート・民泊経営など収益をあげる賃貸経営を目的とした物件の取得費用としても使えます。
審査・融資
不動産担保ローンの融資額は、不動産の担保価値と申込者の返済能力で決定されるのが特徴です。そのため融資額の上限は10億円にのぼるケースもあり、個人の返済能力を見る住宅ローンよりも大きい場合があります。
不動産担保ローンの場合には、担保価値の高い不動産を所有していれば、それだけ高額融資の可能性が高くなると言えるでしょう。
適用金利
住宅ローンの適用金利は、他のローンと比べてとても低いのが特徴です。不動産担保ローンの金利は、カードローンに代表される無担保ローンと比べると低いですが、住宅ローンと比べると非常に高いことに驚くかもしれません。
年齢
住宅ローンの申し込み条件は定年を考慮した年齢ですが、不動産担保ローンでは年齢の制限が明記されていない場合もあります。
団信
住宅ローンの申し込みの際には、住宅ローン専用の生命保険「団信」への加入が必須の場合があります。不動産担保ローンでは、そのような制度は設けられていません。
住宅ローンを賃貸など投資目的で利用するのは違反行為
不動産担保ローンの適用金利と比べて、住宅ローンの適用金利は、かなり魅力的に見える低金利です。そこで住宅ローンを利用すれば、賃貸向けの収益用不動産をおトクに取得できるのでは? と考える方がいても不思議はないと言えるでしょう。
ただし、住宅ローンを利用した収益用不動産の購入は、金融機関から契約違反とみなされます。
住宅ローンの金利優遇を逆手にとって、不動産投資を行うことは不正利用であり契約違反行為だと知っておきましょう。不動産投資の甘い勧誘話にも注意が必要です。
第三者へ賃貸する投資目的で住宅ローンを利用していると判明した場合には、住宅ローン残高の一括返済を金融機関から請求される可能性があります。
【賃貸不可!】「自ら居住」以外にも借り入れできるフラット35
不動産担保ローンの金利が高いことから、全期間固定金利のフラット35ならおトクに不動産投資できるという投資勧誘話を耳にしたことがあるかもしれません。
フラット35は、全国300以上の民間金融機関と住宅金融支援機構が連携して提供する商品です。住宅金融支援機構は政府が100%出資する独立行政法人であるため、フラット35は個人事業主や年金生活者も利用しやすい住宅ローンとなります。
過去に不動産投資目的で、住宅金融支援機構が提供するフラット35を不正利用したケースがありました。なぜならセカンドハウスや親族居住用住宅の場合には、自ら居住しなくてもフラット35を利用できるからです。
しかし、住宅ローンのフラット35を利用した賃貸経営はできませんので、くれぐれも注意するようにしてください。
ここではフラット35を、セカンドハウスや親族居住用住宅に利用する場合について解説します。
セカンドハウスも賃貸は不可
フラット35では、メインとなるマイホーム以外に週末などに過ごすセカンドハウス用の資金を融資している金融機関があります。
毎週末にセカンドハウスへ行かないので、空いている物件を賃貸したいとお考えの方もいるかもしれません。しかし、週末に過ごすのは申込者本人の利用が前提なので、民泊などの賃貸を目的とした利用は認められていません。
第三者への賃貸が発覚した場合には、住宅ローン残高を一括で返済するよう請求されることもありリスクが高いのでやめておきましょう。
なおセカンドハウス用のフラット35は、メインとなるマイホームと異なり住宅ローン控除は受けられないことに注意が必要です。
関連記事「住宅ローンのフラット35ってなに? 上手な利用方法をFPが解説!」
親族居住用住宅も賃貸は不可
フラット35では、自分が住むだけでなく親族居住用住宅を購入したり建設したりする資金としても利用できます。「親入居型」と「子入居型」の2種類あり、入居しないで親族と住宅を共有できるのがメリットです。
子が親のために住宅を用意したり、親が子のために住宅を用意したりする場合にぴったりな住宅ローンと言えます。申込者の入居は住宅ローンの申し込み条件に含まれていませんが、賃貸で親族以外を住まわせることは認められませんので、申込人は十分注意してください。
親族居住用住宅もセカンドハウス同様に、申込者は住宅ローン控除を受けられません。ただし融資を受ける物件に入居する親族が連帯債務者になる場合、連帯債務者は住宅ローン控除を受けられます。
金融機関に相談してから対応を決めよう
住宅ローンの残る家を賃貸に出すのは、契約書上は認められていないことがほとんどで、無断で行うことは極めてリスクの高い行為です。もしも明るみに出たら、住宅ローンの残債を一括返済しなければならない、という可能性すらあります。
そのため、まずは借り入れしている金融機関に相談をすることが大切です。本来は契約上認められていない行為ではありますが、賃貸に出すことを認めてくれることもあります。その後の対策については、金融機関からの回答によって検討しましょう。
もしも住宅ローンを借りたまま賃貸に出せるのであれば出して、無理なようであれば単身赴任や借り換えなどを検討してみてください。まずは相談、これが第一です。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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