金利上昇に備えて住宅ローンの「繰上げ返済」を検討中ですが、夫婦で意見が分かれています。繰上げ返済はするべきですか?
配信日: 2025.01.16
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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変動金利のリスク
低金利が続いてきたので、変動金利のリスクを実感した人はいないと思います。しかし、金利上昇期には変動金利はリスクが顕在化します。変動金利のしくみやリスクについて確認しておくことが大切です。
元利均等返済で変動金利を利用した場合、利用中に金利が上昇しても5年間は毎月の返済額は変更なく、毎月の返済額の元金と利息の割合が調整されます(5年ルール)。5年の見直しのとき、金利がいくら上昇していても、それまでの返済額の1.25倍までというルールになっています(125%ルール)。
金利が上昇しても返済額が変わらないと利息が返済額を上回る可能性もあり、元金が減らないだけではなく未払い利息が生じてしまいます。
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金利上昇の影響
当初の借入4000万円、変動金利0.5%(5年間一定と仮定)、35年返済のケースで、6年目に金利が0.65%(30年間一定と仮定)になったとします。毎月の返済額は10万3834円から10万6133円になり、月々の返済額は2299円増加します。
月単位で見れば大きな金額ではありませんが、年間では約2万7600円、30年間では約82万8000円の負担増です。わずか0.15%の金利上昇でも、長期返済の住宅ローンでは返済額に大きな差が出てきます。金利が上昇し続ければもっと大きな差になります。
繰上げ返済
長らく低金利が続いてきましたが、10月に変動金利が0.15%引き上げられ、この傾向が今後も続くとすると、金利上昇に備えて対策を考えておくことが大切です。
変動金利から固定金利への借り換えを検討する場合は、早めに動く必要があります。なぜなら、変動金利が上がってから借り換えると、今の固定金利より高い金利水準になってしまう可能性が高いからです。
この記事では、変動金利を継続しながら元本を減らしていく繰上げ返済について検討します。
繰上げ返済は、住宅ローンの毎月の返済額以外に、まとまった額を返済する方法です。このお金はすべて元金に充当されるので、その元金にかかるはずであった利息が軽減されます。早く返済するほど利息の軽減効果は高くなります。
したがって、ある程度お金が貯まってから繰上げ返済するよりも、こまめに返済したほうが利息の軽減効果が大きくなります。
一部繰上げ返済には、毎月の返済額は変えず返済期間を短くする「期間短縮型」と、返済期間は変えず毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」があります。この2つの方法のうち利息の軽減効果が大きいのが「期間短縮型」です。しかし、金利上昇による返済額の増額に備えるのであれば「返済額軽減型」がよいでしょう。
なお、もともと返済期間が短い人が「期間短縮型」の返済をする場合、返済期間が10年をきってしまうと住宅ローン控除を受けられない場合があるので注意が必要です。また、こまめに繰上げ返済すると手数料がかかる場合がありますので、確認してから返済しましょう。
繰上げ返済は余裕資金で行うのが基本です。住宅ローンの返済中は、子どもの教育費や老後の生活費の貯蓄も必要です。病気や失業など不測の事態に備えて最低6ヶ月程度の生活資金を確保しておくことも大切です。繰上げ返済で、手元から資金がなくなっても生活に支障がないのかも十分に検討しましょう。
出典
住宅金融支援機構 公式HP
国税庁 No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
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