「60歳」で退職予定ですが、住宅ローンがまだ「1000万円」残っています。老後の生活は大丈夫でしょうか?
本記事では、住宅ローンが残る老後にどんなリスクがあり、どんな備えや対策ができるのかを解説していきます。
ファイナンシャルプランナー
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
60歳時点の住宅ローン残高とその影響
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査 [二人以上世帯調査](令和5年)」によれば、50歳代の住宅ローンの平均残高は約928万円、60歳代では約733万円とされています。また、60歳代で1000万円以上のローンを抱える人の割合は約18%で、多くの方が老後も住宅ローンを返済していることが分かります。
家計への影響
仮に住宅ローンの残高が1000万円、返済期間が10年、金利が1.0%の場合、毎月の返済額は約8万7600円となります。仮に60歳以降も働くとして手取りが20万円だった場合、手取りの40%以上がローンの返済に消えてしまう計算です。現役時代であれば問題なかった金額も、収入が減った後では家計を圧迫しかねません。
老後の住宅ローンが家計を圧迫するリスクとは?
退職後に住宅ローンが残っていると、いくつかのリスクがあります。まず大きな問題となるのが、返済比率の上昇です。現役時代は返済比率を年収の25~35%以内に抑えていたとしても、年金収入のみでは、前述のように40%を超えてしまうことも珍しくありません。
また、完済年齢が75歳や80歳で設定されているケースも多く、病気や介護のリスクが高まる時期と重なります。その結果、住宅ローンの滞納や、最悪の場合は住宅を手放すリスクも出てきます。
特に注意したいのは、病気による収入減少です。がんや脳卒中、心筋梗塞などの重大な病気に備えるために、「がん団信」や「三大疾病団信」などの特約付きの住宅ローンに加入している場合は、一定条件を満たせばローン返済が免除されることもあります。これらの保険に加入しているかどうかによって、老後のリスクへの備えに大きな差が生まれます。
60歳までに完済するために今からできる対策
老後の負担を軽くするためには、繰り上げ返済を計画的に進めていきましょう。繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。
老後の負担を軽減させるには、期間短縮型がおすすめです。期間短縮型は、月々の返済額は変わらないまま、ローンの完済時期を前倒しできるため、老後のローン支払期間を短くすることができます。
また、支払う利息の総額が減るため、家計全体での負担を軽くする効果が期待できます。例えば、残高1000万円のうち300万円を繰り上げ返済すれば、返済期間を約3年短縮でき、返済期間が短くなった分の支払利息も削減できます。
また、変動金利で借り入れしている人は、固定金利へ切り替えることで今後の金利上昇リスクに備えるのもよいでしょう。ただし、借り換えには諸費用(印紙税、登記費用、保証料など)がかかります。諸経費の目安は借入額の3~4%程度で、1000万円の借り換えでは30~40万円の費用が発生するため注意してください。
老後も安心して暮らすために今から備えましょう
60歳時点で住宅ローンが1000万円残っていても、すぐに老後破綻を心配する必要はないでしょう。ただし、そのまま放置すれば家計が圧迫され、将来的に生活の質を落とすリスクは高いでしょう。
まずは現状のローン内容を見直し、繰り上げ返済や借り換えなどを検討し、定年前の完済を目指してください。余裕のあるうちに対策を講じることで、老後の家計への不安を軽減できます。大切なのは、先送りせずに「今できること」に着実に取り組むことです。安心して暮らせる老後を迎えるために、今日から一歩踏み出しましょう。
出典
金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査 [二人以上世帯調査]令和5年
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー