住宅ローンが「1000万円」残ったまま定年を迎えます。家族に「繰り上げ返済して」と言われていますが、75歳に完済予定ならこのまま払い続けていいでしょうか?

配信日: 2025.07.16
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住宅ローンが「1000万円」残ったまま定年を迎えます。家族に「繰り上げ返済して」と言われていますが、75歳に完済予定ならこのまま払い続けていいでしょうか?
定年を目前にして、住宅ローンがまだ1000万円残っているという状況は、珍しくないでしょう。現在は多くの人が35年ローンで住宅を購入し、完済が70代というケースも当たり前のようになっているようです。
 
しかし、いざ退職金や老後資金を目前にして「一括で返したほうがいいのでは?」と考えると、不安や迷いが出てくるのも当然です。家族から「繰り上げ返済して」と言われれば、なおさら気になるでしょう。
 
では、繰り上げ返済すべきか? それとも予定通り75歳まで払い続けるべきか? 本記事ではその問題について考えていきます。
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現在のローン金利と返済額をまず確認

まずは、ご自身が組んでいる住宅ローンの金利と、毎月の返済額を確認しましょう。金利が1%未満〜2%程度の低金利であれば急いで返す必要はなさそうです。現在の預金金利や安全な運用商品と比較しても、金利差が小さいためです。
 
仮に金利が1.2%程度で、月々の返済が6〜7万円、ボーナス払いなしだとすると、年金収入や退職金をあてにしながらゆるやかに返していく選択も現実的です。
 
特に、以下のような条件が当てはまるなら、「このまま返済し続ける」という選択肢にも十分な説得力があります。


・年金や個人年金などで毎月一定の収入が見込める
・生活費と返済額を合わせても、家計に大きな負担がない
・緊急時に使える貯蓄がある程度確保されている

ただし、金利が3%以上など高めに設定されている場合は、繰り上げ返済で利息分を圧縮するメリットが大きくなる可能性が高いでしょう。
 

繰り上げ返済の“心理的な安心感”も軽視できない

たとえ金利が低かったとしても、「借金がある」という状態に不安を覚える方も少なくありません。特にご家族にとっては、「老後に借金を抱えたままなのが心配」と感じることもあるでしょう。
 
家族が「繰り上げ返済してほしい」と願う背景には、「万が一、病気やけがなどで働けなくなったときに、毎月の返済が重荷にならないか不安」という思いがあるのかもしれません。
 
実際に、退職後の支出は予測しづらいものです。医療費、介護費、家の修繕費など、突然まとまったお金が必要になることもあります。住宅ローンという「固定費」があることで、老後資金全体の柔軟性が損なわれるという考え方も一理あります。
 
つまり、繰り上げ返済には「金利の節約」という経済的メリットだけでなく、「精神的に身軽になれる」という効果もあるのです。
 

繰り上げ返済するなら、“貯蓄すべてを使い切らない”が鉄則

退職金を使って一括返済しようとする方もいますが、注意が必要です。繰り上げ返済で手元の貯金を大きく減らしてしまうと、今後の急な支出に対応できなくなるリスクがあります。
 
たとえば、定年後すぐに大きな病気をして入院費がかかったり、子どもや孫に急な援助が必要になったりした場合などです。目安として、生活費の半年分〜1年分程度の現金は常に確保しておくことが望ましいとされています。
 
したがって、もし繰り上げ返済を考える場合は、「一部返済」も視野に入れましょう。たとえば、1000万円のうち500万円だけ繰り上げ返済して、残りは予定通り返済を続けるという方法もあります。
 
これなら、利息の負担は軽減されつつ、手元資金も一定額残せるため、バランスの取れた選択になります。
 

ローン控除や団信(団体信用生命保険)も含めて考える

住宅ローンには、税制面での優遇措置(住宅ローン控除)がある場合や、団体信用生命保険が付帯している場合もあります。
 
特に団信に加入していれば、契約者が万が一亡くなった場合、残りの住宅ローンは保険で完済され、家族に負担が残らない仕組みです。つまり、支払っている間は“万が一の備え”にもなっているのです。
 
この点を考えると、無理に完済するよりも、万一のときに備えて団信を生かしつつ返済を続けるという判断も合理的といえるでしょう。
 

結論:焦って返すことが正しいとは限らない│夫婦でライフプランに合わせた判断を

結論として、「75歳までに完済予定で、毎月の返済が苦しくない」のであれば、無理に繰り上げ返済をする必要はないでしょう。金利が低く、収支バランスに余裕があり、手元資金も残っているなら、このまま返済を続けるという選択肢を採ってもいいでしょう。
 
ただし、「気持ち的に不安」「家計が厳しくなるのでは」と感じるのであれば、ライフプランや医療費の備えなどを考慮して、一部繰り上げ返済を検討してもいいかもしれません。
 
最終的には、夫婦で将来の生活設計について話し合い、どちらの選択が「安心して老後を過ごせるか」を軸に決めることが大切です。
 
専門のファイナンシャルプランナーなどに相談することで、具体的な数字に基づいたアドバイスを受けられるでしょう。感情だけでなく、数字と将来予測に基づいて判断できるようになれば、後悔のない選択ができるかもしれません。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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