「住宅ローン減税」の控除額が変わったと聞きました。どのように変わったのでしょうか?
本記事では、改めて現行制度の概要や適用要件について確認していきます。
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
住宅ローン控除制度の概要
住宅ローンを利用して住宅の新築・取得または増改築等をした場合、住宅ローン控除制度によって最大13年間、各年末時点の住宅ローン残高の0.7%が所得税額等から控除されます(所得税で控除しきれない場合は翌年の住民税(上限9万7500円)から控除)。
例えば、会社員等の給与所得者がこの制度を適用すると、制度利用2年目以降は原則として年末調整することで、所得税額から直接控除され、税金が還付されることになります。
ただし、住宅を購入すれば必ずしも、全ての家屋で13年間、借入限度額までの税額控除を受けられるわけではありません。制度適用のための主な要件は、以下のとおりです。
(1)2025年12月31日までに入居すること
(2)その者の主として居住の用に供する家屋であること
(3)床面積が50平方メートル以上であること
(4)合計所得金額が2000万円以下であること
※(2025年末までに建築確認を受けた新築住宅で40平方メートル以上50平方メートル未満の場合、合計所得金額が1000万円以下)
(5)住宅の引き渡しまたは工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
(6)借入金の償還期間が10年以上であること
(7)既存住宅の場合、1982年1月1日以後に建築され、地震に対する安全性に係る基準に適合すること
ポイントとなる点は、「制度の適用を受ける者が居住する住宅であること」(賃貸や投資物件には適用できない)、「合計所得金額が2000万円以下」、「(現行で)2025年末までに入居すること」となります。
借入限度額、控除期間、控除率など
図表1は、住宅ローン控除の適用内容について、住宅の環境性能などの違いを基準にまとめたものです。
まず、「新築・買取再販住宅(注1)」と「既存住宅」では、適用内容が大きく異なります。新築住宅の控除期間はおおむね13年間、既存住宅はおおむね10年間となります。
次に新築住宅等の場合、「長期優良住宅・低炭素住宅」、「ZEH水準省エネ住宅」、「省エネ基準適合住宅」の性能を有する住宅のみが適用対象とされ、その他の住宅は対象外となります。
さらに上記の3つの環境性能ごとに、「子育て世帯・若者夫婦世帯(注2)」と「その他の世帯」で借入限度額が異なり、住宅ローン控除は子育てや若者世帯をより手厚く支援する制度ということができます。
なお、既存住宅(中古住宅)の場合は、環境性能の基準を満たす場合には3000万円で10年間、その他の場合は2000万円で10年間となります。
図表1
国土交通省「住宅ローン控除」を参考に筆者作成
注1:買取再販住宅とは、宅地建物取引業者が新築から10年超の家屋を買取、一定のリフォーム工事を施して2年以内に再販売する住宅のことです。
注2:年齢19歳未満の扶養親族を有する者または年齢40歳未満で配偶者を有する者、もしくは年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者(入居年の12月31日時点の現況による)
まとめ
不動産会社の営業トークの中には「13年間、最大455万円まで控除が受けられます!」などの宣伝文句も聞かれる場合があります。
住宅ローン控除を最大限適用できるのは、新築住宅(買取再販住宅)で、長期優良住宅・低炭素住宅の基準に適合し、子育て・若者夫婦世帯に該当する必要があります。さらに、13年間の毎年末のローン残高が5000万円以上を維持している場合となります。
住宅の新築、購入は、多くの方にとって一生の内で最大の買い物となるでしょう。長期の住宅ローンで購入した住宅に対して、毎年一定額の税金が還付されるこの制度は、非常にありがたく、うれしい制度です。
実際に新築、購入する際には、制度の適用要件などをしっかりと確認し、住宅ローンの借入額や返済額なども勘案したうえで、シミュレーションしておくことをお勧めします。
出典
国土交通省 住宅ローン控除
国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
