「住宅ローン300万円」を“繰上げ返済”しました。友人に「300万円でオルカン購入×25年」で“1000万円”以上になったと言われましたが、繰上げ返済は損だったでしょうか?
本記事では、10年前に3500万円の住宅ローンを金利1%・35年の返済期間で借りたケースを想定し、手元の300万円を繰り上げ返済に使う場合と、NISAを使ってオルカン(全世界株式インデックスファンド)に投資する場合とを比較します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
繰り上げ返済した場合|確実な返済期間短縮と利息軽減効果が出る
3500万円を金利1%・返済期間35年(元利均等)のローンで借りたときの総返済額は、約4150万円です。これを10年目に300万円を期間短縮型で繰り上げ返済すると、総返済額は約4070万円に減り、支払い期間も31年10ヶ月へと短縮できます。
繰り上げ返済による利息軽減効果は約80万円です。支払い期間短縮による利益も大きく、例えば28歳でローンを組んだ人であれば、63歳で完済予定のところが59歳で終えられることになります。60代を迎える前に完済できる見通しが立つことは、精神的な余裕にもつながるでしょう。
こうした利益を「確実」に得られることが、繰り上げ返済の最大のメリットです。
オルカンに投資した場合|25年後に1000万円超に成長する可能性も
一方、300万円をオルカンに投資し、年率5%で25年間運用できた場合、約1016万円にまで成長します。運用益716万円には通常20%(約143万円)の税金がかかりますが、NISAを使えば非課税です。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、外国株式の期待リターンを4.6~8.1%と見込んでいます。オルカンは日本株式も含むという違いはあるものの、5%前後の運用は十分現実的といえるでしょう。
投資は、インフレに強く、現役時代から老後資金づくりに直結する点も魅力です。また。急に大きなお金が必要になったときに、現金化しやすいこともメリットとなります。
ただし、将来のリターンはあくまで想定に過ぎず、途中で大きな下落に見舞われるリスクがあります。特に定年等で収入が減ったタイミングと暴落のタイミングが重なると、生活に影響するかもしれません。
確実性のあるローン返済と異なり、投資はリスクを伴う選択であることは、押さえておく必要があります。
どちらが得と考えるかは価値観次第
金額面ではオルカンなどでの投資のリターンが上回りますが、安心感という観点では住宅ローンの繰り上げ返済も十分合理的です。ローンを減らすことは確実に利息を減らせる行為であり、将来の金利上昇リスクを回避する効果もあります。
逆に、リスクを受け入れられる人にとっては、投資で資産を大きく増やすチャンスを逃さないほうが有利といえるでしょう。
また、一部を繰り上げ返済、一部を投資に回す「ハイブリッド戦略」も悪くありません。
例えば、150万円を繰り上げ返済すれば利息は約40万円減り、返済期間も1年7ヶ月短縮できます。残り150万円を投資すれば、計算上、25年後には約508万円まで成長します。
このように、手堅く確実に利益を得る方法と、リスクを取って大きく資産を増やす方法を、バランスよく両立させるやり方も良いでしょう。
まとめ 繰り上げ返済は「損」ではない
結論として、繰り上げ返済は損ではありません。確かに、低金利時代においては繰り上げ返済の効果は限定的で、投資の期待リターンが大きく見えてしまいます。
とはいえ、 安心を重視するか将来のリターンを重視するかの違いで、どちらも正しい選択です。自分や家族の価値観を考えながら、将来に向けて判断すると良いでしょう。
出典
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて~詳細~
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士