ローン残高2500万円、3年前に住宅ローンを借り換えました。最近、さらに有利なローンが! 借り換え2度目でも住宅ローン控除を受けられる?
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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目次
住宅ローン控除の原則と「借り換え」の位置づけ
住宅ローン控除とは、「マイホームを“取得または増改築”して、そこで“自ら”住んでいる」ために借り入れた住宅ローン等について、所得税控除が受けられる制度です。「借り換え」を行った場合、この控除はどうなるのでしょうか。
結論として借り換えをしても、条件を満たせば控除を継続して受けることは可能です。控除そのものに回数制限はありません。ただし、以下であげるいくつかの注意点をクリアにしていきましょう。
新たなローンが「従前のローン返済のための借り入れ」であること
まず、新たなローンが「従前のローン返済のための借り入れ」であることです。借換資金が“住宅ローンの返済に直接充てられている”ということが明らかである必要があります。
生活費や別用途の支出を含んでいると、控除対象から外れる可能性があります。そのために、従前ローンの残高証明書、繰上返済の記録、抵当権抹消や設定登記書類等を準備しておきましょう。
借り換え後の返済期間が「10年以上」であること
控除適用のためには、返済期間が10年以上であることが必要です。借り換えによって残り返済期間が10年未満、例えば借り換え時点で残り9年になると、控除の適用が終了してしまいますので要注意です。
新ローンで従来の適用要件を満たすこと
住宅ローン控除にあたっては、以下のような基本要件も満たすことが求められます。
(1)年末時点でその住宅に自ら居住していること
(2)合計所得金額が一定以下(例:2000万円以下)であること
(3)床面積・取得・入居のタイミング等、住宅の条件
借り換えを機に条件から適用外とならないようにするためには、特に「入居が続いているか」「ローン期間」「用途が明確か」などを再確認しておくことが必要です。
2度目の借り換えで特に気をつけたいポイント
1. 控除期間がリセットされるわけではない
特に、気をつけたい点として、まず期間が延長されて再度10年間控除が受けられるわけではないという点です。居住開始からカウントしていた控除期間が、変わるわけではありません。最初の借入時に控除10年を設定し、すでに3年経過しているなら、残り7年分が控除期間です。
2. 借り換えによる費用と控除対象額の関係
借り換えをする際、諸費用(手数料・保証料・登記費用等)を借入金額に含めると控除対象となる年末残高の計算上、控除できる額が制限されることがあります。そのため、「手数料を上乗せして借り換えをすると、控除額が想定より少なくなる」といった、思わぬ誤算を招いてしまうリスクがあります。
住宅ローン控除額の計算の基礎は、年末のローン残高です。住宅ローン借り換え後の残高が借り換え前の残高と同額、またはそれ以下の金額であればそのまま控除対象額となります。
しかし、借り換えにかかる諸費用によって返済金額が借り換え前よりも増えた場合、借り換え後の住宅ローン控除対象額が調整される可能性が出てきます。
借り換え前のローン残高:2500万円
新たな借入金:2300万円
借り入れ後の年末残高:2200万円
この場合、ローン控除対象額は2200万円です。
借り換え前のローン残高:2500万円
新たな借入金:2800万円
借り換え後の新たな借入金の年末残高:2600万円
この場合の控除対象額は、2600万円ではなく、2600 万円×2500万円/2800万円=約2321万円です。
3. 借り換えの“得”と“控除ロス”を比較して検討する
金利が低い住宅ローンに借り換えによって、金利が低くなって月々の返済が軽くなるメリットがあるように見えても、控除期間や控除対象残高によっては思ったほどの節税効果にならない可能性もあります。ローン相談窓口やシミュレーションソフトなどを活用して、慎重に検討することが大切です。
4. 確定申告・年末調整の手続き
借り換えを機にローン会社が変わる、抵当権が移るなど手続きが伴います。申し込みや抵当権抹消、新抵当設定の手続き、年末残高証明書など各種書類の確認が必要です。
まとめ
今回のご相談のように、ローン残高2500万円で3年前に借り換え済みという状況のなか、「さらに有利なローン」を目にすると魅力的に映ります。しかしこれまで述べてきたように、本記事であげた注意点をクリアにして慎重に検討しましょう。
1. 新たな借り換えローンの条件(借入額・返済期間・金利・手数料等)
2. 借り換え後の返済期間が10年以上残るか確認。10年未満になるなら控除適用外となる可能性がある
3. 借り換え費用(手数料・保証料・登記費用等)を借入額に上乗せする場合、その上乗せ分が控除算定に影響しないかを確認
4. 控除の残り期間・控除対象残高の見通しを立て、金利引き下げによる節約と控除による節税効果を慎重に比較検討
5. 書類(申し込み・抵当権抹消・新抵当設定・年末残高証明書・確定申告あるいは年末調整)を確認して、控除が継続できる状態を整備
出典
国税庁 借換えをした住宅借入金について再度借換えをした場合
国税庁 No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者