大学に合格したら奨学金がもらえると勘違いしていた! 進学前に必要な資金はどうしたらいい?

配信日: 2025.11.22
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大学に合格したら奨学金がもらえると勘違いしていた! 進学前に必要な資金はどうしたらいい?
高校3年の春に日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を予約した結果を秋にもらい、採用候補者になったので入学金等の支払いについて安心している人もいるでしょう。
 
しかし、JASSOの奨学金は、進学後に振り込まれます。そのため、進学前に必要となる入学金・授業料など(初年度納付金)の不足分に充てることはできません。
 
本記事では、進学前に必要な資金はどうしたらいいのか、公的融資制度である「国の教育ローン」を中心に解説します。
新美昌也

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

受験から入学までに要した費用

東京私大教連の「私立大学新入生の家計負担調査 2024年度」によると、受験から入学までに要した費用(受験費用、家賃、敷金・礼金、生活用品費、初年度納付金)の総額は、自宅生の場合は161万6981円、自宅外生の場合は231万4781円となっています。このうち大きなお金がかかるのが初年度納付金で、136万5281円となっています。
 
初年度納付金は、私立大学の場合、合格後1~2週間以内に最小限「入学金+前期分」を納付するのが一般的ですので、合格後に慌てないように事前に準備しておくことが大切です。
 
進学前の資金準備に利用可能で、代表的な公的融資制度としては「国の教育ローン」があります。その他、低所得者世帯には「生活福祉資金貸付制度(教育支援資金)」や「入学時必要資金融資(労働金庫)」があります。また、ひとり親家庭には「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」があります。
 

国の教育ローン(日本政策金融公庫)

借り入れできる人は、国内外の高校、大学、大学院、専修・各種学校などに入学・在学する子どもの保護者です。申し込みは1年中いつでも可能で、JASSOの奨学金との併用ができます。申し込みから融資まで20日程度かかります。融資のキャンセルは自由なので余裕をもって必要時期の2~3ヶ月前に申し込むとよいでしょう。
 
申込時、住宅ローン(または家賃)や公共料金の支払い状況を確認できる、預金通帳のコピー(6ヶ月分)などが必要になりますので注意してください。
 
国の教育ローンを利用するには、子どもの人数に応じた世帯年収の上限をクリアする必要があります。金利は、計画的な返済計画が立てやすい固定金利のみで2025年9月1日以降の金利は3.15%(保証料別)となっています。
 
原則、連帯保証人が必要ですが、連帯保証人を立てられない場合は、保証料を支払うことで連帯保証人に代えることができます。
 
融資限度額は、1年間に必要な費用について、進学・在学する子ども1人当たり原則350万円(自宅外通学者など一定の要件を満たす場合は450万円以内)です。
 
使い道は幅広く、学校納付金(入学金、授業料など)、受験費用(受験料、交通費、宿泊費など)、教科書代、パソコン購入費、通学費用、在学のための住居費用(敷金、家賃など)、留学費用、学生の国民年金保険料などに利用できます。
 
返済期間は20年以内で任意に設定できます。返済方法は、「元利均等返済」と「元金据置(在学期間中は、利息のみの返済)」の2種類から選択できます。
 
「国の教育ローン」は、家庭の状況に応じて、金利および保証料の優遇制度があるのが特徴です。
 
例えば、世帯年収200万円(所得132万円)以内の方、または子ども3人以上の世帯かつ世帯年収500万円(所得356万円)以内の方の金利は、「通常の金利-0.4%」になります。母子家庭、父子家庭、または交通遺児家庭は「通常の金利-0.4%」および保証料が「通常の保証料の3分の2」に低減されます。
 
国の教育ローンの「返済シミュレーション」で試算すると、100万円、返済期間10年、金利3.15%で借りた場合、毎月の返済額(元利均等返済)は9800円、保証料(一括)は6万7467円となり、融資時に一括して差し引かれて保護者の口座に振り込まれます(このケースでは、振込額は93万2533円)。
 
返済は融資日の時期により、翌月または翌々月から始まります。
 

入学時必要資金融資(労働金庫)

労働金庫の融資制度に、入学時必要資金融資があります。日本学生支援機構の「入学時特別増額貸与奨学金」の採用候補者が利用できる独自の融資制度で、進学後に振り込まれる「入学時特別増額貸与奨学金」により一括返済する約束をすることを条件に進学前に労働金庫から融資を受けることができる制度です。
 
奨学金を担保としていますが、別途、連帯保証人が必要です。また、採用候補者が対象ですので、融資を受けられるのは10月以降です。
 
融資限度額は、入学時特別増額貸与奨学金で予約した額(10~50万円)です。したがって、奨学金の予約時には、50万円を選択しておくといいでしょう。使途は、入学金・授業料に限ります。金利は固定金利で、2025年11月現在3.15%です。
 
なお、「国の教育ローン」の融資を受けられる場合には、「入学時特別増額貸与奨学金」を利用できませんので、原則、「国の教育ローン」を申し込む必要があります。
 

生活福祉資金貸付制度(都道府県社会福祉協議会)

都道府県社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度(教育支援資金)は、低所得世帯(住民税非課税程度の世帯)向けの無利子貸付制度です。保証人は不要(世帯内で連帯借受人が必要)です。据置期間経過後20年以内(据置期間は卒業後6ヶ月以内)に返済します。
 
融資限度額について、入学に際して必要な「就学支度費(入学金、教科書・制服・通学カバン・通学用自転車代等)」は50万円以内、就学するのに必要な「教育支援費(授業料、設備費、PTA会費、通学定期代等)」は、月6万5000円以内(大学)です。
 
他の公的融資制度の利用が優先されるため、日本学生支援機構奨学金、母子父子寡婦福祉資金修学資金などが利用できる場合は社会福祉協議会にご相談ください。また、申請を受けてから資金を交付するまでは通常1ヶ月以上かかりますので、早めに相談しましょう。
 

母子父子寡婦福祉資金

20歳未満の児童を扶養している母子家庭、父子家庭および寡婦等が、無利子で教育資金を自治体から借りることができる制度です。保護者が借りる場合は子どもを連帯借受人(連帯保証人は不要)、子どもが借りる場合は保護者が連帯保証人となります。
 
融資限度額について、就学、修業するために必要な被服等の購入に必要な資金「就学支度資金」は、国公立大学・短大・大学院等に通う場合42万円(自宅外)、私立大学・短大等に通う場合59万円(自宅外)です。
 
高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、大学院または専修学校に就学させるための授業料、書籍代、交通費等に必要な資金「修学資金」は、月14万6000円(私立大学・自宅外)となっています。
 
据置期間(卒業後6ヶ月以内)経過後20年以内に返済します。
 
申請を受けてから資金を交付するまでは通常1ヶ月以上かかりますので、お早めに自治体の窓口にご相談ください。
 

まとめ

奨学金は入学前の資金不足には利用できません。この場合、まずは、民間に比べ条件がよい公的融資制度を検討しましょう。公的融資制度は、申し込みから融資まで時間がかかるので早めに申し込むようにすると安心です。有利子の貸付金は、無利子の制度から検討するといいでしょう。
 

出典

東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連) 私立大学新入生の家計負担調査(2024年度)
日本政策金融公庫 教育一般貸付(国の教育ローン)
全国労働金庫協会 令和8年度奨学生採用候補者の皆さまへ
東京都社会福祉協議会 生活福祉資金貸付事業
内閣府 男女共同参画局 母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
 
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー

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