「月5万円」の住宅ローンの返済が75歳まで続きます。退職後の返済って、みんなどうしてるの?

配信日: 2025.11.30
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「月5万円」の住宅ローンの返済が75歳まで続きます。退職後の返済って、みんなどうしてるの?
月5万円の住宅ローンの返済が75歳まで続くといった長期の返済計画は、いまや珍しくありません。
 
返済期間を長くすることにより月々の返済額を抑えられる一方で、「退職後も住宅ローン返済が続く」というリスクを抱える世帯が増えています。では、実際に退職後も住宅ローンが残る場合に、どのように返済を続けているのかを本記事で解説します。
小山英斗

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
https://miraiken.amebaownd.com/

退職後のローン返済、実態はどうなっている?

住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査(2024年度)」によると、完済予定年齢の平均は74.8歳となっています。
 
なお、この完済予定年齢は公式に公表された統計値ではなく、借入時の年齢中央値43.0歳と償還期間の平均31.8年の数値から本稿で単純計算した目安です。50歳以降に借り入れを行う人も増えており、「老後の返済」を前提とした資金計画が一般化しつつあります。
 
ただし、実際の完済までの期間が当初借入期間よりも10年程度短いといった調査結果もあることから、30~40代で借り入れた人が、60代の間に完済しているケースも多いと推測されます。
 
また、総務省「家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)」によれば、65歳以上の夫婦無職世帯の平均消費支出は月約26万円(住宅ローンを除く)となっています。
 
一方、年金収入などから社会保険料などを引いた平均的な手取り収入は約22万円にとどまり、毎月4万円程度の赤字になる世帯も少なくないのが現実です。つまり、住宅ローン返済が老後も続くと、生活費を圧迫する可能性が高いということになります。
 

「退職金で一括返済」は万能ではない

退職時に住宅ローンを退職金でまとめて返すというのは理想的な形に見えますが、実際には注意が必要です。
 
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査結果」によれば、大学卒の平均退職金は約1900万円前後となっています。まとまった金額ではありますが、退職後も、医療費や住宅修繕、子どもや孫への支援など支出も多くなりがちで、退職金全額をローン返済に充てる余裕は限られています。
 
実際、株式会社400F(東京都中央区)が2025年8月に実施した「オカネコ 住宅ローンに関する調査」(調査対象:50代以上の住宅ローンを借り入れている83人)によると、退職金を繰り上げ返済に充てる意向は2割強にとどまるといった結果で、ローン返済よりも老後資金の確保を優先している人が多いと考えられます。
 
つまり、「退職金で返す」という計画が実行できないケースが少なくないのです。
 

年金から返済を続ける人が増加中

近年は、「老後も年金で返す」世帯も増えています。例えば月5万円の返済であれば、年間60万円の返済額となります。前述の「家計調査報告」による、65歳以上の夫婦で無職世帯の手取り収入(平均約22万円×12ヶ月=264万円)のうち、約23%をローン返済が占める計算です。
 
老後も住宅ローン返済を継続するような状況においては、生活費や医療費を含めた家計全体の見直しが不可欠です。特に、固定資産税や修繕費などの「持ち家コスト」も忘れがちです。老後ほど、それらの負担感が増すので注意が必要です。
 

退職後も安心して返すための3つの対策

老後の住宅ローン返済負担を軽減するための対策を退職前に検討しておくことが重要です。
 

現役時代のうちに完済時期の調整を行う

住宅ローン完済年齢を65歳以内に設定した場合と75歳完済とでは、総返済額に数百万円の差が出るケースもあります。金利が低いからといって返済期間を当初借入時のままにしておくのではなく、返済期間短縮のために「定年前の繰り上げ返済」を検討することが重要です。
 

住み替えやリフォームで支出を最適化

退職後に子どもが独立して住居が広すぎる場合、住み替えによるローン完済や、リフォームなどで持ち家コストや光熱費などの生活費を圧縮するという選択肢も考えられます。
 

借り換えや返済方法の見直し

退職前であれば、金利引き下げ型の借り換えで毎月の返済負担を軽減できる可能性があります。また、持ち家としての資産を有効活用して「リバースモーゲージ型住宅ローン」などの資金調達方法で、生活資金に余裕を持たせる方法もあります。
 

まとめ

「月5万円の住宅ローン返済が75歳まで続く」という状況は、いまや特別なことではありません。背景には、晩婚化や晩年次取得、定年延長など社会構造の変化があります。もはや「定年までに完済」は「理想」であっても「常識」ではないかもしれません。
 
老後の返済を無理なく続けられるかどうかは、何歳まで働き続けるのかを含め、現役時代の計画次第です。重要なことは、退職を迎える前にライフプラン全体を見直し、老後の家計をシミュレーションしておくことです。これだけでも、老後の安心感は大きく変わるでしょう。
 

出典

住宅金融支援機構 2024年度フラット35利用者調査
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査結果の概況
株式会社400F オカネコ 住宅ローンに関する調査(PR-TIMES)
 
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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