住宅ローン残高900万円ある状態で主人が亡くなりました。ペアローンなので、私が全額を引き継ぐことになるのでしょうか?
特にペアローンは2人がそれぞれ別の契約者となるため、仕組みを理解しておかないと、予期せぬ返済負担が生じることがあります。
本記事では、ペアローンにおける死亡時の取り扱いと家計への影響を解説します。
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
目次
ペアローンの仕組みを理解して判断材料を整理しよう
「ペアローン」は、夫婦や親子など2人がそれぞれ独立した住宅ローン契約を結び、2本のローンとして扱われる借り入れ方式です。通常、互いのローンについて相互に連帯保証人となるケースが多く、各契約者が主たる返済義務を負います。
1本のローンで収入を合算して借入額を増やす「収入合算」とは仕組みが異なり、ペアローンはあくまで各自が独立した債務者として契約する方式です。
そのため、どちらか一方に死亡や離婚などのライフイベントが発生した場合、残ったローンや保証責任の扱いが複雑になりやすいという特徴があります。
特に重要なのは、亡くなった方が契約者となっているローン部分に団体信用生命保険(団信)が付いているかどうかです。団信が適用されれば亡くなった方の借り入れ分は完済されますが、当然ながらご自身(亡くなった方の配偶者)のローンはそのまま残ります。したがって、ペアローンの場合は、死亡時に住宅ローンが自動的にゼロになりません。
死亡時に何が起こるのか:残債・保険・相続の視点
まずは、「誰の名義の借り入れがどれだけ残っているか」を確認する必要があります。たとえ900万円の借り入れが全体として残っていたとしても、その内訳が亡くなった方のローンか配偶者のローンかで負担は大きく変わります。
亡くなった方の契約分に団信が適用されれば、その分の残債は保険金で完済されます。しかし、団信が付いていない、告知義務違反などで契約解除となった場合は、残債がそのまま相続の対象となります。亡くなった方の借金は、原則として相続人に引き継がれるため、相続放棄をするかどうかも含めて慎重に判断を行う必要があります。
また、住宅そのものを相続する場合は名義変更や手続きが必要となり、登記費用なども発生します。住宅ローン残債がある状態で相続するかは、不動産としての資産価値と相続によって引き継ぐ可能性のある住宅ローン債務の両面を比較して判断することが重要です。
状況で考える返済負担と選択肢
今回のように900万円の残債があり、ご主人が亡くなったケースでは、まず金融機関に連絡し、団信の適用状況や返済方法を確認しましょう。ご主人の借り入れ分が団信で完済されるかどうかが、今後の返済負担の大きな分岐点となります。
もし、配偶者側の借り入れ分がそのまま残る場合は、例えば年利1%・返済期間10年・元利均等返済といった条件で試算すると、年間の返済額はおおむね90万円台となります。ただし、この金額が家計にとって重い負担となるかどうかは、収入状況や相続の内容、今後の支出計画などにより大きく変わります。
一人で返済を続けることが難しい場合は、住宅の売却や住み替えといった選択肢も検討の対象となります。もし返済の継続が難しい場合には、早い段階で金融機関に相談し、返済条件の見直し(返済期間の延長や返済額の調整など)が可能かどうかを検討することも重要です。
また、相続放棄や限定承認といった法律上の選択肢もありますが、不動産が関わる場合は、残っている住宅ローンの扱いや名義変更の要否、売却の可否、管理義務の所在など、判断すべき点が多く手続きも煩雑になりがちです。
こうした選択肢を検討する際には、専門家の助言を受けながら慎重に進めることが望まれます。まずは契約書類や残高証明書を確認し、現在の家計状況と将来の収支を踏まえたうえで、返済可能性を具体的に見極めていきましょう。
よくある誤解を避け、冷静に判断するために
ペアローンに関しては、「片方が亡くなればローンは自動でゼロになる」「団信に入っていれば何もしなくてよい」と誤解する方がいるかもしれません。しかし実際には、団信の適用条件やそれぞれの名義の違い、相続の仕組みなどが複雑に関係します。
誤った前提で判断すると、後から予期せぬ返済負担を抱えてしまうこともあります。だからこそ、契約内容を正確に確認し、金融機関への相談を行い、必要に応じて専門家にも相談しながら慎重に判断することが重要です。
まとめ:将来の負担を軽くするために、自分で確かめよう
ペアローンは2つのローン契約で成り立っているため、どの借り入れ分を誰が引き継ぐのかは契約内容と団信加入状況によって異なります。今回のように900万円の残高がある場合でも、必ずしも全額を引き継ぐとはかぎりません。
一方、団信が適用されない場合には、予期せぬ大きな負担を抱えることもあり得ます。
不安な状況だからこそ、まずは契約と現状を正確に把握し、金融機関や専門家に相談しながら、今後の住宅の取り扱いや返済方法を冷静に検討することが重要です。正しい情報をもとにさまざまな選択肢を比較検討することが、今後の生活を守るために欠かせない一歩となるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
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