奨学金を借りている息子が、赤点ギリギリの成績を取っています。このままだと奨学金って止まるのでしょうか…?
本記事で、貸与・給付ともに解説します。
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
奨学生としての適格性の確認
奨学金制度は、「教育の機会均等」の理念のもと、能力があるにもかかわらず、経済的理由により進学を諦めることがないように支援するための制度です。
令和6年度は給付奨学金35万人、貸与奨学金94万人の学生が奨学金制度を利用しています。割合で見ると、高等教育機関の学生のおおむね3人に1人が奨学金制度を利用している状態です(出典:独立行政法人日本学生支援機構「奨学金事業に関するデータ集」より)。
このように、多くの学生に利用されている制度ですが、奨学生に採用されるには、経済状況の他に学業についての基準があります。
例えば、在学採用の場合、貸与奨学金第1種、給付奨学金ともに、高等学校の評定平均値3.5以上、2年次以上は、貸与奨学金の場合は学部の上位3分の1、給付奨学金の場合は学部上位2分の1という基準があります。ただし、学修意欲により基準を満たす場合もあります。
しかし、奨学生として採用されれば卒業まで制度を利用できるというものではなく、採用後も奨学生としての適格性を持ち続ける必要があります。学業成績や学修状況、生活状況は、学校が定期的に確認して認定し、日本学生支援機構へ報告します。機構は適格基準に基づいて奨学金継続に係る措置をとります。
学業成績の不振等とは?
ところで、時々赤点ギリギリの点数を取ってしまった場合、「学業成績の不振等」に該当するのでしょうか。
適格認定の区分には、「継続」、「廃止」「停止」「警告」があります。「継続」以外は学校より「処置通知」が出されます。処置の区分と内容は以下のようになっています。
・「警告」(奨学金は継続)
成績が向上しない場合、次回の適格認定後に停止または奨学生の資格を失うこともあります。
・「停止」(奨学金は中断)
1年以内で学校長が定める期間、交付停止(停止の理由が継続している場合は、停止を経過後、さらに停止延長)。成績等が回復した場合は、交付が復活することがあります。
・「廃止」(取りやめ)
奨学生の身分を失います。
(出典:独立行政法人日本学生支援機構「適格認定」)
貸与奨学金の適格認定は、(1)人物について、(2)学業について、(3)経済状況についての3つの要素に基づいて行われます。ここで、学業については、「修業年限で確実に卒業(修了)できる見込みがあること」とあります。
したがって、卒業延期が確定した人、延期する可能性が極めて高いことが判明した人は、原則「廃止」になります。その他に、当年度の単位取得が皆無、または極めて少ない場合も原則「廃止」となります。
次に、返還の必要のない給付型奨学金の基準は次のようになっています。
・修得単位数の合計数が標準単位数の7割以下の場合
・GPA(平均成績)等が下位4分の1である場合
・出席率8割以下など、学修意欲が低いと学校が判断した場合
となった場合は、「警告」がされます。
また、連続して「警告」となった者のうち、2回目の警告理由が、GPA(平均成績)等が下位4分の1である場合」のみ「停止」になります。その他の理由の場合は「廃止」になります。
その他に「廃止」になるのは、以下の場合です。
・卒業延期が確定した場合(学業不振によるもの。休学による延期は除く)
・修得単位数が、標準単位数の6割以下
・出席率が6割以下など、学修意欲が著しく低いと学校が判断した場合
(出典:独立行政法人日本学生支援機構「適格認定(学業等)」)
よって、時々赤点ギリギリの教科があっても、それだけでは処置通知があっても「警告」からで、いきなり「停止」や「廃止」にはなりませんが、成績向上のないまま続くと「停止」、そして「廃止」になります。取得単位数が著しく少ない、出席率が6割以下の場合は、原則「廃止」です。
やむを得ない事情がある場合
給付奨学金でも、貸与奨学金でも、卒業延期が確定した場合、もしくは卒業延期の見込みとなったら「廃止」されます。
ただし、「廃止」や「警告」の基準に当てはまる場合でも、病気や災害等のやむを得ない事情による欠席や単位不足の場合は、学校に申し出ましょう。
休学により卒業が延期となった場合は、「休止」の手続きをとります。給付奨学金には「休止」期間に制限はありませんが、貸与奨学金は「休止」が連続して2年を超える場合は、貸与奨学生の身分を失うことに注意しましょう。
出典
独立行政法人日本学生支援機構 奨学金事業に関するデータ集
独立行政法人日本学生支援機構 適格認定(奨学生としての適格性の確認)
独立行政法人日本学生支援機構 適格認定(学業等)
独立行政法人日本学生支援機構 進学後(在学採用)の給付奨学金の学力基準
独立行政法人日本学生支援機構 進学後(在学採用)の第一種奨学金の学力基準
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者