住宅ローンの金利がどんどん上がって不安! 今から「固定金利」にすべき? 変動のままで大丈夫?
本記事では、すでに住宅ローンを支払っている人が契約を変更する際の注意点について解説します。
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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目次
焦って固定へ乗り換える必要は、原則ない
最近、ニュースやSNSで「住宅ローン金利が上昇」「変動金利の時代が終わるかも」といった情報を見聞きすることが増え、変動金利で借りている人にとっては「今すぐ固定金利に乗り換えるべき?」という悩みが大きいでしょう。
一律に、「慌てて固定に変える必要はない」というのが回答です。理由として、変動金利は短期プライムレートを基準にし、日銀の政策金利が動かないかぎり上がりにくい構造になっているためです。
現時点で景気の状況を考えると、政策金利の“急上昇”は想定しがたいです。変動金利がすぐに1~2%も跳ね上がる可能性はかなり低いとみられています。
ただし、残りの返済期間や借入残高、家計の余裕度はライフイベントなどによっても変わりますので、その都度適切な選択肢も変わります。したがって、一律に「変動のままにしておくべきだ」「固定が安全」といったような正解はありません。
では、どのように判断していけばよいかについて、ポイントを整理していきましょう。
変動金利のメリットとリスクについて確認
まず、2025年の住宅ローン金利のレンジを見ていきましょう。
残念ながら、全国の住宅ローン利用者すべてを対象にした平均金利といった公式統計は、公的機関・金融機関ともに定期公開していません。住宅ローン金利は、銀行・ネット銀行・地方銀行など金融機関ごとに設定され、かつ「借入時期」「融資条件」「優遇幅」「審査状況」などで大きく異なるからです。
金融機関などのサイトから2025年前半は、銀行下限金利レンジで 0.345~0.625%、中央値が約 0.48~0.55%、11月は、おおむね0.6~0.7%台、中央値で約0.65%です。
固定金利も変動金利と同じ理由で、レンジで判断するしかありませんが、ローン期間 35年など全期間固定金利での「下限金利(優遇適用後)」は、約1.97~2.91%のレンジで提示されています。2025年9月時点では、「長期固定金利は上昇傾向にあり、多くの銀行で10年固定が2%前後」とも報道されています。
両者の数字を比べれば、明らかに変動金利の最大のメリットは、固定金利と比べて低く、返済総額を抑えやすいという点であることが分かります。
一方で、「金利が上がったら返済総額が増えてしまう」というリスクもあります。ただ、ここで誤解されているポイントがあります。
それは、多くの金融機関では、変動金利が上がっても返済額は5年間据え置かれるというルール(返済額見直しルール)と、返済額が急騰しないように“1.25倍ルール”を採用しているということです。このルールに基づけば、金利が上がったからといって、すぐに返済額が倍になるような急激な負担増は起こらない仕組みになっています。
ただし、このルールは法的義務を伴うものではなく、この適用を採用していない金融機関もありますので、契約内容を確認する必要があります。
今回のご相談内容については、このルールを採用している金融機関で契約したという前提で話をすすめます。金利がじわじわ上昇すれば返済期間の後ろに利息負担が膨らむ可能性はありますが、当面の家計が破綻するリスクは限定的です。この仕組みを理解したうえで、冷静に判断することが重要です。
「安心を買うこと」が目的なら固定金利を選ぶ価値あり
では、固定金利への乗り換えを検討する必要はないのでしょうか。これは、家計状況によります。
固定金利のメリットは、返済額が将来にわたって変わらない「安心感」を買うことです。固定金利を選択することで、返済計画が立てやすく、将来の金利上昇への不安をなくすことができます。
例えば、次のような場合には、固定金利のメリットが大きくなりやすいと考えられます。
1. 返済期間が長い場合(例:30~35年)
2. 借入残高が大きい場合(例:3000~5000万円以上)
3. 教育費のピークと返済が重なっている場合
4. 金利上昇リスクにメンタル的に耐えられない場合
固定金利は変動より高い分、総支払額が増える可能性はありますが、「精神的な安心感を得られる“保険”」としての価値があります。「変動か固定か」は返済額の大小というより、むしろ「自分の家計と精神的な耐性」で選ぶべきでしょう。
固定金利に変えるべき人と変えないほうがいい人の特徴
具体的にどんな人が、固定金利を検討すべきなのか、これまでの話からまとめていきましょう。そのうえで、自分の場合はどうするか検討しましょう。
・金利上昇局面で安心感を優先したい
・子どもの教育費のピークを控えている
・残りの返済期間が短い(例:10~15年以下)
・借入残高が少ない(例:1500万円以下)
・すでに繰り上げ返済を計画的に行っている
・家計に余裕があり、返済額が多少増えても対応できる
「あとどれくらい返済期間・返済額があるか」が、変動か固定かを決めるポイントであることは明らかです。
まとめ すべての人が「今すぐ固定に変更」ではない
これまで見てきたように、住宅ローンの金利動向は気になるものですが、焦って行動する必要はありません。押さえておくべきポイントは、以下の4つになるでしょう。
1. 変動金利は短期金利に連動するため、すぐに急騰する可能性は低い
2. 変動には返済額が急増しない安全装置(1.25倍ルール)がある
3. 固定の高い金利分は「安心を買う」手段である
4. 返済期間が長い・残高が多い人は固定を検討する価値が高い
固定か変動かは、「今の金利の高低」ではなく、それぞれの家計状況・残期間・借入額・不安耐性を併せて選択するのがよいでしょう。具体的に、どのくらい変わるのかは、各家計で金融機関のシミュレーションサイトをご活用して比較してください。
出典
金融庁 金融研究センター ディスカッションペーパー DP 2025-7(2025年10月)3ページ「マクロ・プルーデンス規制」
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者