娘は手取り18万円、奨学金の返済が厳しいそうです…… 親が代わりに返済しても問題ないでしょうか?
今回のご相談内容は以下のとおりです。
Aさんのお嬢さんは今年大学を卒業して就職し、勤務先が家から遠いため、アパートを借りて一人暮らしをしています。在学中は貸与奨学金を利用していたので、10月から返済が始まりましたが、手取り18万円では生活費だけでもいっぱいいっぱいで、返済が厳しいと言っています。
来年定年を迎えるAさんはご夫婦でセカンドライフのライフプラン相談にいらっしゃり、そのなかで退職金の使い道として奨学金返済の援助をしても問題ないかと質問を受けました。
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
親が奨学金返済を肩代わりしたら「贈与」になる?
就職したばかりで手取りの月収18万円で、一人暮らしをしながら奨学金の返済をしなければならないという事情であれば、親としては「親が大学の学費を全部払ってあげていれば、そんな負担をしなくて済んだのに」と考え、娘を助けてあげたいという気持ちはよく分かります。
親が子の奨学金返済を援助する場合、検討しておきたいポイントがいくつかあります。まず、奨学金返済するのは子ども本人で、親が援助するとそのお金が贈与と判断され、贈与税の対象となる可能性です。
国税庁のホームページ(※)によれば、贈与税のかからない財産として「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」が挙げられています。そのため、親が子どもの生活費や大学の学費を負担しても、それは扶養義務の範囲と考えられ、贈与税の対象にはなりません。
しかし、卒業して就職した後に奨学金を返済するためのお金を子どもに渡すと、そのお金は教育費ではなく借入金返済に充てる資金として考えられるので、贈与と見なされて贈与税がかかることがあります。
ただし、贈与であっても必ず贈与税がかかるわけではありません。贈与税には基礎控除があり、年間110万円までの贈与には贈与税がかかりません。そのため、援助するとしても年間110万円内に収めておけば、贈与税を心配する必要はなくなります。
親の老後資金は足りるか?
次に考えたいポイントは、Aさんご夫婦の老後資金の問題です。今、子どものためと思って援助をしても、老後に生活費が足りなくなって子どもに援助を頼むようになるのは考えものです。
Aさんは来年60歳になって退職金を受け取りますが、貯蓄は多くありませんし、住宅ローンの返済も70歳まで続きます。60歳以降も継続雇用で働く予定ですが、収入が減るなどの不安要素もあるので、無理のない範囲の援助を検討したいということでした。
そこで、Aさんご夫婦の将来のご希望などを伺いながら、キャッシュフロー表を作成して検討しました。
もう一人、大学生のお子さんがいらっしゃいますが、下のお子さんが独立して二人暮らしになれば生活費も今より少なくて済みます。堅実に暮らしていけば老後の生活費はなんとか足りそうですが、万一に備えて、退職金はできるだけ老後資金として残しておきたいのです。
もう一つ考えておかなければならないのは、下のお子さんとの公平性です。Aさんのお子さんたちは、どちらも大学の学費の半分くらいを貸与奨学金で賄っています。上のお嬢さんの返済を援助するのであれば、下のお子さんにも卒業後に援助をする必要があるでしょう。そのための余力も残しておかなければなりません。
まとめ(Aさんへのアドバイス)
Aさんご夫婦と話し合った結果、奨学金の返済を5年間援助することにしました。毎月約1万5000円の返済なので、年に20万円をお嬢さんの奨学金返済口座へ、5年間振り込むことにします。お嬢さんにその話をしたところ、5年間だけでも助かると喜んでいたそうです。
もちろん、退職金で奨学金返済を全額肩代わりできますが、Aさんご夫婦はいずれお子さんたちが結婚するときのお祝い金も確保しておきたいと考えています。そのためにも、奨学金返済の援助は控えめにしておくことにしました。
今回の相談をきっかけに、Aさんはできるだけ長く働き、奥さまは生活費を見直して老後に備える気持ちになられたようです。5年後に予想より多い貯蓄があれば、また奨学金返済の援助を検討するのもよいでしょう。
出典
(※)国税庁 贈与税がかからない場合
執筆者 : 蟹山淳子
CFP(R)認定者