更新日: 2021.02.12 住宅ローン

副業がマイホーム購入を邪魔するかもしれない! 今年4月に実施された【フラット35】の制度変更とは?

副業がマイホーム購入を邪魔するかもしれない! 今年4月に実施された【フラット35】の制度変更とは?
毎年4月1日は、制度や仕組みが変更される一番大きなタイミングで、今年もさまざまな変更が実施されています。その中には、副業がマイホームの購入を邪魔するかもしれなくなる変更もありました。一体、どんなものなのでしょうか。
 
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

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【フラット35】でこんな制度変更がありました

【フラット35】は、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供する全期間固定金利(最長35年)の住宅ローンです。当初の借入時に返済終了までの借入金利と返済額が確定するので長期のライフプランを立てやすく、利用される方も多いと思います。
 
このローンで、今年4月1日から変更された制度の1つが「総返済負担率の算定に含める借入金の対象を一部見直します」という点です(※)。どんな内容なのか、見てみましょう。
 
【フラット35】は、年収に占める年間合計返済額の割合(総返済負担率)の基準を[年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下]と定めています。
 
返済額は【フラット35】のほかに、住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローン(クレジットカードによるキャッシング、商品の分割払いやリボ払いによる購入を含む)などの借入金も含めて計算されます。
 
これまでは、【フラット35】以外の借入金に「賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金」は含まれませんでしたが、今年4月1日以後の借入申込み受付分から「賃貸用のアパート向けのローン(ローンの対象が1棟の共同住宅)である場合」以外は、借入金に含めることになりました。

どんな影響があるの

つまり、マンションの1室や戸建住宅を賃貸運用するためにローンを借入れしている人が【フラット35】を利用してマイホームを購入しようとすると、次の事例のような制約が生じる可能性があるのです。
 
<事例>
・年収500万円(収入合算なし)⇒ 年間返済額基準は、年収の35%=175万円
 
・マンション1室を賃貸運用するためにローンを借入中⇒ 返済額は、月額7万円・年額84万円
 
・新たにマイホームを購入するため【フラット35】で[元本3000万円、借入期間35年(毎月返済のみ)、金利1.30%]の利用を検討中
⇒ 返済概算額は、月額8万9000円・年額106万7000円
 
◇この事例で年間返済額基準は、これまでならば[106万7000円 ≦ 175万円]と問題なくクリアできていた。
 
◇しかし制度変更後は、賃貸運用マンションローンの返済額(年額84万円)が加算されるため[190万7000円 > 175万円]となり、基準を超えてしまう。
 
◇年間返済合計額を基準内に収めるには【フラット35】の年間返済額は91万円(175万円-84万円)までとなり、この返済額で借入れできる元本額は2557万円に減額することになる。
 
【フラット35】でマイホーム購入資金を借入れようとした場合、上記の事例では賃貸運用マンションのローンがあるために、借入可能金額が443万円も減ってしまうことになるのです。長期固定で安定的なメリットもその分だけ失ってしまいます。

「副業」として取り組みやすいといわれるワンルームマンション投資ですが

「働き方改革」の進展で、副業は会社制度上などの制約も緩和され、人びとも前向きに取り組もうという意識になっています。また「年金2000万円問題」などに代表されるように、現行の年金制度に対する将来不安感にも根強いものが見られます。
 
そんな状況もあってか、副業として不動産投資を手掛ける方も少なくない状況です。特にワンルームマンション1室などは、不動産投資の中では金額も比較的少額であることから、取り組みやすいジャンルといわれています。
 
しかし、不動産投資には、空室、賃料下落、維持管理コスト上昇、設備の老朽化や改修負担などのリスクが付きものです。もしも投資資金を(一部でも)借入金でまかなっていれば、金利上昇や返済自体もリスクになりえます。そして、これらのリスクは全部「自己責任」です。

まとめ

副業として気軽に始めたつもりの不動産投資が、本来のライフプランのメインの1つともいえるマイホーム購入を邪魔しかねない状況は、“本末転倒”の現象といえるでしょう。
 
今回の【フラット35】の制度変更などを見ると、不動産投資の「自己責任」のリスクが投資した物件以外にまで及ぶ場合があることを再認識させられます。
 
[出典](※)住宅金融支援機構「【フラット35】2020年4月の主な制度変更事項のお知らせ」~「1.総返済負担率の算定に含める借入金の対象を一部見直します」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士


 

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