介護保険料。財源に不安があり今後も上がりそう
配信日: 2017.12.19 更新日: 2020.04.07
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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介護保険料は40歳から納付
介護保険制度は、50%は国民が支払う保険料、50%は国の税で賄われています。これを合わせて財源とし、介護が必要な人に対してサービスを提供します。介護希望者のレベルを判断する介護認定(要支援2~1、要介護1~5)がされ、そのレベルにより受けられる介護サービスの内容が異なります。認定の基準は「要介護5」の人が最も重いという判定になります。
介護保険料を納めるのは40歳以上の人全員です。40歳から64歳までの人は、加入する健康保険料に上乗せする形で徴収されます。会社員の場合は、会社が半額拠出し、健康保険料と一緒に天引きされます。国民健康保険の加入者は、健康保険料と一緒に納付します。所得によって料率が決められており、所得が高い人ほど、納付額も多くなります。
高齢者も全員保険料は負担する
65歳以上の人は、支払い方法が変わります。介護認定を受けた後も、介護保険料は負担し続けます。この年代の人も、所得が多い人ほど、保険料の負担も大きくなる仕組みです。徴収方法は、公的年金の受給時に、年金から天引きされます(特別徴収)。国ではなく市区町村が徴収の主体になるため、住んでいる地域により徴収額に差があります。多くの市区町村では、所得額に応じていくつかの段階に区分されており、15段階にも細分化されている地域もあります。
2000年に制度が発足してから、これまでに65歳以上の人の保険料は5回引き上げられてきました。標準的な所得の人の場合、当初は年額3万5千円ほどでしたが、現在では年額6万6千円ほどで、約2倍近くに引き上げられました。現在の徴収額は、生活保護の対象となる人など最低額が2万円ほど、高額所得者など最高額が40万円ほどです。
今後の財源と人材確保に不安が
介護を必要とする人は、今後とも増え続けると予想されます。軽度の人を含め介護を必要とする人は、現在600万人を超え、制度発足時の3倍近くになるともいわれます。これまでも、軽度の人はなるべく現在の介護対象から外す、介護施設入居者の負担を増額する、サービス事業者に支払う報酬を引き下げる、といった経費減額の努力も進められてきました。しかし介護対象者の急増により、全体にかかる費用も、当初は4兆円にも満たない額でしたが、現在では10兆円を超える規模に増加しています。
制度が発足した当時は、介護人材の不足はあまり想定していませんでした。しかし現在では、人口減少社会が現実となり、介護を担う人材が不足しています。給与水準を上げ、担い手をどう確保していくかが、きわめて重要です。とくに施設介護と比べ、在宅介護を担う人材の確保は容易ではなく、今後のサービスに支障をきたすことも考えられます。これまでの介護政策が、どちらかといえば「場当たり的」であったことは否めません。
財源に不安があり人材も確保できなくなると、当然、介護保険料にも影響してきます。これまで実施してきた保険料値上げは、今後も起こるでしょう。人材を確保する努力が、これまで以上に必要になります。介護事業者が過度なサービスを実施することをチェックする態勢の整備や、場合によっては、若年層の批判は覚悟の上で、保険料負担の年齢を、現在の40歳からを引き下げることも必要になるかもしれません。