更新日: 2021.09.20 セカンドライフ
老後の日常生活費(夫婦2人)は最低でもいくら必要なのか
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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老後の日常生活費(夫婦2人)は最低でも月22万円
総務省の「家計調査」から導き出された平均値によりますと、2017年の高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の実収入は20万9198円(内、公的年金等の社会保障給付19万1880円)ですが、税金や社会保険料などを差し引いた可処分所得は、18万958円となっています。
一方、消費支出の平均は23万5477円ですので、可処分所得との差である約5万5000円が毎月不足することになります。
机上の計算になりますが、月々の生活に5万5000円足りないとなると、その分は貯蓄などを取り崩すか、何らかの形で収入を増やさないと賄えません。
その額は、年間で約66万円ですので、20年間では1300万円強、30年間では約2000万円が必要となります。ただし、実際には通常の消費支出以外の出費が生じますので、この数値は最低限と考えてよいでしょう。
また、生命保険文化センターが3年ごとに実施している「生活保障に関する調査」(直近では2016年9月実施)によりますと、夫婦2人で老後生活を送るうえでの最低日常生活費は、平均月額で約22万円となっています。
さらに、ゆとりある老後生活に必要な金額(希望額)は、平均月額で約34万9000円ですので、年間では420万円程度必要となります。
一般に、夫婦がともに長い間、厚生年金などに加入していなければ、公的年金は2人合わせても420万円には届きません。そのため、年金だけではゆとりある老後生活は望めないでしょう。
1961年4月2日以後に生まれた男性(女性は1966年4月2日以後)が公的年金を受給できるのは、基本的に65歳からとなりますので、早めに悠々自適な生活に入れるほどの余裕がなければ、65歳までは働いてできるだけ老後資金を蓄える必要が生じてきます。
60歳過ぎて収入が減っても高年齢雇用継続基本給付金で補てん
2013年4月1日に、「高年齢者雇用安定法」の改正法が施行されました。この改正法では、定年年齢を65歳未満に定めている事業主に対して、従業員が雇用の継続を希望した場合には65歳まで雇用することを義務付けています。
その方法として、「定年の引き上げ」「継続雇用」「定年の廃止」の3つがあります。多くの企業が導入しているのは「継続雇用」です。
継続雇用で働く場合は、ほとんどの企業で給与が減ってしまいます。しかし、60歳を過ぎて新たに仕事を探したり、独立して事業を始めたりするよりも、65歳までは慣れた環境で働くほうが楽だと考える人が多いようです。
もっとも、継続雇用などで60歳時点の賃金(上限あり)に比べて75%未満に低下した場合は、雇用保険の被保険者期間が5年以上あれば、原則として雇用保険から「高年齢雇用継続基本給付金」が65歳になるまで支給されます。
支給額は、賃金の低下率に応じて計算され、支給対象月に支払われた賃金が60歳時点の賃金の61%以下に低下すると、支給対象月の賃金(上限あり)の15%が支給されます。
例えば、60歳到達時の賃金月額が40万円で、その後の支給対象月に支払われた賃金が24万円に低下した場合は、24万円×15%=3万6000円が支給されます。
それでも、60歳を境に収入が減る人がほとんどなので、年金だけでは不足しがちな老後資金は60歳までに貯めておくことが大切です。
ただ、近年は晩婚化の影響もあり、現役時代は子どもの教育資金や住宅購入資金などが優先され、老後資金まで手が回らない人が多いのが現実です。一番下の子が大学を卒業する頃には、一家の大黒柱は60歳を過ぎるという家庭も増えています。
人生100年時代。生涯現役を目指すなら、60歳は新卒で働き出してからの折り返し地点と言えなくもありません。しかし、還暦を過ぎると、いわゆる「健康寿命」が気になる人も多くなります。
内閣府の「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」では、「老後の生活設計について考えたことがある」と回答した人の割合が全体で67.8%、30歳代でも58.2%と6割近くに達しています。
健康とお金のバランスを考えた働き方、老後の生活をどうするか、若い世代にとってもその準備が必要になってきます。
次回は、老後の生活設計と公的年金制度について、この世論調査ではどのように回答しているのか、さらに、公的年金だけでは不足しがちな老後資金をどのように準備すればよいのかを考察します。
出典
総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)家計の概要」世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)
生命保険文化センター「平成28年 度生活保障に関する調査」
内閣府「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部