最終更新日: 2020.04.03 公開日: 2019.04.07
老後

「成年後見人」 親族が就任しやすくなる仕組みに変更へ

執筆者 : 黒木達也

高齢となり認知症などの症状が出て判断力が落ちてくると、必要になるのが「成年後見人」です。
 
この仕組みを活用することで、例えば、預金の引き出しが可能になる、不利益になる契約を取り消すことができる、といったメリットがあります。しかし、これまでこの制度は第三者が後見人となるケースが多く、かなり制約もあるため、親族にとっては利用しやすい制度ではありませんでした。
 
 
黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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黒木達也

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執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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認知症の増加で注目される制度に

人生100年時代といわれ、認知症は誰もが発症する可能性のある病気になっています。買い物ができない、預貯金の引き出しができない、知らないうちに不利益な契約をさせられた、といった日常生活に支障を来たす高齢者が増えていることは事実です。
 
とくに身寄りがいない、1人暮らしで子どもなどが遠方に居住、といった人には、成年後見人が必要になるかと思います。また、相続人となることが予想される人同士の仲が悪いときなどにも、この制度が利用されてきました。
 
本人の認知機能が衰え日常生活に不安がある場合、(1)生活費などを金融機関から引き出す、(2)本人が交わした不利益になる契約を取り消せる、(3)施設への入居契約の締結ができる、④遺産をどう分けるかの協議ができる、といったメリットがあります。
 
とくに子どもがいても往来の機会が少なく、気が付いたときには認知症が進行しており、他人に多大な迷惑をかけてしまったことが多いと、成年後見人は必要と考え、選任を依頼するケースが多いようです。
 
確かに、契約行為ができないことや、買い物・炊事など日常生活に支障があるときは、この制度を利用するメリットがあり、成年後見人を付けることが有力な選択肢となります。施設への入居準備が必要な身寄りのない人には、とくに必要な制度です。
 
ただ、誰しもがすぐに利用すればいい、というわけではありません。子どもなど親族が何人かいる場合は、親族が成年後見人になることを含め検討し、慌てて専門家に依頼しないことです。
 

第三者が後見人だと困ることもある

成年後見人の理念は、判断力の乏しい本人の利益を保護することを最重視します。そのため、司法書士や弁護士など専門家を後見人に選ぶと、介護施設の利用料など本人に必要な生活費の管理は、後見人がすることになります。
 
しかし、家族の会食費などを引き出したいと考えても、後見人は認知機能の低下を理由に簡単には同意しません。かりに本人が「私の口座から出して」と申し出ても、正常な判断ができないとして却下されます。もし家族が何人かいる場合、預貯金の引き出しができないことが大きなマイナスとなります。
 
また、元気なときに生前贈与をする約束ができていても、預貯金を引き出し財産の移転をすることはできなくなります。そのため、遺産分割などの協議もできず、相続税対策を見直す必要が出てきます。実際に子どもなどが何人かおり、金融機関からの預貯金の引き出しが自由にできない事態に陥ると、第三者を成年後見人に選任したことを、後悔するかもしれません。
 

親族の後見人は少なかったが

本人に代わって預貯金の引き出しや契約の締結を考えると、子どもなどの親族が後見人になると便利なこともあります。しかしこれまでは、成年後見人は家庭裁判所で選任され、親族がなろうとすると、利害関係者と見なされ、簡単には選任されませんでした。選任されたとしても、別途監督人が選任され活動が制限されてきました。
 
多くの場合、司法書士など第三者の専門家が選任されてきました。しかし、最高裁判所は2019年3月に「親族がなるのが望ましい」との判断を示す通達を出し、方針を転換しました。これまで使い勝手が悪いために利用者が増えず、制度が定着していないことへの反省もあるといえます。
 
また、成年後見人は一度就任すると、家族との折り合いが悪くても解任できませんでしたが、これも変更される予定です。その意味では、今後少しは使い勝手の良い制度になります。
 
もし親族がいる場合は、成年後見人を選任する前に、関係者全員が立ち合い、本人から預貯金の印鑑を預かる、暗証番号を聞く、証券関係の取引先を聞くなどし、親族が後見人となる際のルールを話し合い、後でトラブルにならないよう工夫することが必要です。誰でもいいから「成年後見人」を選ぶ、という姿勢では禍根を残すだけです。
 

成年後見人への報酬と不正の監視

成年後見人を専門家に依頼すると、その仕事の対する報酬も必要になります。通常では最低でも月額2万円、年額で24万円程度が目安とされています。管理を委託する資産総額が多い場合は、報酬も増額されます。
 
最近ではNPO法人などが、月額1万円以下という標準金額よりも安く、場合によっては無料で引き受けるところもあるようです。かりに報酬が年額24万円だとしても、これが10年だと240万円かかる計算です。
 
長期間続くことになると、かなりの負担になります。先の見通しは立てにくいことですが、将来にわたって経費が発生することは認識しておきましょう。ただし親族がなる場合は、こうした負担はなくなります。
 
また、稀な例だと思いますが、成年後見人による不正も問題になりました。具体的には、本人が入居している施設に支払うべき管理費用の一部を着服した、といった事案で警察に逮捕されるケースも見られます。こうしたことが親族を後見人にする方向を強めたといえます。
 
ただし、身寄りのない単身者の場合、すべて親族以外の成年後見人に任されているのですから、職責を果たさない後見人は極めて問題です。今後は、親族がいる場合は、まずその中から決めることを検討しましょう。もし適任者がいないときには、専門家に依頼することになると思いますが、必要に応じて報告を受け、チェックすることが望まれます。
 
執筆者:黒木達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト
 



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