【老後2000万必要】話題となった報告書から考えるあなたの老後資金
配信日: 2019.06.21
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
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2000万円が話題になった報告書とは
事の始まりとなった資料(金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」)の概要を見てみます。
高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる。
<収入>年金など約20.9万円
<支出>食費:約6.4万円 住居:約1.4万円 光熱・水道費:約1.9万円
家具・家事用品:約0.9万円 被服費:約0.6万円 保健医療費:約1.6万円
交通・通信費:約2.8万円 教育娯楽:約2.5万円
その他の消費支出:約5.4万円 非消費支出:約2.8万円
合計支出:約26.4万円
収入-支出=約5.5万円不足
この資料に基づき、5.5万円×12か月=66万円 1年で約66万円が不足なので、夫95歳、妻90歳までの30年を考えると約2000万円が不足という話になったのです。
2000万円と聞くと、「準備出来るだろうか?」と心配になる気持ちは分かります。そもそも住宅資金・教育資金・老後資金は人生の3大支出項目です。いずれも、かなりの金額となります。
住宅資金は、ほとんどの場合ローンを組み、30年35年という長期間で返済します。教育資金は、子どもが誕生したからといってスグに大学までの費用を用意するわけではありません。子ども用の積立貯金や学資保険でコツコツ準備します。
では老後資金はどうでしょう。こちらも同様で、今すぐ2000万円が必要ではありません。3つのなかでも老後資金の準備は後回しになりやすい項目です。「時間を味方につけて、コツコツ長期に積立て準備が必要ですよ」というのが、報告書の本来の目的だったのではないでしょうか。
報告書には、他にも気になるデータがいくつか掲載されています。例えば、世代別の老後への備えの調査です。
今回2000万円という数字が表面化していますが、調査によると「これだけあったら老後は安心」と自ら想定している金額が、年代別に示されています。想定金額は50代で約3400万円です。
安心できる金額を用意することが、いかに難しいかを示しているデータと言えるかもしれません(図表)。
自分の場合に置き換えて考えるきっかけに
この報告書が問題視され盛り上がる中、「金額は平均値なので必ずしも2000万円が必要ではない」という見解もあります。お金の使い方は人それぞれ、百人十色です。
報告書では5.5万円が赤字になっていますが、これを自分の場合に置き換えて、自分の老後を可視化することが大事です。
年金定期便で収入の確認をすることや、毎月の支出状況を把握することで、毎月の概算を見積もることが出来ます。リタイア後の支出額は現役時代の7割程度が目安になりますが、毎月の支出以外に住宅のリフォームや車の買い替えなどの費用も見積もることが必要です。
これらを積み上げて必要額が可視化出来たら、2000万円に代えて「自分の老後に必要な数字」が導かれることになります。
老後までに時間のある世代は、iDeCoやNISAを上手に使って資産形成をすることが出来ます。長く働いて収入を増やすこと、節約して支出を減らすことなどを織り交ぜて考えると、老後資金を準備することに対する不安は軽減すると思います。
この機会に話題の報告書を読んでみてはいかがでしょう。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士