認知症になったら財産の管理はどうする?自分の代わりに財産管理をしてもらうための制度とは

配信日: 2020.02.16

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認知症になったら財産の管理はどうする?自分の代わりに財産管理をしてもらうための制度とは
わが国の認知症高齢者は、2012年時点で462万人に達しており、団塊の世代が75歳になる2025年には700万人を超えると予想されています。実に、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症高齢者ということになります。このように、認知症は誰もがなりうるものであり、多くの人にとって身近なものとなっています。
 
認知症になると、貯金の出し入れなど自分の財産の管理ができなくなります。また、医療・介護のサービスを受ける場合に契約が締結できず、必要な支援を受けられなくなります。そこで、認知症になったときに備え、自分に代わって財産管理や必要な契約締結等をしてもらうための制度について知っておくことが大切です。
 
今回は、成年後見制度と任意後見制度についてポイントを解説します。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

成年後見制度とはどのような制度?

認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方の財産管理や日常取引の代理等を後見人が支援する制度が成年後見制度です。成年後見制度には、判断能力が不十分になる前に利用できる「任意後見制度」と判断能力が不十分になってから利用できる「法定後見制度」の2種類があります。
 
さらに、法定後見制度には本人の判断能力に応じて「後見」(判断能力がまったくない)「保佐」(判断能力が著しく不十分)「補助」(判断能力が不十分)の3つの種類があります。
 
以下、成年後見制度と任意後見制度について違いを見ていきたいと思います。
 

成年後見制度を利用する

成年後見制度を利用するには、本人の判断能力が不十分になったときに、 本人、配偶者、四親等内の親族などが本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
 
申し立てに必要な主な書類や費用は、「申立書」「診断書」「申立手数料(1件につき800円分の収入印紙)」「登記手数料(2600円分の収入印紙)」「郵便切手」「本人の戸籍謄本」などです。その後、審問・調査・鑑定などを経て、後見等の開始の審判がなされ、最も適任と思われる方が成年後見人等に選任されます。
 
成年後見人等に家族を希望していても、必ずしも家族が選任されるわけではありません。実際、成年後見人の約7割は弁護士や司法書士など家族以外の専門職です。専門職が成年後見に選任された場合、家庭裁判所の判断により、本人の財産から報酬が支払われます。
 
ちなみに、東京家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめやす」によると、成年後見人が,通常の後見事務を行った場合の報酬(「基本報酬」)のめやすは、月額2万円とされています。管理財産額が1000万円~5000万円までは月額3万円~4万円、5000万円を超えると月額5万円~6万円です。
 
裁判所の判断で成年後見監督人がつけられた場合、通常の後見監督事務を行った場合の報酬(基本報酬)のめやすは、管理財産額が5000万円以下の場合には月額1万円~2万円、管理財産額が5000万円を超える場合には月額2万5000円~3万円です。
 
しかし、業務の内容に関係なく定額の報酬を与えたり、財産の額によって決めたりする方法には不満が多く、各業務の難易度に応じて「標準額」を定め、実施した業務に応じて標準額を加算・減算する仕組みに変更される予定です。
 
成年後見人の仕事は、本人の財産を適切に管理維持することです。投機的に運用することや相続税対策でアパート経営することなどは認められていません。また、居住用不動産を売却するには家庭裁判所の許可が必要です。
 
成年後見人の仕事は、本人の財産管理や契約などの法律行為に限られます。したがって、食事の世話や実際の介護等は成年後見人の仕事ではありません。仕事の状況は家庭裁判所に報告し必要な指示を受けます。
 
成年後見人は、本人が判断能力を回復したり、亡くなったりするまで、あるいは正当な理由(家庭裁判所の許可が必要)がない限りは辞めることはできません。
 

任意後見制度を利用する

任意後見制度を利用するには、本人に十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自ら選んだ信頼できる代理人(任意後見人)との間で、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える委任契約を締結することが必要です。この任意後見契約は公証人の作成する公正証書にしなければなりません。
 
成年後見制度の場合は、誰が後見人になるかは家庭裁判所が決めますが、任意後見制度では任意後見人を自ら選ぶことができます。家族を確実に後見人にしたいのなら任意後見制度を利用する以外ありません。
 
任意後見契約を結ぶには次のような費用がかかります。
・公正証書作成の基本手数料(1万1000円)
・登記食卓手数料(1400円)
・法務局に納付する印紙代(2600円)
・その他(本人に交付する正本等の用紙代、登記嘱託書郵送用の切手代など)

などです。
 
任意後見契約が効力を持つのは、判断能力が低下したときに、本人やその配偶者、任意後見受任者、四親等内の親族などの申し立てにより、家庭裁判所で本人の任意後見監督人が選任されたときです。
 
任意後見人の報酬は、本人と任意後見人との話し合いで決めます。任意後見監督人の報酬は家庭裁判所の判断で決まります。任意後見監督人の報酬は成年後見監督人の報酬に準じます。
 
任意後見人の仕事は、本人の「財産管理」や「介護や生活面の手配」です。任意契約の内容は自由に決めることができます。ちなみに、後見人には財産管理権についての全般的な代理権、取消権(日常生活に関することを除く)がありますが、任意後見人には取消権はありません。悪質な業者に狙われるのが心配な場合は成年後見人をつけると安心です。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー


 

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