更新日: 2020.11.11 定年・退職

退職金は「一括」か「分割」か。あなたにあった受け取り方とは?

執筆者 : 柘植輝

退職金は「一括」か「分割」か。あなたにあった受け取り方とは?
退職金は仕事を辞めたときに一括して受け取るもの。そう思い込んではいませんか?
 
退職金の受け取り方には「一括」と「分割」があり、どちらの方法で受け取るかによって発生する税金に差が出ます。今回は、退職金の受け取り方による税金の違いを解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

退職金の受け取り方は大きく分けて3パターン

退職金の受け取り方は次の3つの方法に分類されます。
 

退職金の受け取り方
  • (1)全額を一括して受け取る
  • (2)全額を分割して受け取る
  • (3)一部を一括して受け取り、残りを分割で受け取る

 
ただ、会社によっては一括でしか受け取ることができない場合もあります。退職金の受け取り方が問題となるのは、主に分割して受け取れる確定給付企業年金制度や企業型確定拠出年金制度を利用している場合になります。本記事でもその点を前提に解説していきます。
 

一般的には一括して受け取るほうが有利

一般的に退職金は、一括で受け取る方が有利になります。その理由は退職所得の計算方法にあります。一括して受け取ると退職所得控除の適用を受けられるため、所得税や住民税が軽くなるのです。
 
その上、健康保険や厚生年金など社会保険料の算定の基礎となる賃金からも除かれるため、実質的な手取り額が多くなるよう優遇されています。これを利用して退職金を一括して受け取り、ローンの返済などへ充てることで、より将来を安定させることができます。
 
一方で、一度にまとまったお金が手に入ってしまうことで投資や事業に手を出して失敗してしまったり、浪費によって財産を失ってしまったりする可能性もあります。
 
参考までに、退職所得と退職所得控除額の計算式を記載しておきます。
 
●退職所得の金額の計算
(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得
 
●退職所得控除の計算

勤続年数(A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円+70万円×(A-20年)

※国税庁 「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」より筆者作成
 

堅実な計画を重視する方は分割がおすすめ

退職金を分割で受け取る場合、その収入は年金と合算され、公的年金などに係る雑所得として税金が計算されます。そのため、一括で受け取ったときのような優遇処置を受けることはできません。
 
しかし、分割して受け取ることで退職後も一定の期間、安定して収入を得ることができるというのが分割の強みです。
 
一括で受け取ってしまうと浪費が心配である、退職金は生活資金に充てて堅実に生活していきたいという場合は、退職金を分割で受け取るという選択がよいでしょう。場合によっては、住宅ローンの繰り上げ返済など利用目的が明確になっている部分だけ一括して受け取り、残額は分割で受け取るという方法も悪くはありません。
 
なお、運用利率が3%を超えるなど、条件次第では分割にした方が有利になることもあります。
 

退職金は役割に応じて受け取り方を変えるべき

退職金は一括して受け取ることで退職所得控除が適用され、手取り金額を多く残すことができます。対して、分割形式で受け取ることで使い過ぎを防ぎ、計画的な利用が可能になります。
 
退職金は老後の生活を支えるための重要な資金になります。退職金の受け取り方法は目先の損得で考えるのではなく、現在の資産状況を基に退職後の生活様式を踏まえ、十分に検討して決定するようにしてください。
 
出典
国税庁 高齢者と税(年金と税)
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
 
執筆者:柘植輝
行政書士


 

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