65歳以上の介護保険料、月額6000円以上も 今後はさらに上がる? 保険料はどうやって決まるのか
配信日: 2018.04.14 更新日: 2019.09.02
2025年には、団塊の世代が後期高齢者になります。65歳以上の保険料は今後も上がることが確実といえます。2人以上の世帯のうち高齢無職世帯の家計収支(2016年)は、毎月約6万円の赤字です。
介護保険料が上がれば、さらに家計を圧迫します。
介護保険料は、どのように決まるのか、どのように徴収されるか、保険料軽減の仕組みなどについて知っておきましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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目次
2人以上の世帯のうち高齢無職世帯の家計のリアル
総務省の2016年家計調査(家計収支編)によると、2人以上の世帯のうち高齢無職世帯の家計収支(月額)は、可処分所得175,312円、消費支出239,604円、収支は60,517円の赤字になっています。
年齢階級別に見ると、60~64歳の世帯は、可処分所得140,435円、消費支出252,174円、収支は111,739円の赤字。
65~69歳の世帯では、可処分所得180,603円、消費支出262,042円、収支は81,439円。
70~74歳の世帯では、可処分所得182,066円、消費支出242,208円。
75歳以上の世帯では、可処分所得183,991円、消費支出224,092円、収支は40,100円となっています。
いずれの年齢階級でも家計収支は赤字であり、公的年金だけでは生活できず、貯蓄を取り崩して生活しているのが、高齢無職世帯の平均的な姿といえます。
年金が減るなかで介護保険料が増え続ければ、要介護認定を受けても介護サービスの利用を控えざるを得ないかもしれません。現役時代に、民間介護保険などで介護費用の財源を準備しておきましょう。
第65歳以上の人の介護保険料はどうやって決まるのか
市区町村の介護保険給付費の約21%に相当する額を、市区町村の65歳以上の人数で割って、保険料の基準額を求めます。介護保険料は3年ごとに見直され、65歳以上の人の介護保険料の全国平均額(月額)は次のとおり、毎期、上がっています。
第1期(2000~2002) 2,911円
第2期(2003~2005) 3,293円(+13%)
第3期(2006~2008) 4,090円(+24%)
第4期(2009~2011) 4,160円(+1.7%)
第5期(2012~2014) 4,972円(+20%)
第6期(2015~2017) 5,514円(+11%)
なお、厚生労働省は4月以降に全国の自治体の改定後の保険料を集計し、平均額を発表する予定です。
団塊の世代が75歳以上になる2025年には、8,165円になる見込みです。介護保険料は月5,000円が負担の限界といわれていますので、深刻な問題です。
第65歳以上の人の介護保険料は住むところで大きく違う
65歳以上の人の介護保険料は、住む場所で大きく異なります。第6期(2015~2017年)の最高額は、奈良県天川村の8,686円、最低額は鹿児島県三島村の2,800円となっています。その差は最大3.1倍になっています。
こんなに保険料が違うのなら、老後は保険料の安い地域に移住しようと思うかもしれません。
しかし、介護サービスを提供する事業者や施設が少ないと、介護サービスを受けたくても受けることができず、その結果、保険料が低いということもあります。したがって、保険料が低い地域が必ずしも得とは一概に言えません。介護移住を考えている人は、介護サービスの充実度なども確認しましょう。
第65歳以上の人の介護保険料の納付方法
公的年金が年額18万円以上の人は年金から天引きされます(特別徴収)。特別徴収は、4月、6月、8月、10月、12月、2月の年6回です。
それ以外の人は、市区町村から送られてくる納付書や口座振替により、個別に支払います(普通徴収)。※特別徴収の対象となる年金は、老齢基礎年金、老齢厚生年金などの老齢(退職)年金、遺族年金、障害年金。
第65歳以上の人の介護保険料の軽減の仕組み
個々の被保険者の保険料は、所得水準に応じて原則9段階に区分された保険料率に基準額をかけて算定されます。この所得段階を細分化したり、保険料率を変更するなど、独自に設定している市区町村もあります。
例えば、東京都品川区では所得区分を14段階に細分化しています。
所得区分が9段階の場合、基準額が5,514円とすると、所得が最も低い第1段階では2,481円、最も高い9段階では9,374円となります。
このように65歳以上の人の介護保険料は、所得に応じた保険料設定となっています。生命保険料などの所得控除を忘れずに確定申告して所得を抑え、保険料を軽減しましょう。
介護保険料の減免
災害などの特別な事情で保険料の納付が困難な場合には、保険料の徴収猶予や減免を受けられる場合があります。詳しくは、市区町村の介護保険課まで相談してください。
災害などの特別な事情がないにもかかわらず、保険料の未納が続く場合は、保険給付が制限されますので注意してください。保険料は納期内に納めましょう。
参考文献:『[これで安心]入院・介護のお金―知らないと損する48のこと』(技術評論社)
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。