更新日: 2024.04.28 介護
親の介護をすることになりました。自分の生活費から介護費用を出すことは難しいので親の預金を使いたいのですが、親の口座からお金を引き出せますか?
しかし、親の医療費や介護費用が必要になった際、その支払いをどのようにするのかという問題が出てきます。そのような時に役立つのが「代理人カード(家族カード)」です。
今回は代理人カード、そのメリットとデメリット、注意点について見ていきます。
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
代理人カードとは、どのような場合に作成するの?
代理人カードとは、家族カードとも呼ばれ、金融機関が口座名義人の親族に対して発行するキャッシュカードです。金融機関は一般的に家族であっても本人以外が本人のキャッシュカードを使ってその口座への入出金を認めていません。
よって、どうしても口座名義人のお金が必要な場合の対応策として代理人カードを金融機関に発行してもらうものです。作成するケースには主に、
・高齢の親の入院費を親のお金で支払う場合
・単身赴任の配偶者の口座に入金される給与をその家族が生活費をおろす場合
・親元を離れてひとり暮らしをしている子ども(学生)に生活費を仕送りする場合
などがあります。
発行条件・発行方法は
発行条件・発行方法は、各金融機関によって異なりますので、実際に作成する際にその金融機関に問い合わせます。
ただし、ネット銀行では扱っていない場合が多いようですので、作成する場合は実店舗がある金融機関に問い合わせるほうがよいかもしれません。代理人カードを発行するための一般的な条件は、
・口座名義人本人と生計を一にする家族、配偶者
・代理権のある成年後見人
となり、1枚だけ発行できるとしている銀行が多いようです。
発行の方法(申込方法)は、口座名義人本人が、その口座のある支店の窓口に出向いて手続きをします。
その際、代理人の同行が必要かどうかは金融機関によって対応が異なりますが、代理人だけでは手続きできないので注意が必要です。手続きには、通帳、届出印、本人とその代理人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等)、キャッシュカード発行手数料等が必要となります。
上記のように、口座名義人本人と生計を一にすることが条件ですので、本人と代理人それぞれの本人確認書類で確認されます。
作成するメリットとデメリットは
今回は、ご相談内容の「高齢の親の口座に対して代理人カードを作成したケース」を見てみましょう。
メリットは本人名義の口座で入出金できることです。これによって親の預金口座の金銭管理がラクになり、大金が必要になった場合にも慌てないですみます。また、本人が暗証番号を忘れたり、カードを紛失したりしても代理人カードで入出金が可能です。
デメリット・注意点は、金融機関ごとに手続きが必要です。例を挙げると、年金の受給口座とクレジットカードの引落口座が違う口座の場合、最低2つの金融機関の代理人カードを作成する必要があります。
また、引出額の制限がある場合ありますし、口座名義人が亡くなれば家族カードも口座凍結となります。さらに、相続時に本当に親のために使ったお金なのかといった相続人間での不信感から、相続トラブルに発展する場合がありますので、何に使ったかをきちんと記録しておく手間も出てきます。
注意点は
注意点は、上記のように本人が金融機関に出向く必要があります。よって、入院等で外出ができない場合は作成することができなくなるので、元気なうちに対策をとる必要があります。
これは金融機関によりますが、口座名義人が認知症等で意思能力がなくなった場合、代理人カードも使用できなくなる場合がありますので、あらかめその金融機関に確認しておく必要があります。
また、定期預金の解約もATMではできない場合もありますので、その際には窓口で行います。その場合も、本人が外出できない状況や認知症等になった場合は解約できませんので、まとまったお金が必要になるかもしれません。注意しましょう。
元気なうちに、できることを
代理人カードは、口座名義人が心身ともに元気な状態でないと作成することが困難です。
また、口座が複数ある場合も多くの手続きが必要となります。終活の1つとしての代理人カードの作成は、一定の効果があると思われますので、一度考えてみてはいかがでしょうか。
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表