十分?不十分?配偶者のいない年金受給者の生活費は月額14.9万円。
配信日: 2019.02.13 更新日: 2019.06.28
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
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70歳代前半と80歳代後半では支出月額に2万円の差がある
厚生労働省年金制度基礎調査では、日本年金機構が支給する老齢年金の受給者を対象に年金や生活に関する調査をしており、その中で年金受給者の平均支出月額や支出内訳も調査しています。結果を表にしてみました。
表は未婚・離別・死別で、配偶者のいない年金受給者の平均支出月額とその分布割合を年齢階級別に表しています。支出額は5万円刻み、年齢は5歳刻みにしてあります。
配偶者のいない年金受給者の平均支出月額は14.9万円で、10~15万円(20.7%)、15~20万円(15.9%)、5~10万円(13.1%)の順に多く、ここまでで約半数になります。配偶者のいる世帯に比べると支出額は10.6万円少ないです。
年齢階級別にみると、65歳~69歳の平均支出月額が15.9万円で最も多く、年齢が上がるにつれて支出額は減る傾向にあります。例えば、70歳~74歳の平均支出月額は15.7万円ですが、85歳~89歳では13.7万円で月々2万円減っています。
配偶者のいない人が65歳以降の支出額をイメージすると、1年あたり約180万円(月額14.9万円×12ヵ月)支出しており、85歳までだと3600万円、90歳までだと4500万円、95歳までだと5400万円が一つの目安になりそうです。受け取れる見込みの公的年金等を含めてこの額くらいは備えておきたいものです。
年齢が上がるにつれて医療・介護の費用負担が増している
年金受給者の支出についてもう一つ、支出の内訳も年齢階級別に表にしてみました。各項目の単位は「万円」で、月額の支出合計は一つ目の表の平均額となります。総数であれば14.9万円です。
配偶者のいない年金受給者は平均支出月額14.9万円のうち衣食住に6.2万円(41.5%)使い、医療・介護の自己負担に1.7万円(11.2%)、税・社会保険料に1.3万円(9.0%)使っています。医療・介護の自己負担や税・社会保険料が趣味・娯楽・交通費よりも多いのは悲しいところです。
住居費やローン支払いが少ないのは、住宅を所有していて住宅ローンの返済も既に終えている人が多いと考えられます。65歳以降も住宅ローンの返済が残る人は、毎月の支出額が平均以上になりそうです。
年齢階級別に支出額をみると、年齢が上がるにつれてほとんどの支出は減る傾向にありますが、医療・介護の自己負担は大きく増えています。65歳~69歳では6.8%の支出割合ですが、90歳以上では25.3%へ増え、支出額の実に4分の1にもなります。被服・履物も若干増えています。
配偶者のいない人にとっても、年金受給者の支出額や内訳を確認することで、事前にできる対策もいろいろ見えてきます。特に医療・介護の自己負担が大きく増えていくことから、この支出をいかに抑えるかが重要なポイントになります。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者