高齢の親が生活に困っています。持ち家があると「生活保護」は受けられないのでしょうか?
本記事では、「生活保護を受けられる要件とはどのようなものか?」「生活保護制度のなかで持ち家をどう考えるか?」について解説します。生活保護制度の「考え方」について触れていますので、ぜひ最後までお読みください。
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
生活保護を受けられる要件とはどのようなものか?
生活保護とは、文字通り「生活を保護すること」ですが、その根底にあるのは日本国憲法と生活保護法です。
日本国憲法第25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定に基づき、「国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」法律が生活保護法です。
生活保護法第4条第1項には「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と規定されています。
これは生活保護を受けるための要件であり、「利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用」しなければ生活保護を受けられないともいえます。
厚生労働省のホームページでは、この要件について、具体的には以下のような状態であると記載しています。
・不動産・自動車・預貯金などのうち、直ちに活用できる資産がない
・就労できない、または就労していても、必要な生活費を得られない
・年金・手当などの社会保障給付を活用しても、必要な生活費を得られない
また、以下のようにも記載しています。
・預貯金、生活に利用されていない土地・家屋などがあれば、売却して生活費に充てる
・働くことが可能であれば、その能力に応じて働く
・年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、それらを活用する
生活保護制度のなかで持ち家をどう考えるか?
ここで問題となるのが、「持ち家」をどう考えるかです。持ち家について、厚生労働省のホームページでは「持ち家がある人でも申請できます」「利用しうる資産を活用することは保護の要件ですが、居住用の持ち家については、保有が認められる場合があります」と記載しています。
持ち家があっても生活保護を受けられる可能性について、ポイントは生活保護法にある「生活に困窮する」「その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用する」ということでしょう。
持ち家(資産)を活用するという点で考えると、(1)売却して賃貸住宅に移り住むことと(2)所有し続けることのどちらが「最低限度の生活の維持のために活用すること」につながるのかが、持ち家があっても生活保護を受けられるかどうかの判断の分かれ目だといえそうです。
ただし、厚生労働省のホームページにも「まずはご相談ください」と記載していることから、ご自身で判断せず、お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当でご相談されることをおすすめします。
まとめ
本記事では、「生活保護を受けられる要件とはどのようなものか?」「生活保護制度のなかで持ち家をどう考えるか?」について解説しました。まとめると、以下のようになります。
・生活保護を受けられる要件は、「生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用すること」
・持ち家は「利用し得る資産」であり、「最低限度の生活の維持のために」持ち家をどう活用するか(売却するのか所有し続けるのか)は、状況により異なる(個別に判断する)
持ち家は「資産」ですが、「生活の拠点」でもあります。持ち家があっても生活保護を受けられるかどうかは、持ち家の価値を「資産」とみるか「生活の拠点」とみるかによって判断が分かれると考えられます。
つまり、持ち家が「資産」なら売却することが「活用する」につながり、「生活の拠点」なら所有することが「活用する」につながるということです。
生活環境(状況)は人によって異なるため、一律の基準を設けることはできず、本記事でも単純に結論付けることはできません。ただ、生活保護制度の考え方についてはご理解いただけたのではないでしょうか。本記事が、少しでも参考になれば幸いです。
出典
デジタル庁 e-GOV法令検索 日本国憲法
デジタル庁 e-GOV法令検索 生活保護法
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活保護制度の概要
厚生労働省 生活保護を申請したい方へ
厚生労働省 「生活保護制度」に関するQ&A
厚生労働省 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和7年4月)
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー