「非正規雇用」で迎える老後のリアル! 「年金額」や「生活費」をシミュレーションして分かる課題とは?

配信日: 2025.05.10

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「非正規雇用」で迎える老後のリアル! 「年金額」や「生活費」をシミュレーションして分かる課題とは?
老後の安心が遠のく非正規雇用の現実――あなたの未来は大丈夫?
 
非正規雇用の増加が社会問題として取り上げられるなか、その影響は老後の生活にまで深刻な影を落としています。
 
「老後2000万円問題」が話題になりましたが、非正規雇用者にとってはさらに厳しい現実が待ち受けているのです。安定した収入や十分な年金が保証されない、非正規雇用者の老後はどうなるのでしょうか?
 
本記事では、非正規雇用者の老後の実態を、具体的な年金額や生活費のシミュレーションを通じて明らかにします。数字で見る厳しい現実と、それでも希望を見いだすための具体的対策について探っていきましょう。
廣重啓二郎

執筆者:廣重啓二郎(ひろしげ けいじろう)

佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。

現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。

進む非正規化と忍び寄る老後の不安

「40%」という現実――日本の雇用の姿が変わっている
 
非正規雇用者の割合は年々増加し、総務省統計局の「労働力調査 2024年」によると、役員を除く雇用者の36.8%と約4割を占めるまでになりました。かつての「終身雇用」はもはや多くの日本人にとって遠い夢となっています。
 
最も衝撃的なのは、厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」による雇用形態別の賃金で、正社員・正職員 が月額34万8600円に対し、正社員・正職員以外 23万3100円と、非正規雇用者の平均賃金が正社員の約7割にとどまるという事実です。
 
この賃金格差は、将来の年金受給額に直結する重大問題です。さらに、多くの非正規雇用者は退職金という大きな「老後の備え」を受け取れません。こうした現状が、非正規雇用者の多くに「老後破産」の不安をもたらしているのです。
 

衝撃の年金シミュレーション:あなたが受け取れる金額は?

国民年金だけだと月額6万9308円――これで生活できますか?
 
非正規雇用者の年金受給額は、正社員と比べて大幅に低くなります。厚生年金に加入していない場合、老齢基礎年金(国民年金)のみの受給となり、2025年度の満額(40年間加入)でさえ月額約6万9308 円にしかなりません。
 
一方、厚生年金に加入している場合でも、非正規雇用者の平均年収の低さから、受給額は限られます。例えば、40年間就労し平均年収240万円の場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた受給額は月額約11万1000円と試算されています。この金額で、あなたは老後の生活を想像できますか?
 

老後に必要な生活費vs非正規雇用者の現実

シビアな現実:「月15万8000円」が必要なのに「月6万9308円」しか受け取れない
 
2023年度の総務省統計局の「家計調査」によると、65歳以上の単身無職世帯の生活費は1ヶ月当たり約14万5000円。税金や社会保険料を含めると約15万8000円が必要です。夫婦2人の場合はさらに多く、税金や社会保険料を含めると約28万2000円が必要となります。
 
しかし、国民年金のみの加入者の受給額は満額でも月額6万9308円です。この差額、月に9万円程度をどう埋めるのか――これが、非正規雇用者の直面する切実な問題なのです。
 
「貯金を取り崩す」という選択肢も、低賃金の非正規雇用では十分な蓄えを作ること自体が困難です。
 

老後破産を回避するための5つの現実的対策

諦めるには早すぎる――今からでもできる老後への備え
 
非正規雇用者の老後における最大の課題は、年金受給額の不足と生活費との大きな格差です。しかし、今から行動すれば未来を変えることができます。
 

1. 年金加入期間の確保

国民年金の未納は絶対に避け、可能であれば厚生年金への加入機会を増やしましょう。1ヶ月でも長く加入することが将来の受給額アップにつながります。
 

2. 個人年金やNISAの活用

公的年金だけでは不足する分を、iDeCoやNISAなどの税制優遇制度を利用して補いましょう。月5000円からでも始められます。
 

3.「人生100年時代」の継続的な就労

65歳以降も働き続けることで、収入を確保しながら年金受給額も増やせます。今からスキルを磨いておくことが重要です。
 

4. キャリアチェンジの検討

より高い収入を得られる仕事への転職やスキルアップを目指しましょう。オンライン学習や職業訓練など、低コストで学べる機会は増えています。
 

5. ミニマリストの知恵を借りる

老後の生活費を見直し、本当に必要なものだけを残す生活スタイルを検討することもひとつの方法です。
 

まとめ

社会全体で取り組むべき課題と個人ができること――
 
非正規雇用者の老後問題は、個人の努力だけでは解決が難しい社会的課題です。政府による社会保障制度の見直しや、非正規雇用者への厚生年金適用拡大などの施策が不可欠です。
 
しかし同時に、「自分の老後は自分で守る」という意識を持つことも重要です。年金制度への理解を深め、自身の将来の年金受給額を把握し、今からできる対策をひとつずつ実行していきましょう。
 
老後の不安と向き合うことは勇気が要ります。しかし、現実を知り、今から行動を起こすことで、非正規雇用でも安心できる老後への道が開けるのです。あなたの老後は、今日からの選択で変わります。
 

出典

総務省統計局 労働力調査(基本集計) 2024年(令和6年)平均結果の要約
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況 雇用形態別
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)
 
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

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