長年勤めた会社を65歳で定年退職。定年退職では「失業保険」は受給できるでしょうか?

配信日: 2025.05.29 更新日: 2025.10.21
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長年勤めた会社を65歳で定年退職。定年退職では「失業保険」は受給できるでしょうか?
定年退職後の状況によっては、「失業保険(雇用保険の基本手当)」を受給できるケースがあります。ただし、公的年金との併給に制限がある点には注意が必要です。
 
この記事では、定年退職後に失業保険をもらうための条件や受給額の計算方法、65歳を超えてから退職した場合の対応策などについて、詳しく解説します。
水上克朗

ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー

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失業保険を受け取るための要件とは?

定年退職後でも再就職を目指す意思がある場合、雇用保険の給付対象になる可能性があります。そのためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
 
1. 現在働いておらず、かつ再就職の意思があること
「失業状態」であるだけでなく、就職活動を行う意思が求められます。例えば以下のような場合は、原則として「失業」と見なされません。

●退職後にしばらく休養するつもりでいる
●病気やけがなどにより、すぐに働けない状態にある
●出産・育児・介護などで当面の就業が難しい
●家庭に専念するために離職した

失業状態かどうかの判断はハローワークが行います。退職後は最寄りのハローワークで「求職の申し込み」を行う必要があります。
 
2. 離職前2年間で12ヶ月以上の被保険者期間があること
雇用保険に加入していた期間が、退職日からさかのぼって2年間のうち12ヶ月以上ある必要があります(1ヶ月=賃金支払いのあった月)。
 
3. 退職日が65歳未満であること
65歳になる前に退職していないと、基本手当の対象外になります。民法上、年齢の加算は「誕生日の前日が終了した時点」で行われるため、注意が必要です。
 
例えば4月1日生まれの方は、3月31日に65歳になる扱いになるため、3月30日までに退職している必要があります。
 
なお、会社側の規定によって退職日が65歳の誕生日当日やその月末とされている場合は、個別の調整が必要になることもあります。その際には退職金や雇用形態の扱いが変わる可能性もあるため、事前に会社と相談しましょう。
 

失業保険の受給額の計算方法

失業保険の支給額は、「基本手当日額」と「所定給付日数」を掛け合わせて算出されます。
 

基本手当日額の求め方

以下の計算式を用いて算出されます。
 
基本手当日額 = (退職前6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180) × 給付率(50〜80%)
※60〜64歳は45〜80%

給付率は収入が低いほど高くなります。また、60〜64歳の上限額・下限額(令和6年8月1日現在)は次の通りです。

●下限額:2295円
●上限額:7420円

 

所定給付日数とは?

給付される日数は、退職理由や加入年数、年齢によって異なります。

▼一般的な退職(自己都合・定年など)の場合

●被保険者期間10年未満:90日
●10年以上20年未満:120日
●20年以上:150日

▼倒産・解雇などの特定受給資格者

60〜64歳の場合、90日~240日と幅があります。

 

具体例:64歳で退職した場合のシミュレーション

▼年収360万円・雇用保険加入年数42年・64歳で定年退職したAさんのケース

1.賃金日額:360万円÷2÷180日=1万円
2.基本手当日額:1万円×0.05+4596円=5096円(※給付率計算式による)
3.受給総額:5096円 × 150日 = 約76万4400円

 

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65歳以上で退職した場合の給付制度

65歳を超えて退職した場合、通常の失業保険は受け取れませんが、「高年齢求職者給付金」の対象となる可能性があります。

▼支給内容

●雇用保険加入期間が1年以上:基本手当日額の50日分
●雇用保険加入期間が1年未満:基本手当日額の30日分

高年齢求職者給付金は、一括で支給されるため、短期で就職先を見つけたい方にはメリットがあります。
 

年金との関係・注意すべき点

高年齢求職者給付金は年金と併給できますが、失業保険を受給している間は老齢厚生年金を受給できません。求職の申し込みをした時点で、老齢年金の全額の支給が停止されるため、注意が必要です。
 
また、失業保険を受給できる期間は「離職した翌日から1年間」です。この期間が過ぎると、給付日数が残っていても支給されません。
 

まとめ

定年退職後も、再就職を希望する場合は失業保険の対象になる可能性があります。65歳以上で退職した場合は高年齢求職者給付金の利用も検討しましょう。
 
退職のタイミングや手続きによって支給額や受給資格に大きな違いが生じるため、事前の確認と慎重な判断が大切です。必要に応じてハローワークや会社の担当者に相談しながら、適切に制度を活用しましょう。
 

出典

厚生労働省 基本手当について
厚生労働省「離職されたみなさまへ」(P4⑧支給の開始と期間)
厚生労働省 雇用保険の基本手当日額が変更になります(令和6年8月1日から)
厚生労働省「雇用保険事業月報・年報」
厚生労働省「令和5年度雇用保険事業概況」
厚生労働省 離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>
日本年金機構 年金と雇用保険の失業給付との調整
 
執筆者:水上克朗
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー

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