年金だけでは毎月3万円以上の赤字になるかもしれないって本当!?65歳以上の生活費の「平均値」を見ながら解説

配信日: 2025.08.23 更新日: 2025.10.21
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年金だけでは毎月3万円以上の赤字になるかもしれないって本当!?65歳以上の生活費の「平均値」を見ながら解説
物価高や年金制度の改正が続くなか、「老後は年金だけで暮らせるの?」という不安は、多くの人が抱いている疑問です。65歳以上の無職世帯の収入は単身で月13万円、夫婦で約25万円、受け取れる年金額はそれより少なく、毎月の生活は赤字になる可能性が高いというのが現状のようです。
 
このデータをもとに赤字の実態と、老後資金を減らさずに暮らすための具体的な対策について考えてみましょう。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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赤字は本当:収支を詳しく見ていきましょう

ズバリ、「赤字」は避けられません。漠然と恐れるのではなく、現実と向き合うために収支、原因を一つずつ見ていきましょう。
 
まず、支出から確認します。
 
総務書の「家計調査報告(令和6年)」によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の平均値は、実収入が月額平均で25万2818円、社会保険料や税金を控除した後の可処分所得は22万2462円、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の場合は、実収入が13万4116円、可処分所得は12万1469円となっています。
 
一方で、消費支出は夫婦のみの無職世帯の平均月額消費支出は25万6521円、単身世帯では14万9286円です。ここから、夫婦のみの無職世帯は3万4058円、単身世帯では2万7817円の月額での赤字という結果になります。
 

令和7年の公的年金平均受給額は夫婦2人の場合、月平均約23万円

次に、収入を確認します。
 
日本年金機構の公式サイトから、令和7年の平均受給額を見ると、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)について、月平均23万2784円となっています。
 
これは平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で、40年間にわたり勤めた場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準となります。国民年金のみの場合は、6万9308円です。
 

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なぜ赤字になるのか?

このことから、普通に老後を迎えた場合は、赤字が避けられないというのは明白です。本章で、赤字になる理由を詳しく見ていきましょう。
 
1つめは、 物価上昇(インフレ)です。
 
総務省統計局のデータから2020年を100とした消費者物価指数(CPI)で見ると、2025年6月の食料指数は約124.6、つまり5年間で約24.6%上昇しています。光熱費も例外ではなく、電気代指数は補助金の影響で上下しながらも、2020年比で17.9%高い水準にあります。
 
これらの上昇は毎月の支出を直接押し上げることになり、生活に欠かせないコストであるため、固定収入が頼りの年金生活者ほど家計を圧迫しマイナスの影響を受けやすくなります。
 
2つめは、年金額の実質減少(マクロ経済スライド)という仕組みです。
 
日本の年金は、物価や賃金の変動に応じて改定されますが、「マクロ経済スライド」という仕組みにより、物価上昇分から一定割合を差し引いて支給額を抑制します。例えば2024年度は物価が約3.6%上昇したのに対し、年金は約2.7%の増額にとどまりました。
 
結果として、名目は増えても実質的には購買力が低下します。長期的にはインフレが続くほど、年金だけでは生活水準を維持しにくくなります。
 
3つめは、 医療・介護費の増加が避けられないという現実です。
 
年齢を重ねるにつれ医療・介護の利用頻度が増え、自己負担額も増加しがちです。医療費の自己負担割合は、70~74歳で一定以上の所得のある人は2割負担になっています(ただし配慮措置あり)。介護保険料は、全国平均で第1期(2000年)2911円から第9期(2024~26年)では月6225円超へと大幅上昇となっています。
 
これら医療介護関連費用の増加は、生活費のなかでじわじわと比重を増し、固定費化していきます。また、加齢により治癒するということが考えにくいため赤字要因となります。
 
この3つを合わせると、生活費は上昇し続ける一方で、年金の増加ペースは追いつかず、医療・介護という避けられない支出が増えるという構造的な赤字が生まれます。
 

赤字を防ぐための具体策

本章では、避けられない赤字幅を少しでも抑えるための具体策を考えていきましょう。
 
収支改善はシンプルで、収入を増やすか支出を減らすかの二択です。
 
支出を抑える方法としては、固定費の削減です。例えば、格安スマホへ乗り換え(月▲3000~5000円)や電気・ガスのプラン見直し(月▲1000~2000円)、食費の工夫としてまとめ買いと冷凍保存でロスを減らす、といったことはすぐに取り組むことができます。
 
収入を増やす方法で、真っ先に浮かぶのが年金支給開始年齢の繰下げです。1年繰下げで年金額+8.4%、5年繰下げで+約42%となります。この増えた年金額は生涯変わりませんから検討してもいいでしょう。
 
それ以外には、就労の継続という方法も考えられます。健康状態に合わせて、無理のない範囲で就労を継続すれば、たとえ週3日勤務でも月5~7万円の補てんが可能です。
 
資産運用を検討し、今ある資産を少しでも増やす試みに挑戦してみてはいかがでしょうか。預貯金だけでなく、インフレに強い資産(投資信託・債券・配当株)を採り入れることを検討するのもいいでしょう。生活費として6~12ヶ月分は現金で確保し、それ以上は運用へ回すというのも有効かもしれません。
 
ただし、これまで運用には縁遠かった場合、初心者の場合は、リスクを抑えた保守的な方法を優先しましょう。
 
最後に、住まいの見直しという選択肢もあります。現在の住宅で固定資産税・維持費が高い場合は、若いうちに断捨離をしてコンパクトな住居へ移るというのも終活も含めて意義ある取り組みです。持ち家の場合はリバースモーゲージ(自宅を担保に生活資金を得る)を検討してみるのもいいかもしれません。
 

まとめ

これまで見てきたように、多くの65歳以上世帯は年金だけでは毎月2~3万円の赤字になり、物価上昇や医療費増加により、将来は赤字幅がさらに拡大する可能性が高いという現実を改めて認識しましょう。漫然と「赤字が続く」生活を放置するのではなく危機感をもって自分の家計でできることを洗い出して、対策を立てることが求められます。
 

出典

総務省 家計調査報告[家計収支編] 2024年(令和6年)平均結果の概要
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
総務省 2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)6月分
内閣府 2024年度 日本経済レポート -賃金と価格をシグナルとした経済のダイナミズムの復活へ-
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?
厚生労働省 第110回 社会保障審議会介護保険部会 参考資料1 給付と負担について(参考資料)
厚生労働省 第9期計画期間における介護保険の第1号保険料について
日本年金機構 年金の繰下げ受給
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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