退職金「2500万円」の手取りはいくら?“引かれる税金”は、勤続年数「20年以下・超」でどれだけ違うのでしょうか?

配信日: 2025.09.26
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退職金「2500万円」の手取りはいくら?“引かれる税金”は、勤続年数「20年以下・超」でどれだけ違うのでしょうか?
多くの勤労世帯にとって、老後資金の柱の1つとなる退職金。勤続年数との関係によって、税金がかかるかかからないか、かかる場合の税額がいくらかになるかが異なります。本記事では、退職金を2500万円と想定し、勤続年数を「20年以下」と「20年超」の2パターンに分けて、税額と手取り額の計算例を紹介します。
福嶋淳裕

日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

リタイアメントプランニング、老後資金形成を得意分野として活動中の独立系FPです。東証一部上場企業にて、企業年金基金、ライフプランセミナー、DC継続教育の実務経験もあります。

https://www.fp-fukushima.com/

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退職所得と税金

所得税法において個人の所得には10種類の区分があり、退職金は「退職所得」に分類されます。退職所得には、退職に起因して勤務先から支給される退職手当(退職金)のほか、確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)など、私的年金制度の老齢給付金として支給される一時金、退職に起因して社会保険制度から支給される一時金などがあります。
 
例えば、iDeCo(個人型DC)に加入している人が、将来、老齢給付を年金ではなく一時金で受け取る場合、退職所得の計算対象になります。一方、前払い退職手当など、名称に「退職」が付いた手当でも、在職期間中に受け取っていれば退職所得ではなく給与所得です。
 
退職金は長年の勤労に対する報償であることから、「退職所得控除」という長期勤続優遇型の仕組み(いわば非課税枠)があり、ほかの所得と分離して単独で計算し、税負担が軽くなるよう配慮されています。
 
退職手続き、または年金請求手続きの際、所定の書類を漏れなく提出しておけば、税金がかかる場合の税額は、給付する側(勤務先、または勤務先から給付業務を受託した金融機関など)が送金時に天引き(源泉徴収)し、本人に代わって納税します。
 

勤続年数「20年以下」の計算方法

税額計算の基となる退職所得の金額は、「(収入金額-退職所得控除額)÷2」です。この計算式でわかるように、収入金額(一時金)が退職所得控除額(非課税枠)より小さい場合、言い換えると、退職所得控除額(非課税枠)に収入金額(一時金)が収まる場合、退職所得は発生せず、したがって税金は一切かかりません。
 
収入金額とは、一時金の額そのもの、いわゆる額面を指します。退職所得控除額は「40万円×勤続年数」で計算します。勤続年数に1年未満の端数がある場合、1年に切り上げて計算します。退職所得控除額の計算結果が80万円に満たない場合、80万円とします。
 
退職所得の金額を計算した結果、退職所得が発生して税金がかかる場合、その内訳は次のとおりです。

・所得税額=退職所得の金額×所得税率-控除額
 
・復興特別所得税額=所得税額×2.1%
 
・住民税額=退職所得の金額×10%

「所得税率、控除額」については、国税庁ウェブサイトの「退職金と税」などを参照し計算します。
 

計算例(退職金2500万円、勤続年数20年)

退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)÷2=(2500万円-40万円×20年)÷2=850万円
 
・所得税額=退職所得の金額×所得税率-控除額=850万円×23%-63万6000円=131万9000円
 
・復興特別所得税額=所得税額×2.1%=131万9000円×2.1%=2万7699円
 
・住民税額=退職所得の金額×10%=850万円×10%=85万円
 
税額合計=219万6699円
 
手取り額=2280万3301円

 

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勤続年数「20年超」の計算方法

勤続年数「20年以下」の場合と異なる点は、退職所得控除額の計算式です。勤続年数20年以下の場合は「40万円×勤続年数」でしたが、勤続年数20年超の場合、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算します。この点以外は勤続年数20年以下の場合と同じです。
 

計算例(退職金2500万円、勤続年数38年)

退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)÷2=(2500万円-(800万円+70万円×18年))÷2=220万円
 
・所得税額=退職所得の金額×所得税率-控除額=220万円×10%-9万7500円=12万2500円
 
・復興特別所得税額=所得税額×2.1%=12万2500円×2.1%=2572円
 
・住民税額=退職所得の金額×10%=220万円×10%=22万円
 
税額合計=34万5072円
 
手取り額=2465万4928円

 

まとめ

勤続年数38年(22~23歳入社、60歳定年退職)の場合、退職所得控除額は2060万円なので、退職金2060万円まで税金がかかりません。現行の退職所得税制は、同じ勤務先で長く働く人ほど恩恵が大きく、転職者が不利になる仕組みです。
 
昭和型ともいえる長期勤続優遇の仕組みに対しては、批判的な意見が増えてきました。見直しの必要性については、岸田前政権でも石破政権でも触れられていることから、近い将来、具体的な議論が始まるかもしれません。退職の時期が近い人は、税制改正に関する報道に気を付けていきましょう。
 

出典

国税庁 退職金と税
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
 
執筆者 : 福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

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