女性・おひとりさま・年収500万円、老後に必要なお金はいくらくらいですか?
本記事では、総務省や金融庁などの公的データをもとに、生活費・医療費・住居費などを具体的に試算し、安心して老後を迎えるための準備を考えていきましょう。
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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女性・おひとりさまの老後の特徴
厚生労働省の令和6年簡易生命表によると、2024年時点での平均寿命は、男性が81.09歳、女性は87.13歳、65歳時点の平均余命は男性が19.47年、女性は24.38年となっています。90歳まで生存する割合は、男性:約25.8%に対して女性は約50.2%と圧倒的に女性は長い老後と付き合っていく必要がありそうです。
この65歳から87歳までの想定期間22年間を、一般的には主に厚生年金収入で賄っていくことになります。今回のご相談者のケースで、年収500万円で22歳から60歳まで約38年間厚生年金に加入し、65歳から年金を受給する場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて年間約191万円(月額約15万9000円)が支給されると試算されます。
実際には、入社してすぐに年収500万円というのは考えにくいこと、支給額から社会保険が控除されるので手取りでは試算額を下回ると想定されますが、今回はそのあたりの詳細の事情を割愛して月額約15万円を採用します。そうすると22年間では、「15万円×12ヶ月×22年=3960万円」が支給される試算総額です。
老後の生活費の目安
総務省「家計調査 家計収支編(2024年)」によると、単身無職世帯の月間支出は約16万4000円です。この支出が22年間続くと想定すると、
16万4000円 × 12ヶ月 × 22年 ≒ 約4330万円
約4300万円が支出総額です。
住居費の注意点
上記の生活費は持ち家の人も含んだ平均値のため、賃貸で暮らす場合は家賃が大きく上乗せされます。
例えば、都内ワンルームの平均家賃は月額7~10万円なので、賃貸の場合の追加費用は、「7万円 × 12ヶ月 × 22年 ≒ 約1848万円」となり、持ち家がない場合、老後資金として約6000万円以上必要になる可能性があります。
医療費・介護費の考え方
高齢になれば、医療費・介護費の負担が増えます。家計調査では医療費はひと月約8260円ですが、これは通院中心の金額です。入院や介護が必要な場合には、月5~10万円の追加支出も想定されます。
介護保険サービスの自己負担は、1割~3割です。長期療養や施設入所を考慮すると、医療・介護費として300~500万円の備えがあると安心です。
教養・娯楽・交際費
老後は、日常の大半の時間を占めていた「就労」がなくなるため、趣味や人付き合いによって社会性を維持することがより大切になります。
家計調査では、月約3万円が使われており、年間では「3万円 × 12ヶ月 × 22年 ≒ 約792万円」です。旅行や趣味を充実させたい場合には、さらに上乗せして考える必要があります。
まとめ
このように見てくると、女性のおひとりさまが安心して老後を過ごすには、生活費・住居費・医療費・娯楽費などを含めて、約5000~7000万円の資金が必要と試算されます。特に、賃貸で暮らす場合は住居費が大きな負担となるため、早めの資産形成が必須になります。
公的年金については、今回は月額15万円、22年間では3960万円と試算しましたが、これだけでは不足する可能性は高いです。だからといって不足額をすべて自助努力で賄うのも難しいでしょう。
国や自治体では高齢者向けにさまざまな支援サービスを提供しています。現役時代からの計画的な資産形成はもとより、日ごろから情報収集に努めできるだけ不安の少ない老後の準備を心掛けましょう。
出典
厚生労働省 令和6年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命
総務省統計局 家計調査 家計収支編 単身世帯 2024年 第1表
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者