定年後は働かず、900万円の「貯金」と500万円の「退職金」で夫婦二人で生活していこうと思っています。これって大丈夫でしょうか?
夫婦2人でこの金額を基盤に暮らしていけるかどうかは、多くの家庭にとって現実的な関心事かもしれません。そこで本記事では、公的な調査データやシミュレーションを参考にしながら、老後資金に対する注意点を解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
老後資金の目安はどのくらい?
老後に必要とされる生活費の目安は、高齢夫婦無職世帯の平均支出が月約25万7000円、年間およそ308万円です。一方、年金収入のモデルケースは夫婦合計で月22万2000円前後とされています。
この数字を照らし合わせると、年金だけでは毎月3万5000円程度不足する計算になります。つまり、定年後の夫婦二人暮らしでは貯蓄を取り崩す必要があるのが実態です。
不足分をどのように補うかによって、老後の暮らしの安心度は大きく変わります。不足分が一見小さく見えても、1年で42万円であれば10年で420万円と、長期で大きな差を生みます。資金計画を立てる際には、この積み重ねを具体的に意識することが重要です。
1400万円の退職金と貯金で生活できる?
900万円の貯金と500万円の退職金を合わせた1400万円では、どの程度の期間生活ができるのでしょうか。
仮に生活費を月25万7000円、年金収入を月22万2000円とすると、毎月3万5000円の不足が生じます。年間42万円を貯金から取り崩すと、1400万円はおよそ33年もつ計算です。65歳から取り崩しを始めても98歳まで資金が残る計算となり、平均的な寿命を考えると安心材料になります。
ただし、これは平均的な生活費を前提にした試算です。実際の生活費や年金額には個人差があり、ゆとりある生活を望めば資金の寿命は短くなります。例えば、旅行や趣味といった余暇費用を積極的に取り入れる生活であれば、年間の支出が数十万円単位になる可能性があります。
そのため、価値観や希望する暮らし方を家族であらかじめ話し合っておきましょう。老後資金の計画を立てるときは、家庭の年金受給額と生活スタイルをもとに具体的なシミュレーションを行うことが大切です。
老後資金を減らす4つのリスク
長い老後生活では、想定外の支出が発生する可能性もあります。こうした出費は準備が不十分であれば、家計にとって大きな負担となります。特に注意したいのは以下の4点です。
・医療費:入院や手術などで生じる高額な費用
・介護費用:介護サービスの利用や施設入居に必要な支出
・物価上昇:インフレ率上昇による生活の圧迫
・予期せぬ出費:住宅の修繕や子どもへの援助などの突発的な支出
こうしたリスクを念頭に置くことで、資金計画の精度を高められます。
老後資金を長持ちさせる工夫
資金を守るためには、日々の支出を見直すことが基本です。固定費の削減や保険の点検、不要なサービスの整理はすぐに実践できる方法です。
また、資産の一部を低リスクで運用することも選択肢になります。国債や分散型の投資信託を利用すれば、預金だけでは対応できないインフレリスクを抑える効果に期待できるでしょう。
なお、公的制度を上手に使うことも重要です。高額療養費制度や介護保険制度のほか、各自治体が実施している助成制度を調べておくと安心です。制度の仕組みをあらかじめ理解し、必要な時にすぐ利用できるよう準備しておくことが、急な出費への備えになります。年金の繰下げ受給や短時間の就労を取り入れることで、収入を補う方法もあります。
貯金と退職金で老後を乗り切るためのポイント
900万円の貯金と500万円の退職金、合わせて1400万円の資金があれば、年金と組み合わせることで老後生活の基盤は整います。平均的な生活費を前提にすれば、33年ほど資金を補える試算となり、長寿化が進む現代でも一定の安心感をもてます。
ただし、医療費や介護費用、物価上昇などの不確定要素を考慮しなければなりません。生活費を正確に把握し、制度の活用や資産運用を組み合わせて計画を立てることが大切です。
出典
総務省「家計調査報告(家計収支編)」2024年(令和6年)平均結果の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー