質問「何歳まで生きたいですか?」への回答“中国・ベトナム76歳”だけど、日本は意外と短い? 長生きよりも「健康で尊厳ある生活」を重視する傾向に…夫婦2人の“老後資金”も確認
本記事では、この調査結果から読み取れる日本人の特徴、傾向を紹介するとともに、「無職の高齢夫婦が貯蓄などから取り崩す額」と「老後資金の不安を解消する方法」について1つの見解を紹介します。
なお、「マニュライフ生命 アジア・ケア・サーベイ2025」の調査対象は、9つの国と地域(日本、中国、香港、台湾、ベトナム、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア)の25歳以上の男女9034人(うち日本1000人)とのことであり、若年層の回答も含まれている点に留意する必要があります。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
リタイアメントプランニング、老後資金形成を得意分野として活動中の独立系FPです。東証一部上場企業にて、企業年金基金、ライフプランセミナー、DC継続教育の実務経験もあります。
目次
日本人が「望ましい」と考える寿命は意外に短い
同調査の「より高い生活の質を得られるのであれば、寿命が短くなることを許容する人」に対する「何歳まで生きたいですか?」という質問への回答は、日本では平均73歳でした。ちなみに、中国とベトナムが最も長い76歳、マレーシアが最も短い68歳と回答しています。
一方、「現在の健康状態や生活の状況を踏まえたうえで、自分は何歳まで生きると予想していますか?」という、推定寿命を問う質問に対しては、日本の平均回答は79歳です。
日本では、長生きすることよりも、尊厳を持って生きることを望む傾向(生活の質を重視する人ほど、より短い寿命を望む傾向)が見られます。特に若年層ではこの傾向が顕著であり、25~34歳の日本人が望ましいと考える寿命は65歳とのことでした。
老後資金が不安な人の割合は日本が最も高い
「老後資金が不安な人(老後資金が十分ではないと感じている人)」の割合は、調査対象9カ国・地域の平均が43%、不安な人の割合が最も高い国は日本で77%、第2位は58%の台湾でした。他方、不安な人の割合が最も低い国はベトナムで15%とのことです。
日本とベトナムが対照的な結果を示した調査項目は、「老後資金が不安な人の割合」のほかに「財務計画や投資に関するアドバイスのためにファイナンシャルプランナーを活用していない人の割合」がありました。日本ではファイナンシャルプランナーを利用していない人の割合が80%と、他の国より突出して高いのに対し、ベトナムでは30%とのことです。
65歳から73歳までの9年間に無職の夫婦が取り崩す金融資産は約367万円?
総務省の家計調査年報(2024年)「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支」によれば、夫婦高齢者無職世帯は、月平均の実収入が約25万3000円(うち公的年金収入が約22万5000円)、非消費支出(直接税、社会保険料)が約3万円、消費支出が約25万7000円です。貯蓄・投資などの金融資産から毎月約3万4000円取り崩していることが読み取れます。
これらを基にすれば、仮に64歳の終わりにリタイアする場合、「65歳から73歳までの9年間に夫婦が取り崩す金融資産は約367万円である」と計算できます(3万4000円×12ヶ月×9カ年)。
もっとも、これはある一時点の統計に基づく単純な計算であり、2019年の「老後資金2000万円問題」のときの2000万円と同様、全員に当てはまる数字ではありません。さらに、実際には73歳よりも長く生きる人のほうが多いでしょう。
老後資金の不安を解消するには?
老後資金について根拠なく漠然とした不安を感じている人は、「キャッシュフロー表」と呼ばれる表を作成し、老後の家計を見通してみてはいかがでしょうか。精度の高低はあるものの、将来の家計予想を可視化することで、杞憂に終わって安心できたり、逆に、ただちに対処を要する事態であると理解できたりするでしょう。
キャッシュフロー表のひな形は、インターネットで「厚生労働省 人生後半戦の経済面を含めたライフプランニングシート」や「日本FP協会 便利ツールで家計をチェック」などで検索すれば入手できます。
キャッシュフロー表を作成した結果、対処が必要となった場合、やるべきこと・できることは世帯ごとに異なります。「収入を増やす」「支出を減らす」「運用して増やす」の3つの視点で検討しましょう。金融機関などに所属しない、中立的なファイナンシャルプランナーに相談するのも一案です。
まとめ
「マニュライフ生命 アジア・ケア・サーベイ2025」からは、日本人が望む寿命は意外に短いこと、老後資金が不安な人の割合は日本がアジアで最も高いことなどが読み取れました。老後の家計収支については総務省の家計調査年報が参考になります。
ただし、まだ調査対象になっていない若い世代ほど女性の就労年数が長く、夫婦2人分の公的年金収入が現在の調査対象世代より多くなると見込まれることから、年金受給開始前の人は、キャッシュフロー表を作成し、将来の家計予想を可視化してみることをおすすめします。
出典
マニュライフ生命保険株式会社 「アジア・ケア・サーベイ2025(アジア健康長寿調査)」結果発表
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)
厚生労働省 平成29年度 労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業
執筆者 : 福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)