夫の退職金は2200万円。でも「老後はこれじゃ足りないかも」と言われました。この金額だと実際どんな暮らし向きになるのでしょうか?
今回は、具体例を出しながら、老後のマネープランをチェックしていきましょう。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。
富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”
退職金にかかる税金をチェック
退職金には、税金がかかります。退職金のすべてを老後資金として使えるわけではないので、注意が必要です。
課税対象額は、退職金から退職所得控除を差し引いた残額の2分の1です。なお、控除額は勤続年数により異なります。勤続年数が20年以下の場合は40万円×年数(最低80万円)、同20年超の場合は800万円+70万円×(勤続年数-20年)です。
では、退職金2200万円で勤続年数が30年の場合、税金と手取り金額はどうなるのでしょうか。計算してみましょう。
・退職金控除額=800万円+70万円×10=1500万円
・退職所得金額=(2200万円-1500万円)÷2=350万円
・所得税=350万円×20%-42万7500円=27万2500円
・復興特別所得税=27万2500円×2.1%≒5700円
・住民税=350万円×10%=35万円
・合計≒63万円
つまり、2200万円で勤続30年なら約63万円の税負担となり、手取りは約2137万円となります。実際に、自分がもらえる退職金から、税金額を計算してみましょう。
毎月かかる生活費をチェック
次に、退職金で老後に何年間生活ができるかを計算してみましょう。この計算をするためには、老後に毎月必要となる生活費を把握しておく必要があります。
例えば、夫婦2人で毎月30万円の支出をしていると仮定しましょう。そのうち、月15万円分は年金でカバーし、残りの15万円は退職金を元手資金とします。
単純に計算すると、退職金の手取り約2140万円では、約143ヶ月(2140万円÷15万円)、つまり12年弱で使い切ることとなります。
退職金と年金だけでは、夫婦2人で12年弱しか生活できません。65歳で老後生活をスタートすると、77歳で老後資金が底をつくことになります。退職金がなくなった後は、年金だけで生活していかなければいけません。
老後資金はどうやって確保する?
今回ご紹介したケースでは77歳でお金が足りなくなるので、退職金2200万円と年金だけでは、十分な老後資金があるとはいえません。そのため退職金以外に、老後のためにお金を確保する必要があります。以下の方法で、お金を準備していきましょう。
・退職まで時間がある場合は、収入を増やすことができないか検討する。また、少しでも貯蓄を増やす
・退職しても、再雇用制度を活用したり、パートで働いたりと収入を得る
・老後は毎月の支出額を減らす
・現在ある貯金の一部を資産運用に回す
毎月30万円の支出をするという、現役世代と同じような老後生活を送るためには貯蓄も必要です。例えば、夫婦2人で85歳くらいまで元気に生活するために、退職金以外に少なくとも2000万円程度の貯金をしておく必要があります。さらに、老後は今まで以上に医療費がかかるなど、万が一のときの出費も見積もる必要があります。
「退職金と年金があるから老後の生活は大丈夫」ということは決してありません。具体的に老後のマネープランを計算して、生活をイメージしておくことが大切です。
まとめ
今回は、老後資金がいくら必要になるのか、退職金以外にいくら貯金が必要なのかなどをご紹介しました。今回の内容を参考にしながら、みなさんも退職間近になって慌てることがないように、早め早めに老後資金を準備するようにしましょう。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 退職金と税
執筆者 : 下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者