夫が「退職金1000万円で車を買いたい」と言い出した…老後の夢は応援すべき? それとも老後資金に回さないのは“浪費”?
本記事では、家族が退職金1000万円で車を買いたいと言っているケースを例に、老後資金の考え方について解説していきます。
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目次
毎月約3万4000円の赤字をどう埋める? 老後の平均支出と年金収入差
まずは老後家計の基準を押さえましょう。総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」のデータでは、65歳以上の夫婦のみ無職世帯における1ヶ月の可処分所得は約22万2000円、消費支出は約25万7000円で、月約3万4000円が不足するという構図が示されています。
定年後の月々の赤字を退職金取り崩しや資産運用でどう補うかが重要です。車の購入は一時的な大型支出だけでなく、保険料・税金・車検代・燃料費・整備代を含む固定費化の側面があり、月々の赤字がさらに上乗せされてしまう恐れがあります。
税制・控除を考慮して退職金1000万円の使ってよい枠を決める
退職金は税制上優遇され、一時金として受け取る場合、退職所得控除後の金額の2分の1が課税対象となる仕組みです。
・退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
退職所得控除額は勤続年数に応じて算定されます。控除額以内であれば税負担は生じません。
また国税庁によれば、「退職所得の受給に関する申告書」を支払者に提出しておくと、退職所得金額に応じた税額が源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。
税引き後の手取り額を確定させ、その中から「生活の赤字補てん枠(例:月3万4000円×12=年間約40万8000円)」「緊急予備資金」「耐久消費(車など)」の上限を配分するとよいでしょう。
車購入時は「劣化費・維持費」を含めた総額で判定する
車を購入する際、購入価格だけでなく5~10年の総所有コストで判定することが重要です。具体的には、購入費(頭金・下取り差引・ローン金利など)に加え、自動車税・自動車重量税・自賠責保険料・任意保険料・車検代・定期整備代・タイヤ等消耗品費・燃料費・駐車場代などを合算し、年平均コストを家計に落とし込みます。
老後は平均で月3万4000円程度の赤字が生じやすい前提のもと、その赤字と車の年次コストの合計が、退職金と金融資産の取り崩し計画で持続可能かを検証しましょう。
退職金の失敗例としては、「計画性のない大型出費」「全額を投資に回す」「現金のまま放置して目減りする」などが挙げられます。まずは退職金の全体像を可視化し、使途ごとの上限を設定しましょう。維持費は年単位で見積もり、資産運用する場合は分散と段階的な投入を基本とし、衝動買いも避けるなど、慎重に意思決定を進めてください。
まとめ
老後の夢をかなえることは、生きがいとしてとても大切です。ただし、退職金1000万円の使い道は、老後の生活全体を見据えたうえで、慎重に判断する必要があります。たとえ車の購入が夢であっても、維持費や家計への影響を冷静に見極めることが欠かせません。
夢と安心を両立させるには、感情だけでなく、数字にもとづいた判断が重要です。まずは、退職金の使途に優先順位をつけ、「生活補てん」「予備資金」「耐久消費」などに分けて配分し、支出が将来にわたって無理のないものかを検証しましょう。
そのうえで、家族と話し合い、上限金額や購入計画について合意することが大前提となります。
出典
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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