退職金にも税金がかかるそうですが、「2000万円」もらえる場合手取りはどれくらいになりますか? 老後資金として不足するでしょうか?
本記事では、退職金にかかる税金の仕組みを整理したうえで、「2000万円を受け取る場合の手取り額」の試算をし、さらにそれが老後資金として十分かどうかを考えていきます。
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目次
退職金に課される税金の仕組み(退職所得・控除の考え方)
退職金は「退職所得」として特別な税のルールが適用されます。一時金として支払われる退職金は長年の勤務の成果として、通常の給与よりも税負担が軽くなるように設計されているのです。税額を計算するには、まず「退職所得控除額」を差し引き、その残りの金額の半分に税率をかけます。
退職所得控除は勤続年数によって異なり、国税庁によれば、勤続20年以下なら「40万円×勤続年数(最低80万円)」、20年を超えると「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算します。
例えば、勤続30年の場合、控除額は「800万円+70万円×10年=1500万円」となります。つまり、退職金が2000万円なら、課税対象となる退職所得の金額は(2000万円-1500万円)÷2=250万円です。この250万円に対して、所得税や住民税がかかる仕組みです。
2000万円の退職金を受け取る場合の手取り試算例
仮に勤続30年で退職金が2000万円の場合、退職所得控除を差し引いた課税対象額は250万円です。ここに所得税の税率(国税庁の税額表より税率10%・控除額9万7500円)と住民税の税率(10%)を合わせると、実際に支払う税金は40万円ほどになると考えられます。結果として、手取りは約1960万円が見込まれます。
もちろん、勤続年数が短い場合は控除額が減るため、課税対象が増えて税金も高くなります。一方で、勤続年数が長い人や退職所得控除が大きい人ほど、税負担はさらに軽くなります。退職金は分離課税のため、ほかの収入と合算して税率が上がることはなく、確定申告も原則不要です。
ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、一律20.42%が源泉徴収されてしまうため、後から確定申告を行うか、申告書を事前に提出しておきましょう。
このように、退職金は多く見えても実際の手取りは少し減りますが、優遇措置のおかげで課税額は比較的少なく抑えられるのが特徴です。
老後資金として見たとき、退職金2000万円で足りる? 不足する?
次に、この手取り約1960万円が老後資金として十分かを考えてみましょう。総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、夫婦2人の無職世帯において、老後の1ヶ月の生活費は平均25万円程度とされています。
月25万円かかるとすれば、年間300万円、30年間で9000万円が必要です。公的年金で年間200万円ほどを受け取れると仮定しても、残り3000万円を貯蓄などでまかなう必要があります。
つまり、退職金の手取り1960万円だけでは老後資金としては不十分な可能性があります。ただし、実際には住宅ローンの完済状況や生活水準、健康状態、家族構成などによって必要額は大きく変わります。
さらに、退職金をそのまま貯蓄しておくのではなく、ある程度を運用に回せば、老後の資金寿命を延ばすこともできる可能性があります。ただし、投資には一定のリスクも伴うため注意が必要です。
退職金は「老後の基礎資金」にはなりますが、それだけで生活を支えるのは難しいというのが実情です。
まとめ:税負担も見据えた退職金と老後資金の考え方
退職金2000万円を受け取っても、税金を差し引くと、今回の試算では手取りはおよそ1960万円前後となる可能性があります。控除の仕組みで税負担は比較的軽くなりますが、それだけで老後を安心して暮らすのは難しいと考えられます。退職金は老後資金の一部と位置づけ、年金・貯蓄・運用など複数の柱を組み合わせて備えることが重要です。
まずは、自分の勤続年数から退職所得控除額を計算し、実際の手取り額の目安を把握しましょう。そして、退職後の生活費や医療・介護などの支出を見積もり、必要に応じて資産運用や節税対策を検討します。退職金は「新しい人生のスタート」を支える資金です。賢く使い、将来に安心をつなげていくことが大切です。
出典
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和7年度版) 退職金と税
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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