年金だけでは生活が苦しいです。年金をもらっていても生活保護って受けられるのでしょうか? 条件や受給額を具体的に教えてください。
そのようなときに「生活保護を受けられないか」と考える人もいると思われますが、年金を受給していても生活保護を受けることは可能なのでしょうか。本記事では、制度の仕組みや受給条件、支給額の計算方法を踏まえて、現実的な判断材料を整理します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
生活保護制度の基本と近年の動向
生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を支援するための制度です。資産や能力、他の公的制度、扶養義務者からの援助などを活用してもなお生活に困窮する世帯に対して、国と自治体が不足分を補う形で保護費を支給します。
支給内容は日常生活費にあたる生活扶助のほか、実際の家賃額等に基づく住宅扶助、医療費をまかなう医療扶助のほか、教育扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8種類に分かれています。
最低生活費は世帯構成や年齢、所在地(級地区分)、物価、賃金水準などをもとに算定されます。昨今の物価高騰を受けて、2025年10月からは生活扶助基準額に月額1500円の特例加算が実施されるなど、基準額の見直しが行われています。
特に都市部では家賃や物価が高い傾向にあるため、地方に比べて支給額が高く設定されています。受給額や基準額は社会経済情勢を踏まえ、今後も変動する可能性があるため、最新動向に注意が必要です。
年金を受給していても生活保護は受けられる
年金を受け取っていても、生活保護の要件を満たせば受給は可能です。ただし、生活保護は年金も収入として計算されるため、年金額を含めても最低生活費に満たない場合にその不足分が支給される仕組みです。
例えば、自治体が定める最低生活費が月13万円で年金収入が9万円の場合は、差額の4万円が支給対象となります。つまり、生活保護は足りない分だけ補う制度であり、年金と生活保護の併給が禁止されているわけではありません。
ただし、年金以外に預貯金や不動産などの資産がある場合には、それを生活に充てられると判断されれば支給は認められません。資産がある場合は、売却や解約を求められることもあります。
また、親族等から援助が見込める場合には、自治体が「扶養照会」というプロセスで支援の可否を確認し、十分な援助が受けられると判断された場合には生活保護の対象外となることもあります。
支給額の仕組みと受給の目安
生活保護の支給額は、「最低生活費-すべての収入」というシンプルな計算で決まります。収入には年金のほかに給与や手当、家賃収入など世帯のすべての所得が含まれます。
具体的な目安として、単身高齢者が都市部で暮らす場合、2025年10月以降の最低生活費はおおむね月13万円前後が目安です。年金が月5万円なら差額の約8万円、月8万円なら約5万円の保護費が支給される計算になります。年金が13万円以上であれば、基準を超えるため支給はありません。
ただし、住宅扶助や医療費などは生活扶助と別枠で支給される場合があり、実際の生活支援額は単純計算より多くなるケースもあります。また、生活保護は「総合的な生活支援制度」であるため、金銭支給に限らず、医療費の免除や介護サービスの軽減といった支援も含まれます。
申請にあたっての注意点と留意すべき点
生活保護を申請する際には、資産や収入の状況を詳細に調べられます。預貯金や車、不動産、保険などは原則として活用対象となり、生活に不要と判断されたものは売却や解約などの処分を求められることがありますが、居住や通院など生活上必要不可欠な場合には例外的に所有が認められることもあります。
また、保護費は生活維持のための支出に使うことが前提であり、借金返済や資産形成に充てることは認められません。受給中は福祉事務所のケースワーカーとの定期的な面談が義務づけられていますが、無断で連絡を絶つなどの行為があれば状況に応じて支給が見直される場合もあります。
さらに、生活保護制度には心理的なハードルも存在します。支援を受けることへの抵抗や周囲の目を気にして、申請をためらう人も少なくありません。
しかし、生活を維持できない状態を放置することは、健康や尊厳の面でより大きなリスクを伴います。生活保護制度は困窮した状況からの再出発や将来の自立を支援する制度であり、健康や尊厳を守るためにも、必要な場合はためらわず相談や申請をすることが重要です。
制度を正しく理解し、現実的に検討しよう
年金を受け取っていても、生活保護の対象となる場合はあります。年金額や資産状況、扶養関係などを総合的に判断し、国が定める最低生活費に満たない場合には申請を検討が推奨されます。
ただし、制度には資産制限や使途制限があり、申請後も一定のルールに従う必要があります。申請を考える際は、まず自身の収入や支出、資産状況を整理し、自治体の福祉事務所や社会福祉協議会に相談してみましょう。正確な情報をもとに、制度を活用することが、無理のない暮らしを守る第一歩となります。
出典
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 第52回社会保障審議会生活保護基準部会 参考資料 生活保護制度の概要等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー