勤続30年の60歳、退職金は「2500万円」の予定です。税金が引かれたあとの手取り額はいくらになりますか?
そのため、人によっては「想定した金額よりも手取り額が少ない」と感じる場合もあるでしょう。退職金にかかる税金の求め方を知っておくと、手取り額の目安が事前に分かります。
今回は、退職金の税金計算に欠かせない退職所得控除や税金の計算方法などについてご紹介します。
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退職所得控除とは
退職金にかかる税金を計算するうえで、まずは退職所得控除を理解しておく必要があります。
退職所得控除は、退職金にかかる税金を計算する際、基となる金額から差し引ける控除です。控除額が大きくなるほど課税される所得額が減少するため、税金負担が軽くなります。
国税庁によると、退職所得控除の金額は勤続年数によって異なります。計算式は以下の通りです。
・勤続20年以下:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
・勤続20年を超える:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
上記のように、同じ金額の退職金でも同じ会社での勤続期間が長い人の方が、税金が安くなる仕組みです。退職金が同じで手取り額が異なる人がいたときは、勤続年数を確認してみるとよいでしょう。
退職金に課される税金の計算方法
退職所得控除額が分かると、退職金に課される税金も計算できます。計算手順は以下の通りです。
(1)退職所得控除額を求める
(2)受け取った退職金から(1)を差し引く
(3)(2)×2分の1で、退職所得金額を求める
(4)所得税率や住民税率をかけて、税額を計算する
なお、「退職所得の受給に関する申告書」(以降申告書とする)を提出しているか否かで、所得税率は変わります。申告書を提出していれば会社側が源泉徴収をするため、本来の税率で計算された税額が引かれた状態で退職金が支給されます。
一方、申告書を提出していない場合は、一旦所得税率は20.42%で源泉徴収され、その後自分で確定申告が必要となります。なお、いずれの場合も令和19年12月31日までは復興特別所得税(所得税額×2.1%)も源泉徴収されます。
また、退職金は給料や雑所得などほかの所得とは別で計算をする分離課税の対象です。計算するときには、ほかの所得も合計しないように注意しましょう。
勤続30年、退職金2500万円の税額や手取り額
今回は、以下の条件で退職金に課される税額を求めます。
・退職金額2500万円
・勤続年数30年
・東京都新宿区在住
・一括受け取り
・所得税率は令和7年分の所得税額表を基にする
・退職所得控除以外の控除は考慮しない
・申告書は提出している
上記の条件で計算すると、退職所得控除額は1500万円となり、退職所得金額は500万円です。
申告書を提出していた場合、所得税率は20%、控除額は42万7500円です。また、復興特別所得税が2.1%のため、所得税額と復興特別所得税を合わせた額は合計58万4522円となります。住民税の税率は10%(特別区民税6%+都民税4%)となり50万円です。結果、退職金の手取りは2391万5478円になります。
なお、申告書を提出し忘れると、所得税額は一律20.42%と復興特別所得税を足すことになり、合計104万2441円です。申告書を提出した場合と比較すると、大きな差が出るため注意が必要です。申告書の提出を忘れたときは、差額の清算をするための確定申告を忘れないようにしましょう。
勤続30年、退職金が2500万円の場合、手取り額は約2392万円になる可能性がある
退職金のうち課税対象となる退職所得は、勤続年数によって変動します。勤続年数が長いほど、退職所得控除は増えるため、支払う税金は軽くなる仕組みです。
ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出し忘れると、一旦税率が20.42%で退職金から所得税が差し引かれて支給されるため、最終的には確定申告で精算が必要となるため注意しましょう。
今回のケースで申告書を提出した場合は、手取り額の目安は約2392万円となりました。退職金の手取りが気になる人は、事前に一度自分で試算するとよいでしょう。
出典
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和7年度版)退職金と税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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