父が「退職金1000万円入る」と言っていました。でも税金が引かれるはず…。実際、手取りはいくらになるのでしょうか?

配信日: 2025.10.30
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父が「退職金1000万円入る」と言っていました。でも税金が引かれるはず…。実際、手取りはいくらになるのでしょうか?
家族から「退職金で1000万円入る」と聞くと、大きな安心感を覚える人もいるかもしれません。しかし、退職金は全額がそのまま手元に残るわけではなく、所得税や住民税が差し引かれる仕組みになっています。
 
一方で、退職金には「退職所得控除」という特別な控除制度があり、勤続年数が長い場合には税金がほとんどかからないケースもあります。本記事では、退職金の税金計算の基本と、実際に1000万円の場合の手取り金額の目安を解説します。
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高橋庸夫

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住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

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退職金にかかる税金の仕組みを理解しよう

退職金は、通常の給与や賞与とは異なり、「退職所得」に分類されます。これは、長年の勤務をねぎらうための収入として扱われ、税金の計算が一般の所得と比べて優遇されています。
 
退職所得の税額は、まず「退職所得控除額」を差し引き、その残りの金額の2分の1を課税対象とする仕組みです。
 
この控除額は勤続年数に応じて決まり、勤続年数が長いほど控除額が大きくなります。そのため、同じ1000万円を受け取ったとしても、勤続20年と30年では収める税額が大きく異なります。
 

勤続25年で退職金1000万円を受け取った場合の手取り目安

具体的なイメージをつかむために、勤続25年の会社員が退職金として1000万円を受け取るケースを考えてみましょう。退職所得控除の計算式は、次のとおりです。


・勤続20年以下の場合:40万円×勤続年数 ※80万円未満の場合は80万円
・勤続20年を超える場合:800万円+70万円×(勤続年数−20年)

勤続25年であれば、「800万円+70万円×5年=1150万円」が控除額になります。この金額が退職金1000万円を上回っているため課税対象はゼロとなり、税金はかからず全額が手取りとなります。
 
ただし、勤続期間が短い場合や役員退職など特別な扱いとなるケースでは、控除額が小さくなり、課税対象が発生することがある点に注意が必要です。
 

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勤続年数が短い場合や控除額を超えると課税される

前述のとおり、勤続年数が短い場合は退職所得控除額も少なくなり、退職金が控除額を上回る場合には課税対象となります。
 
例えば勤続10年で退職金1000万円を受け取る場合、控除額は「40万円×10年=400万円」となります。この場合、「1000万円-400万円=600万円」が控除後の金額となり、その「2分の1である300万円」が課税対象の退職所得になります。
 
これに対して所得税・住民税が課されるため、この退職所得300万円に対して所得税と住民税が課されるため、合計でおよそ50万円前後の税負担が生じます。そのため、実際の手取りは約950万円前後になります。
 
また、役員や短期雇用の退職金は一般社員異なる計算方法や制限が適用されることがあります。さらに、退職金受給時に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していない場合、退職金の全額に一律20.42%(所得税および復興特別所得税)が源泉徴収されます。
 
この場合、本来の退職所得控除や2分の1課税の優遇が反映されず、税金が過大に引かれることがあります。ただし、事後に確定申告を行うことで、正しい税額に基づく還付を受けることが可能です。
 
特に、退職後に再就職をしていない場合や退職所得以外の課税所得が少ない場合には、確定申告を行うことで源泉徴収された税金の多くが戻るケースもあります。
 
申告書は事前提出が原則ですが、提出し忘れた場合でも、翌年の確定申告で精算できるため、慌てずに税務署や専門家に相談することが大切です。
 

退職金の課税は有利だが、条件によって差が出る

退職金は、他の所得と比べて税負担が軽いのが特徴です。課税対象となるのは退職金の全額から退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1であり、この課税所得は他の所得とは分離して課税されるため、給与や賞与に比べて優遇されています。
 
ただし、全てのケースで非課税になるわけではありません。勤続年数が短い場合や役員として5年以下で退職する場合、さらには複数の退職金を受け取る場合には、控除額や課税計算に特別な扱いがあり、課税が発生することがあります。
 
また、退職金は原則として一時金としてまとめて支給されますが、企業によっては「退職年金」や「一時金と年金の併用型」として受け取る制度を設けている場合もあります。
 
一時金で受け取る場合は「退職所得」として扱われ、退職所得控除の適用を受け、課税対象額は控除後の2分の1となる優遇措置があります。
 
一方で、年金形式で受け取る場合は「雑所得」となり、公的年金等控除が適用されます。この場合、毎年の所得として計上されるため、所得税や住民税の負担だけでなく、国民健康保険料や介護保険料の算定基準にも影響を与える点に注意が必要です。
 
このように、退職金の受け取り方法によって税負担や社会保険料への影響が大きく異なります。したがって、退職前に勤務先の制度をよく確認し、自分にとって最も有利な受け取り方を選択することが重要です。
 

税金の仕組みを理解して、退職後の資金計画を立てよう

退職金1000万円と聞くと、大きな金額に感じる人もいるかもしれませんが、税金や控除の制度を正しく理解しなければ、実際の手取り額を正確に把握することはできません。
 
退職所得控除は勤続年数が長いほど大きくなり、勤続年数に応じた控除額の範囲内までは非課税となる仕組みです。勤続年数が短い場合や退職金を年金形式で受け取る場合は、適用される控除額や課税方法が異なるため、勤続期間や受け取り方によっては税負担に数十万円の差が生じることもあります。
 
退職金は、人生のなかでも経済的に大きな節目のひとつです。受け取る前に退職金にかかる税金や控除の仕組み理解し、自分の勤続年数や受け取り方によってどの程度の手取りになるかを把握しておきましょう。制度を知って準備しておくことで、安心してセカンドライフの資金計画を立てることができます。
 

出典

国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 退職金と税
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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