【公務員vs会社員】「退職金が多い」のはどっち? 平均額に大差はなくても、公務員は“100パーセント支給”? 民間企業で「退職金がある」割合も確認
会社員は会社の規模などによって退職金の額が異なりますが、公務員は定年退職時に2000万円程度の退職金を受け取れます。本記事では、会社員と公務員のどちらが多くの退職金が受け取れるのか、公的な資料に基づいて解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
会社員と公務員の特徴・収入の違い
まずは会社員と公務員の特徴、収入の違いを図表1で整理してみましょう。
図表1
筆者作成
会社員と公務員の大きな違いは、給与が安定しているかどうか、倒産リスクがあるかどうかです。公務員は倒産リスクがなく安定的に収入を得られますが、副業が禁止されているなどの制限もあります。
会社員は、残業代やボーナスカットをはじめとした、収入の変動リスクがある一方で、希望の職種に就きやすい、副業ができるなどがメリットです。どちらがよいのか一概にはいえませんが、会社員の場合は、就職先を選ぶ際に給与や企業規模、福利厚生などを考慮する必要があります。
退職金はどちらのほうが多い?
会社員と公務員、どちらのほうが多くの退職金を受け取れるのか気になる人もいるでしょう。両者が定年退職したときの、平均退職金を比較した図表2を見てみましょう。
図表2
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査、内閣官房 令和5年度退職手当の支給状況から筆者作成
図表2から、平均額で比較すると公務員のほうが多くの退職金を受け取れることが分かります。ただし、会社員の退職金は企業規模によって異なるため、大企業に勤めている場合は、公務員より多く受け取れるケースもあるでしょう。
会社員で「老後は退職金で豊な生活がしたい」と考える人は、就職先や転職先を選ぶ際、定年退職後にどのくらいの金額を受け取れるか確認しておく必要があります。
退職金なしの会社の割合
会社員の場合、勤務先に退職金の給付制度がないケースも考えられます。厚生労働省が発表している「令和5年就労条件総合調査」によると、退職金がない企業の割合は、図表3のとおりです。
図表3
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査から筆者作成
図表3から、企業規模が大きいほど退職金制度がある会社の割合が高く、規模が小さいほど割合が低いことが分かります。また、業種によっても割合は大きく異なり、複合サービス事業が97.9%と高いのに対し、宿泊業・飲食サービス業は42.2%と低い水準です。
つまり、退職金制度がある会社もあれば、退職金なしが一般的な業種もあるでしょう。
公務員は必ず退職金が支給される?
前記のとおり、会社員は退職金がないケースも考えられますが、公務員は勤続年数の要件を満たしていれば、原則として必ず支給されます。公務員の退職金制度は、「国家公務員退職手当法」または地方の条例によって定められているためです。
公務員が退職金を受け取るには、原則1年以上勤務する必要があります。国家公務員や地方公務員は、どちらの場合も勤続年数が長いほど多くの退職金を受け取れ、退職してから1ヶ月程度で振り込まれます。
まとめ
会社員と公務員は収入の安定性に違いがありますが、どちらが多くの退職金をもらえるのかは一概には言えません。平均額で比べると、公務員のほうが退職金を多く受け取れるものの、会社員は勤務先によるためです。
また、会社員は退職金がないケースも考えられ、老後資金が心配な人は現役世代のときに貯めておく必要があります。公務員は、勤続年数が長いほど多額の退職金がもらえます。いずれの場合も、退職金をどのように使うかは慎重に検討してください。
出典
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況
内閣官房 令和5年度退職手当の支給状況
執筆者 : 藤岡豊
2級ファイナンシャル・プランニング技能士


