来年“勤続30年”の会社を定年退職し“1000万円”の「退職金」を一括で受け取る予定です。“手取り”が気になっていたのですが、「所得税はかからない」って本当でしょうか!?
本記事では退職金にかかる税金の仕組みや手取り額の目安、2026年から改正される退職所得控除のルールについて解説します。
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目次
“勤続30年”だと“1500万円以下”の「退職金」には所得税がかからない
国税庁タックスアンサーによると、「退職金」の金額は以下のように計算できます。
・(源泉徴収前の収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額
「特定役員退職手当等」に該当する場合は上記の1/2は除外されます。つまり「源泉徴収前の収入金額」から「退職所得控除額」を引いたものが「退職所得金額」です。
「退職所得控除額」は、勤続年数20年を境目に、表1のように計算式が変わります。
表1
| 勤続年数 | 計算式 |
|---|---|
| 勤続20年以下の場合 | 40万円×勤続年数 |
| 勤続20年超の場合 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」を基に筆者作成
勤続20年以下に関して、計算結果が80万円に満たなかった場合は退職所得控除額を「80万円」として計算します。つまり、「勤続30年」という条件であれば計算式は以下のようになり、「1500万円」まで所得税非課税になることがわかります。
・800万円+70万円×(勤続年数-20年)=800万円+70万円×10年=1500万円
令和7年度税制改正では「退職所得控除」に関する一部ルールが見直しに
近年では退職金制度のほかに企業型年金(企業型DC)、個人型年金(iDeCo)といった確定拠出年金(DC)に加入する人も増えているようです。
これまでは、退職一時金と企業型確定拠出年金(DC)など、複数の退職所得を受け取る場合、受け取りの間隔が5年以上あれば、それぞれに退職所得控除を適用できる「5年ルール」がありました。
しかし令和7年度の税制改正により、この期間が10年に延長される「10年ルール」が導入され、2026年1月以降に支給される退職金などから適用されることになりました。
例えば60歳にDC一時金を受け取り、65歳で退職一時金を受け取る場合、「5年ルール」では2つの退職所得控除を活用できます。これが「10年ルール」に変わると、税制優遇を十分に受けられず実質的な増税となる可能性が出てきました。
「退職金課税制度」には見直しの議論もある
政府では今の退職金課税制度を見直す動きがあり、政府税制調査会の「活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合」などでも議論されています。同組織は2024年より毎年会合を開催していますが、様々な意見が出ています。
・働き方の多様化を阻害しかねないとの指摘
勤続年数が長くなるほど退職所得控除額が増加し、課税金額が相対的に軽くなるという現行の退職所得課税の仕組みについて、転職や雇用流動化が進む中で“勤続年数重視”の構造が働き方の多様化を妨げる可能性があるとの指摘があります。
・国民からの反発
退職金への課税強化は「国民の老後資金形成を阻害する」との懸念や、給与所得者への増税につながるという反発がSNSを中心に広まりました。
あくまで見送られたに過ぎず、再度の議論にのぼる可能性もあるため、確定拠出年金加入者や、近く退職が視野に入っている方は注視しておいたほうがよいかもしれません。
まとめ
本記事では退職金の計算方法や税制改正について解説しました。退職を控えている方や、退職金の税金が気になる方は、その受け取り方も含めて、制度の仕組みや改正内容をきちんと理解しておきましょう。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
財務省 税制改正の概要 令和7年度
財務省 令和7年度税制改正の大綱(16ページ、19ページ目)
内閣府 活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合 2025年度 : 税制調査会
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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