退職金をもらっても、翌年の税金の支払いが大変だと聞きました。たとえば、2000万円の退職金だった場合、具体的にいくらの税金が引かれますか?
本記事では、退職金にかかる税金の仕組みと、たとえば2000万円の退職金を受け取った場合にどのくらい税金が引かれるのかを、わかりやすく解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
退職金は「退職所得」として特別な税制がある
退職金は、給与やボーナスとは異なり「退職所得」という区分で課税されます。これは長年の勤務に対する成果や功労に報いるものであり、通常の所得よりも税負担が軽くなるよう特別な控除が設けられています。
その中心となるのが「退職所得控除」です。退職所得控除額は勤続年数によって次のように計算されます。
・勤続年数が20年以下の場合
40万円 × 勤続年数(最低80万円)
・勤続年数が20年を超える場合
800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)
たとえば、勤続30年で退職した場合の控除額は、800万円+70万円×10年=1500万円 となります。
実際の課税額の求め方
退職金の課税対象となる「退職所得」は、次の式で求められます。
退職所得 =(退職金 - 退職所得控除額)× 1/2
この「1/2」という係数が大きなポイントです。退職金のうち控除額を超えた部分の半分しか課税対象にならないため、通常の給与所得よりもかなり有利になります。
2000万円の退職金を例にした計算
それでは、実際に勤続30年で退職し、退職金が2000万円の場合を見てみましょう。
退職所得控除額
→ 1500万円(前述の計算)
課税対象額の計算
(2000万円-1500万円)×1/2=250万円
この250万円に対して所得税・住民税が課税されます。
所得税率は累進課税で、退職所得の場合も他の所得と合算して計算されますが、退職所得だけを対象とした「分離課税」として扱われ、源泉徴収されます。
250万円の課税所得に対する税率は所得税が約10%、控除を差し引くと所得税が約13万円、住民税が12万5千円ほど。合わせて約25万円前後の税金が引かれる計算になります。
退職所得控除が大きいほど税負担は軽くなる
このように退職所得控除のおかげで、2000万円の退職金でも実際の税金はかなり抑えられています。
もし勤続40年で退職した場合には控除額がさらに増え、
800万円+70万円×20年=2200万円
となるため、2000万円の退職金には課税されません。
つまり、勤続年数が長ければ長いほど、税金面で有利になるという仕組みです。
翌年の税金が「大変」と言われる理由
ではなぜ「退職金をもらうと翌年の税金が大変」と言われるのでしょうか?
それは、退職金そのものにかかる所得税とは別に、健康保険料や国民健康保険税、住民税の均等割といった他の負担が増える可能性があるためです。
特に会社を退職して年金や貯蓄で生活する場合、前年の所得(=退職金を含む)を基準に住民税や保険料が算定されることがあります。結果として、翌年に思わぬ請求が届くケースがあるのです。
退職金は「もらって終わり」ではない
退職金には優遇税制があり、多くの人が思うよりも税金は少なく済みます。しかし、勤続年数や受け取り方(分割・一時金)によって差が出るため、退職前にしっかりとシミュレーションしておくことが大切です。
また、翌年の住民税や健康保険料の増加を見越して、退職金の一部を手元に残しておくことをおすすめします。安心してセカンドライフを迎えるために、「退職金の税金」について正しく理解しておきましょう。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
