65歳で「貯蓄2000万円」は少ないですか? 65歳以上“夫婦・単身”世帯の収支を賄えるでしょうか?「老後生活の費用」を確認
ここ数年、物価上昇が続いていますが、65歳以上の家計状況はどうなっているのでしょうか。年金だけで生活することは可能なのか、働く必要はあるのか、貯蓄2000万円で足りるのかどうか、気になる老後生活を解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
高齢者世帯の家計状況
厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」より、高齢者世帯の内訳を見ると、単独世帯が903万1000世帯、夫婦のみの世帯が749万8000世帯と、単独世帯のほうが多くなっています。また、単独世帯の性別割合は、男性が36%、女性が64%と、女性の一人暮らしが多くなっています。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支
総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支は図表1の通りです。
図表1
総務省統計局 家計調査報告 (家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
具体的な金額を見ると、29.8%と一番高い割合を占めている食費は7万6352円でした。次に金額が多い項目は、その他の消費支出で5万2433円でした。可処分所得と消費支出の差額は3万4058円で、赤字となっています。
65歳以上の単身無職世帯の家計収支
次に、65歳以上の単身無職世帯の家計収支を図表2で見ていきましょう。
図表2
総務省統計局 家計調査報告 (家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
夫婦のみの世帯と同様、一番多い支出が食料、次に多い支出がその他の消費支出となっています。金額は食料が4万2085円、その他の消費支出が3万956円です。また、可処分所得と消費支出との差額は2万7817円となっており、65歳以上の夫婦無職世帯・単身無職世帯ともに赤字であることが分かりました。
高齢者は年金だけで生活できる?
家計を見ると、夫婦のみの世帯、単身世帯ともに赤字であることが分かりました。それでは年金だけで生活はできるのでしょうか? 厚生労働省の「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」を通して年金をいくらもらっているのかを見てみましょう。
令和5年度における、厚生年金を受給している人の平均月額は、老齢基礎年金の金額を含めて14万7360円です。一方、国民年金のみを受給している人の平均月額は5万4667円でした。
例えば、世帯主が厚生年金、世帯主の配偶者が国民年金を受給している場合、合計額は20万2027円です。夫婦のみの世帯の消費支出は25万6521円のため、5万4494円の赤字となります。単身世帯で厚生年金を受給している場合は1926円の赤字、国民年金のみを受給している場合は9万4619円の赤字となります。
いずれの場合も、税金や社会保険料を含めていないため、これらを含めると赤字幅はさらに広がります。年金だけで生活していくのは厳しく、働く必要があると考えられるでしょう。
実際に、内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、労働力人口総数に占める65歳以上の人の割合は13.4%です。また、65~69歳における男性の就業率は61.6%、女性の就業率は43.1%となっており、多くの高齢者が働いていることが分かります。
貯蓄2000万円で老後生活は乗り切れる?
厚生労働省の「令和6年簡易生命表の概況」によると、男性の平均寿命は81.09歳、女性の平均寿命は87.13歳です。ここからは、長いほうの寿命に合わせてシミュレーションしてみましょう。
厚生年金と国民年金を受給すると仮定した場合、夫婦世帯の場合の赤字額は5万4494円でした。現在65歳と仮定し、寿命までの赤字額を計算すると1438万6416円です。理論上、貯蓄が2000万円あれば乗り切れると考えられます。
しかし、夫婦ともに国民年金のみだった場合の寿命までの累計赤字額は、3885万7368円となりました。また、単身世帯で国民年金を受給している場合、寿命までの累計赤字額は2497万9416円となりました。貯蓄2000万円ではかなり厳しいと言わざるをえないでしょう。
健康でいるうちはできるだけ働くことが鍵
データを見ると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯、単身無職世帯のどちらも家計は赤字であることが分かりました。年金の受給額を見ても、支出額まで届かず、年金だけでは生活が難しいこと、65歳以上でも働いている人が多いことも分かりました。
国民年金のみを受給する場合、貯蓄2000万円では心もとないと感じることでしょう。現役世代のうちから、健康でいる間は細くともできるだけ長く働き続けることが老後生活を乗り切る鍵といえるでしょう。
出典
厚生労働省 2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況
総務省 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
厚生労働省 令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
内閣府 令和6年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士


