年金を“月額20万円程度”はもらっているのに「生活が苦しい」とこぼす両親…。高齢者の「年金生活」はそんなに余裕がないものなのでしょうか?
夫婦2人の老齢厚生年金と老齢基礎年金を合わせた令和7年度の標準的な受給額は月額約23万円ですが、厚生労働省の統計では、半数以上の高齢者世帯が生活に不安を抱えているようです。
さらに、ゆとりある老後生活には月額約40万円が必要といわれており、年金だけで満足に暮らすのはなかなか難しいのが現実です。本記事では、こうした年金生活の実情と、ゆとりある老後に必要な金額について解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
モデル世帯における夫婦2人の標準的な年金額は月額“約23万円”
日本年金機構によると、夫婦2人の「モデル世帯」における令和7年度の厚生年金額は、月額23万2784円となっています。
この金額は、平均的な収入(月額換算で45.5万円、賞与含む)で40年間就業した場合に受け取れる年金、つまり老齢厚生年金に加え、2人分の老齢基礎年金(満額)を合計した額です。
このような標準的な年金額は「モデル年金」と呼ばれることもあります。なお、法律の規定に基づき、年金額は令和6年度から原則1.9%引き上げられています。
「高齢者世帯」の半数以上が「生活が苦しい」と回答
厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯が自身の生活について「大変ゆとりがある」「ややゆとりがある」と答えた割合はわずか4.2%に過ぎません。一方で、「大変苦しい」「やや苦しい」と回答した世帯は計55.8%にのぼり、過半数が生活に不安を抱えていることが分かります。
また、総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の消費支出は月額約25万6500円です。
掲題にもあるように、年金が月額20万円程度の場合、生活費の実額と比べて不足しやすく、実際に「生活が苦しい」と感じる高齢者が多いことも納得できる数字といえるでしょう。
「ゆとりのある老後生活」には“月額約40万円”も必要!?
公益財団法人生命保険文化センターの「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」によると、自身の老後生活について「不安感あり」と答えた人は83.2%で、その理由として「公的年金だけでは不十分」と回答した人は79.8%にのぼります。
また、「日常生活に支障が出る」「自助努力による準備が不足する」「退職金や企業年金だけでは不十分」などの理由が挙げられました。
さらに同調査によると、「ゆとりある老後生活費」の平均額は月額39万1000円と試算されており、モデル年金である夫婦2人の月額23万2784円と比べると、15万円以上の差があります。このことから、年金だけでは十分な余裕はなく、生活に不安を感じるといった主張には一定の妥当性がありそうです。
まとめ
こうして見てみると、年金だけで暮らすのはやはり難しい面があるようです。
もちろん、生活スタイルや住まいの条件などによっても違いはありますが、ゆとりのある老後を送るためには、貯蓄や投資などの準備も欠かせません。日々の生活費や将来の支出を見据えながら、年金受給額を踏まえた計画的な準備を検討することが大切です。
出典
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
厚生労働省 2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況 結果の概要 II 各種世帯の所得等の状況 5 生活意識の状況(12ページ)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支<参考4>65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ)
公益財団法人生命保険文化センター 2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版) 第III章 老後保障 1.老後生活に対する不安意識(50~51ページ)、2.老後生活に対する意識 (5) ゆとりある老後生活費(56ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー