来年定年を迎える夫、「退職金の“1000万円”はNISAに突っ込む」と言ってききません。貯金は“500万円”しかないのですが、大丈夫でしょうか…?
とはいえ、退職金の扱いは世帯の貯蓄額や価値観によって大きく変わるものです。本記事では、60歳代の平均貯蓄額や退職金の水準を踏まえつつ、資産運用を考える上で重要となる「リスク許容度」について解説します。
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60歳代の貯蓄額は“平均358万円”
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」によると、60歳代の預貯金残高は平均358万円です。
一方、預貯金に加えて株式や投資信託などを含む金融資産について見ると、60歳代世帯の79.5%が何らかの金融資産を保有しており、金融資産を保有する世帯に限った平均保有額は2581万円、中央値は1140万円となっています。
平均値と中央値に大きな差があることから、60歳代の資産状況は世帯間で大きなばらつきがあることが分かります。
都内中小企業のモデル退職金は“1149万5000円”
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、大学卒・定年の都内中小企業モデル退職金は1149万5000円とされています。
一方、厚生労働省中央労働委員会「令和5年賃金事情等総合調査」の「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、特定の大企業における平均退職金支給額は、調査産業計・大学卒の場合、勤続35年の男性の退職金平均が1867万6000円、満勤勤続では2139万6000円に達しています。
つまり都内中小企業のモデル退職金は、企業規模1000人以上の大企業に比べて金額に大きな開きがみられ、企業規模によって退職金水準が大きく異なることがうかがえます。
このように、退職金1000万円前後という水準は、大企業の退職金水準と比べると決して多いとは言えず、全額を余裕資金として運用に回すかどうかは慎重に判断する必要がある金額だと言えるでしょう。
退職金の運用方法は「リスク許容度」に応じて決める
金融広報中央委員会(知るぽると)では、退職金の運用を考える際の判断軸として「リスク許容度」の確認を挙げるとともに、介護費として800万~1000万円程度の備えがあり、子どもも独立している場合には、資産の増減をある程度受け入れた運用を検討しやすいと説明しています。
一方、負債が残っている・教育費などの支出が続くという家庭では、資産を守る姿勢が基本となるでしょう。
また、年金だけでは老後資金が不足する可能性があるとして「老後2000万円問題」が話題になったように、貯蓄が500万円しかない状態で、退職金の1000万円をすべてNISAの運用に使うのは少しリスクが高いかもしれません。老後の生活水準を考慮し、余裕資金のなかで投資割合を決めることが現実的だと言えます。
まとめ
60歳代の貯蓄は平均358万円、都内中小企業の退職金は約1149万円とされますが、その使い方は各家庭の状況で大きく変わります。退職金1000万円をNISAに全額投じる案は、老後の生活費や余裕資金を十分に確保し、子どもも独立している場合であれば、選択肢のひとつになり得るでしょう。
しかし貯蓄が少なく、生活費にまわせる余裕資金が限られている家庭であれば、そのまま生活費の不足につながる可能性があります。まずはリスク許容度と必要な生活費を見積もったうえで、無理のない範囲で投資額を決めるのが良いでしょう。
出典
金融経済教育推進機構(J-FLEC) 家計の金融行動に関する世論調査 2024年
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情 中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版) 調査結果の概要(34ページ)
厚生労働省中央労働委員会 令和5年賃金事情等総合調査
厚生労働省中央労働委員会 令和5年賃金事情等総合調査 令和5年退職金、年金及び定年制事情調査 調査結果の概要(6ページ)
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執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
